【第23話】 届かない手
内容が、朝から読むには辛いので、号外にしました。
匂いは人族だ。あやしい所は無い。
だが、この匂い、かなり焦っているようだが?
「どうした?」
すかさず私の横に付くコロ叔父さん。
「……うっ」
「コロ叔父さんは保護者よ、気にしないで話して。大丈夫、酷い目に逢ったりしないよ?」
「……わ、わかった。お、おれはヨミヤ家のダラン、オヤジは商工会の会計だった」
「ヨミヤ?」
「どうしたの?コロ叔父さん?」
「ヨミヤ家か、いい話は聞かないな。扱っている品も色々と問題が多いし、使用人の事故も多い」
「悪い商人なんだよ、オヤジは。そして俺は、その悪い商人の子供だ」
周囲から、冷たい視線が集まる。
「……オヤジは色々な珍しい魔石を持っている。封印石もあった」
「封印石?なにそれ?そんなの、あるの?」
ちらり、とコロ叔父さんを見る。
「偽物だろう、今まで確認されたことは無い」
「そう言って、みんな信じないんだ!あれは本物だって!おやじは屋敷を追われたんだろう?逃げ出したんだろう?あの石を使うかもしれない!」
「商人でコレクターか?偽物を買わされたのではないのか?」
コロ叔父さんは信じていないようだ。
「ちがう!あれは東のダークエルフが、王都の情報と引き換えに渡した物だ!なんで皆信じないんだよ!これは本当だって!オヤジのヤツ、あれを使う!」
ちょっと待ったあっ!
東のダークエルフ!?
ここでまた、その名前が?
一気に現実味を帯びる封印石。
「使用条件は?」
コロ叔父さんの匂いが変る。
認めたんだ!この話!
「使用者の、契約者の命」
「何を封印した魔石か、話していたか?」
「……ド、ドラゴン」
「ばかな!ドラゴンをどうやって封印した!?」
羽ばたきの音。上を向くと、ペガサスが舞い降りてくる。
「すまんな、コロ。ヨミヤのそいつは監視対象なんだ。話は聞いた、どうだ?ドラゴンの封印石、本物と思うか?」
「封印石は本物だと思う。が、何が封印してあるか、分からん」
「本物か?まさかここまで商工会が動くとは、重犯罪だぞ」
「あの純鉄の魔法剣、脅威だろ?あんなのが流通してみろ、商工会独占の体勢が消える。いやもう壊滅したらしいな、商工会」
「商人ならば、交渉し、取り込めばよかったろうに」
「学生とはいえ、ドロトンは超一流、追従を許さないドワーフだぞ?金や名誉、では動かん。制御できない作り手は消される」
「腹立たしいな」
「そうか?お前らの装備も商工会納品だろ?」
「傭兵団は違うのか?」
「商工会に弾かれた者達が作ってくれている、いい品ばかりだ。それで対ドラゴン装備は?」
「3名」
「足りんな。北のゴブリン達、聞こえたろ?ワームの次はドラゴンだ、周囲警戒」
(了解、風の戦士)
(次はドラゴンだと!?おもしろい!)
(ホルダー阿騎は我々を鍛えてくれるなぁ次が楽しみだ)
(王都から朱槍を呼ぶか?)
(秘を呼ぶのか?)
(この混乱で、メイさまに手を出す者がいるかもしれん、おれは王都を動かんよ)
王都は見えているのに、遠いなぁ。
虫車が止まった?
先頭がザワつき始める。
「皆の者、注意せよ」
「!」
え?私の口から渋い男性の声が飛び出す。
ゴルちゃんだ。
「北のゴブリン達、その力、ホルダー阿騎の前に示せ!」
次は透き通るような女性の声、シルバーっちだ。
(言霊が下ったぞ!)
(エンキドウさまの言霊だ)
(おい、今はシルバーさまだぞ)
(我らが誉れ、さまよえる賢者とホルダー阿騎から、それぞれ名前を頂くとはな)
前方より、異様な臭いが漂ってくる。
「あっ!」
走り出すヨミヤのダラン君。
「コロ叔父さん、この臭い」
「ああ、魔昆虫の臭いだ」
更に前方より悲鳴が上がる。
そこにいたのは、血だらけのボロボロの女性。
服は着ているのか?
悲鳴が上がったのは、皮膚の下を何かが蠢いていたからだ。
「ダラン!待て!近づいたら駄目だ!」
腕を摑み、引止めるティーくん。
「おい!放せ!ティー!」
「魔昆虫に寄生されている、あれは近づくと、背中の袋が爆ぜる魔昆虫だ」
「な……何だと?」
「近づいたら、彼女はおそらく死ぬぞ」
「ど、どうにかしてくれ!」
「駆除のパウダーがもうない、学校の実験室にはあるんだが……彼女に近づかないように言えるか?今、ニトがペガサスで取りに行ったけど」
足を引きずり、酷く暴行されたのか、傷だらけの半裸の女性がゆらり、ゆらり、と近づいてくる。
「……ん、ぼっちゃ……ん……」
「あ、あんなに怪我してボロボロなのに、近づくなだと?そんなこと、言えるわけねーだろっ!」
「行くなっ!ダラン!」
「俺を呼んでいるんだよっ!」
ティーくん、ドロトン君が引止める。
「コロ叔父さん、風の魔法で足止めできる?」
「無理だ、アレは魔法にも反応する。明季、手を見たか?」
「手?」
あ、手の甲に魔石が突き刺さっている!
「あの魔石が?」
「おそらく封印石だ。動くなよ、明季、彼女が死んだら封印が解かれる」
ニトお父さん!急いで!
二人を振り切り走り出すダラン君。
そのダラン君に騎士団の一人が矢を放つ。
足を射貫く矢。
「!」
「近づけばあの娘も、学生も死んでしまう」
それでも、よろよろと近づいていくダラン君。
「おい、オヤジ、こんなにまでして金が欲しいのかよ?権力が欲しいのか?幸せになるための金じゃないのか?」
「ぼ、ぼっちゃん!う、腕が……」
「たいしたことはない、今、ニトが薬を取りに行っている。ここで二人、休んでいようぜ?」
「あ、足に矢が……」
「気にするな、じっとしといて動くなよ?俺も付き合うから」
「つ……つき……あう?あ……だ、だめです、もう駄目です……私はもう駄目です」
「なにを言っている?動くなよ、じっとして……」
「私は……もう、ぼつちゃんとは、つ……きあえません。わたしは……私は……もう」
目を見開き、叫び出す女性。
ダラン君は手を伸ばすが、届かなかった。
その慟哭に反応するように魔昆虫は爆ぜ、魔石が砕けた。
次回配達は 2023/03/07 朝7時~10時の予定です。
配達、間に合うかなぁ、今から2000文字。
サブタイトルはまだ決まっていません。




