表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/406

【第22話】 会議は眠たい

「それでは素手で魔獣を倒したのか?」


 驚くおばばさま。

 頷く私達。


 響めく周囲のゴブリン。


「3匹目は、雷の魔法で倒したゴブ」


 私が正直に答えると、周囲は更に響めいた。


挿絵(By みてみん)

 

 しかしイヤだなぁ、人前で話すの苦手なんだけど。なに、このゴブリンの集り!

 

 皆の視線が痛いし、怖いよ。

 

 それに槍の戦士さん、なにかと絡んでくるし。


「ゴブ?雷だと?イカズチは初期の攻撃魔法ゴブ。使い手は少ないが、魔獣の鱗は雷程度弾いてしまうゴブ!鱗は本物だが、やはり信じられんゴブ。偶然、寿命か病気、もしくはバグで死んだのではないのか?そうであろうゴブ。奴らだって生き物だ、いつかは死んでしまうゴブ、運が良かっただけだゴブ!」


 人もゴブリンも変わらないな、信じたいモノしか信じない。


 喩え目の前で私が再び魔獣を倒しても、このゴブリンは認めないだろうな。こんなヤツ、どうでもいい。

 

 私には自覚がある。


 あれは私、個人の力で倒したのではない。


 子孫や戦友の目の前で魔獣に挑み、死んでいったゴブリン達。彼らが残し伝えた技や戦略の数々、その記憶が無ければ到底魔獣は倒せない。

 

 この記憶の蓄積があったからこそ、ラグナルは倒せたのだ、断言できる。

 

 このゴブリンだって、先祖からの記憶が有るだろうに。


 ゴブリン戦士は何のために戦っているのだ?


 今は、疲れ切っているお母さんや皆を、より安全な場所へ、ドワーフの砦に入れてもらえるように、しなければいけないのに。

 

 あ、気合いが入った?きっと家族のことを思ったからだ。

 

 家族のため、頑張らなければ。

 私の家族、前世では欲しくても得ることができなかった家族。


 優しいお母さんとお父さん、可愛いお兄ちゃん。


 保育器を叩き壊した男とは、えらい違いだ。

 

 あ、怒りが混じってきた?


「私と話がしたいなら、それでいいのではないのかゴブゴブ?何か問題でもあるゴブ?そうだな、例えば1年生にも満たないゴブリンが魔獣を倒すなど信じてもらえない、とかゴブ?結果、砦に入れてもらえないとかゴブゴブ?」

 

 顔色を変える、おばばさまと、両脇の戦士達。

 ざわめき出す周囲。


「ゴブ?私の代役でも立てるつもりかゴブゴブ?嘘は必ずばれるぞ」


 思わず言葉に凄みが入る。


 その言葉に反応してか、両脇の戦士達が固まる。図星か?


 あ、村長と呼ばれていたゴブリンさんだ。


「素直に優るモノはないゴブ、リュートの子よ、ありのままを話せ。それでダメなら砦の近くに、村を作るゴブ。しかしニトよ、お前の息子、生まれて間もないとは思えん口上だなゴブゴブ。魔獣は倒すし、ここまで覚醒するとは、余程レイモンとの相性がよかったのだなゴブゴブ」


 レイモンさんとの相性?記憶の相性か?


 ごく自然にレイモンさんと目が合う。

 耳まで真っ赤になり、顔を背けるお姉さん。


 ?


 あ、そういえば私、この女性と口づけを交したんだっけ。

 柔らかい唇だったな。

 

 ……ん?あれはファースト・キスか!?

 

 いや、あれは血を吸い取るための行為であって、キスといえるのか?

 

 キスというならば、血の味のファースト・キス、過激だ……。

 

 周囲の目が自然、私とレイモンお姉さんに集まる。

 相性がいい?記憶のことだよね?


 もじもじするお姉さん。


 !


 そ、そ、村長さん、その言い方、誤解を招きます!セクハラですっ!


 ま、まどか!不可抗力!不可抗力だよ!


 なぜか私は全力でまどかに謝った。ここにいるはずのない、まどかに。


 私が一人、わたわたしている間も会議は進む。


「村を作るだと?しかしそれでは……ゴブゴブ」


 槍の戦士が口籠もる。

 村長さんは、槍の戦士を一瞥し、話を続ける。


「確かに人族の襲撃に備えるには、少しでも数が多い方がよいゴブ、だが……だが我々は施設から逃げ出すとき、彼らを見捨ててゴブリン族だけで逃げた事実があるゴブ」


 え!何ですと!そんな記憶、ないよ!?


「エルフに咎められ、施設に戻ったが、時遅し、大勢のドワーフが死んでいたゴブ。殺したのは兵器と化した我らの同胞だ」


「それは先祖の話だろうゴブゴブ」


「我々は、仲間を見捨てたりしないぞゴブ」


「戻って助けたではないかゴブゴブ」


 声が、次々に挙がる。


「我々は世代が変わり、当事者は、おばばさまとエルフ以外は皆鬼籍に入っているゴブ。施設からの脱出を知るものは、記憶の継承者とエルフ、おばばさまだけだ。だがドワーフ達は違うゴブ。彼らは当事者だ。我々が思っている以上に溝は深いゴブ」

 

 話し合いは続いたが、私がドワーフに会うという条件は変わらないのだ、鉄の砦に入りたかったら条件を呑むしかない。


 何が心配なのだ?


 私か?これだけの人数、纏まる?それぞれの意見があるはず。


 全員一致の公式なんて無いよ。


 私はお母さんや家族、お姉さん達をどうにか助けたいと思う一心で、全力で挑んだ。結果、注目を浴び代表者に選ばれそうだが仕方あるまい。


 選んだのはドワーフさんだ。まあ、出来るだけのことはしよう。


 難攻不落の魔獣を倒した……か、とんでもない力には、とんでもない責任が付きまとう、ということか?


 私の思考は会議を離れ、ドワーフへと向った。


 どんな感じなのだろう?私達より大きいのかな?金属って鉄以外にも色々あるし、どんな加工をしているのだろう?


 色々考えているうちに、何時しか私は寝てしまった。眠いから寝る、理だよね。


 そして私は夢を見る。


 それはとても不思議な夢で……。


次回投稿は2022/06/29を予定しております。

サブタイトルは 邂逅夢 です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ