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The Lily 前世の記憶は邪魔である  作者: MAYAKO
三章

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231/406

【第21話】 王都へ、でもその前に

おはようございます。

朝刊です。

 あ、エノン、コロ叔父さんに怒られている?


 なんか、しゅんとしている。


 あえて私は、耳を向けない。それでも軽率とか、後先考えろ!とか少し聞こえる。

 まあ、そんなに怒らなくても。


 失言でした、とエノン皆に謝りまくっていたし。


「でも、うち、明季くんのこと大好きだよ?」


「それは見て分かる。が、言わぬが華だ、当分、黙っていろ!」


 ……それでも耳に入ってくる。


 段々と明るくなっていく東の空。


 夜明け前だ。


 ちょっと寒いかな?

 降下期の私は何かにつけて繊細?


 周りを見てみる。

 皆、かなり寒そうだ。


 夜明けと共に出発なのだ。


 戦闘後、森を抜けて直ぐ、休息となった。

 数時間の仮眠。


 怪我人は大勢でたけど、誰一人、欠けること無く王都に凱旋できそうである。


 子供の凱旋だ。


 リチはリュートお母さんか、エノンの側を離れない。


 その小さな手で服をつかみ、ついて回る。


 言葉は、話さない。

 ショックだったのだろう。


 あの5人組は利益のため、親に殺されかけたのだ。


 コロ叔父さんが傭兵団で引き取る、と騎士団と再交渉したけど、騎士団はいい顔しなかったな。


 5人は獣人族の庇護下、預かりとなり、取敢えず保護者ができた。


 当面は問題ないだろう。


 誹謗中傷はあるだろうが、助けると決めたのだ。見捨てることはしないよ。

 見捨てられることが、どれだけ苦しいか、悲しいか、私は少しだが知っている。


 今回の襲撃については難題だけど、徐々に解決していくのでは?


 解決していない問題もある。


 私としては、こっちの方も大事なのだ!


 そう、私の問題は何も解決していない。


 今日なのだ!入学試験!


 おい、治るの?このあんよ!


 今日、この日、お昼から試験だよ!


 どうしよう!


 ボロボロの身体。

 あ、だんだん実技も不安になってきた。


 目の前に文字が並んでいる。


 どうも、これが私の名前らしい。


 がりがり。


 木の枝で、真似をして大地に書いてみる。


 ああ、夏休み最後の日よりもハードだよ!

 だって宿題、名前だけだよ!

 その名前もアヤシイだなんて!


 いったい、どんな試験なの!筆記試験!内容も分からないよ!


「そこ違いますよ」


 優しく指摘するリュートお母さん。

 エノンはコロ叔父さんとお話中なので、今はリュートお母さんが先生なのだ。


「ほら、ここ」


 え、どこ?

 間違いすら分からない!


 ア・ダウ先生にどんな試験なの?と聞いたけど、簡単らしいそうですよ、としか言われない。

「ごめんなさいね、担当が違って、それに今回の遺跡調査で試験メンバーから外れているの」


 すごく申し訳なさそうに、お話をするア・ダウ先生。


「次はいつです?」


「?」


 何故、はてな顔?


「一度、エントリーして、受験できなかった人は、二度目はありませんよ?」


「はい?え、な、なんで、ですか!?」


 答えたのはシンお姉ちゃん。


「精霊の導きってヤツだ、一度エントリーして、受験できなかった者は精霊が止めた、と考えるそうだ。だから次は無い」


なに!そのシステム!

精霊が止めたと?


「じゃ試験前、事故に遭ったら、勉強あきらめろと?」


「そうなるな」


「酷すぎるよ!そのシステム!変更!」


「まあ、救済システムもあるけどな」


「どんな?」


「学校の門番と戦い、これに認められること」


 お、行けそう。


「門番は王都の門番だ。ただ勝だけでは認めてもらえないらしい」


 難しそうだな……チラリ、とア・ダウ先生を見る。

 持っている魔石、全部差し上げますから、合格にしてもらえませんか?と言いそうになった。


 ぱこん。


「いたっ!」


 シンお姉ちゃん痛いです。


「不正はだめだぜ?あと少しで出発だ、用意しとけよ?」


 眼光鋭く、凄むシンお姉ちゃん。


「思っただけじゃん」


「ほらほら、よそ見しないで!」


「……はい」


 リュートお母さんの横には、リチちゃんが座っている。


 時々、チラチラと私の文字を見ている。


 話し掛けてみようかな?


「リッちゃん、何処かおかしい?おかしかったら、教えて!お昼から試験なの……」


「……」


 ん?小さすぎて聞こえないぞ?


「……」


 獣人族の耳感度のツマミを上げる。


「……かきかた?」


 こくこく。


 頷くと、さっ、とリュートお母さんの後ろに身を隠す。


 ニトお父さんの診断は、魔力による記憶障害と幼児退行。

 リチは自分自身を呪っている、とニトお父さんは言った。

 この呪いは、とても厄介で、自身で解くには難しく、周りの応援も届きにくいそうだ。


 周囲の魔力も影響し、簡単には回復しないらしい。


 これは、私も当てはまるのか?


「リュートさん、書き方って?」


「まずは文字を覚える方が先だと思い、書き方は後から教えようと思っていたのです」


 なるほど、目標は名前だけだし。

 書き順は後からでもと。


「本当は、こう書きます」


 流れるように、私の名前を書くリュートお母さん。


「おお、綺麗!」


 この綺麗にリチが反応した。

 リュートお母さんの持っている枝を、じっと見ている。


「使う?」


 こくこく。


 さらり、と流れるように文字を生み出す枝先。


「うわっ」


 思わず声が出た。


「リチは綺麗な字を書くのですね」


 感心するリュートお母さん。

 ニッコリと笑うリチ。


 あ、なんか悔しいかも。

 私も誉めてもらいたいっ!


 が、私を見るとささっ、とリュートお母さんの後ろに、また隠れる。


 ん?これは?


「リッちゃん、私のお顔、怖い?」


「……」


「怒ったりしないよ、怖いんだね?」


 こくこく。


「……な、さい」


「いいよ、ね?怒ったりしないでしょ?」


 こくこく。


 私は気にしていなかったが、この右目の傷跡、髪で隠すぐらいでは駄目なのだな。

 怖く見えるらしい。


 あ、なんか悲しくなってきた。


 アイパッチってどこで手に入れるの?

 薬局?通販?

 ああ、前世の記憶、役に立たん!


「出発するぞ!」


 ミミお姉ちゃんの声が響く。

 やばい、結局半分も覚えていない!


 王都、着いちゃうよ!


 私の暗い心とは裏腹に、元気で明るいお日様が昇り始める。


次回配達は 2023/03/06 朝7時頃の予定です。

サブタイトルは 俺の話を聞いてくれ です。

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