【第17話】 呪縛
おはようございます。
死に向って走り出す少女。
親の言うことは絶対?
亜紀の親はどうだろう?
疑うことの塊みたいな亜紀、私だ。
目の前の少女、真逆の私に見えた。
死に向って突き進むのは同じか?
あの子は私か?
「ミンお兄ちゃん、ほい!」
「お、おい、俺三人も、引きずっているんだぞ!」
4人目をキャッチする。
が、引きずられていた3人は、猛然と走り出した。
振り向きもしない。
「なんだ、こいつらも走れるじゃん。コケずに逃げろよ!」
怪我しているのに、よくまあ走れるなぁ。
(それは、訓練しているからさ。学校で学ぶらしいぞ、一時的な痛み止め)
(ミンお兄ちゃん、詳しいね?)
(もっと誉めろ、情報収集は得意だぜ)
「私は無理、走れないわぁ、できれば助けて欲しい」
(ん?お、お兄ちゃん、誘惑されている?)
あ、念話、カットした!
ミンお兄ちゃんの腕の中で、妖しく蠢く女の人。
あれは女生徒ではない、お兄ちゃんを誘惑する女だ。
「事実を話せ」
「助かったら話すわ、だから、ねぇ」
「1班の研究、これほどまでに邪魔か?クラスごと消すほど」
「さ、さぁ」
「誘惑がいまいちだ、焦りの臭いがする」
「ふんっ、これでも結構落としてきたのよ?」
ミンお兄ちゃんの首に、残った腕を回す女。
「俺は今から、明季のフォローだ。走れないなら、歩いて逃げろ」
ぽいっ、と投げ捨てるのがチラリ、と見えた。
「怪我人を捨てるのぉ!薄情者!」
捨てられた女は、走って逃げていく。
元気、いいじゃん。
そして、目の前の少女も元気がいい。
皆とは逆方向に走っている、死に向ってまっしぐらだ!
(ホルダー阿騎、近い!)
(攻撃ができない!)
(死にたい者を何故止める?)
攻撃中の北のゴブリン達が警告する。
(死なせたくないからよ!聞こえない?あの、呪われた子の悲鳴が?)
親による洗脳、呪縛だ。
私はそれを、呪いと言いたい。
呪縛とは、恐ろしい言葉だ。
親に何を言われた?
何を聞かされて育った?
自分で判断できないか?
判断、させてもらえなかったのか?
ドワーフ・ドロトン君の技術、これほどまでに脅威か?
亜紀の呪縛を解いたのは、まどかだ。
亜紀は今も全てを呪っているが、縛られてはいない。
エノン、私は亜紀であり明季だ、そんな私は人を愛せるのだろうか?
エノンはこんな私に、付き合ってくれるのだろうか?
これは怖くて言えないし、聞けない秘め事だ。
足下に亀裂が走り、触手が何本も這い出てくる。
「ほら、ここまで来ても私は死なない!お父様は正しいのよ!あの卑しいドワーフの研究なんか、消えてしまえないいいのよ!全ては利益のために!」
触手に絡まれ、持ち上げられていく少女。
ワームは大きな口を更に大きく開けていく。
身体が重い、魔法を使おうとすると、意識が遠のく。
ならば、得意分野の肉弾戦で勝負!
おおきなワームの口と対面する少女。
その目は見開かれ、これから起こることを確信したようだ。
うわぁ、あの口の中、覗いたんだ。
私なら耐えられないかも。
そう思わせるワームの口腔内。
いや、これ以上の描写は不要だろう(作者注*同左)。
私は思いっきりジャンプし、朱槍で触手を薙ぐ。
パスッと軽い音を立て、分断される触手、そして自由落下していく少女。
その目は見開いているようだが、もう何も見ていないようだ。
次回配達は 2023/03/03 朝7時頃の予定です。
サブタイトルは 赤い髪の騎士 です。




