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The Lily 前世の記憶は邪魔である  作者: MAYAKO
三章

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【第16話】 利益が全て

おはようございます。

朝刊です。

 揺れる大地を、獣人族の絶妙なバランス感覚で滑るように走り寄る。


「明季、ブーメラン貸して、俺、武器携帯していないんだ」


「ほい」


「おお、ありがとう」


「そのブーメラン、先端がナイフみたいな刃物だから注意してね」


「了解。誰だい?こんなん作ったの?美意識がないなぁ刃物だなんて」


 ミンお兄ちゃんは独特の感覚がある。

 もう少しだ、でも、あの5人、何故動かない?


「何しているの!速く森へ!」


「……」


「どうしたの?」


「なんで、なんで俺達まで、ドロトン、脅すだけだって」


「そうよ!危険はないって!」


「どうして私達がこんな目にぃ!きっとあの獣人族達が来たからよ!みんな彼奴らが悪いのよ!」


 !


 何?脅す?危険?

 ミンお兄ちゃんをチラ見する。


「おい!聞いているのかっ!」


 ミンお兄ちゃんの怒号に、ビクッと反応する5人。


「お前らのせいだからなぁ!」


「訳は後で聞く!速く!」


「う、動けないんだよぉ!ここから!」


「なんで動けないのよ!腕が、腕が固定されちゃってぇ動けないの!」


 喚き散らす女子生徒。

 なんとも不思議な現象が起こっていた。


 女子二人、男子三人の肘が、くっついているのだ!


「魔石を外せ」


 冷静に対応する、ミンお兄ちゃん。


「外せるなら、とっくに外しているっ!」


「お守りだって言っていたのに、なんでこの魔石、守ってくれないのよ!」


「違うわよ!ここにいれば生き残れるのよ!私達!ここだけ安全だから、動けないのよ!お父様の魔

石が、必ず守ってくれるわ!」


 いや、違うと思うよ?


 現に、あなた達、飛び散った岩石やら木片やらで、泥だらけの、血だらけじゃない?


 鈍く輝いている、腕のブレスレットに組み込まれた魔石。

 5人とも、動けないとは?魔石が、この空間に固定されているように見える。


 呪縛?もしかして何らかの口封じでは?


 地震は更に大きくなり、大地が盛り上がり始める。


 巨大な触手が2本、大地から這い出してくる。


「ひっ!な、何で動けないのよおおおっ!あんた!助けに来たんでしょう!?どうにかしなさいよ!死ぬのはいやああっ」


 さくっ。


「ひっ」


 ミンお兄ちゃんが、叫んだ女子の腕を斬る。


「うぎやああぁあ、あ、あ、あう、腕、あたしの腕!」


 斬られた腕は魔石を中心に空中に浮いている。


「時間が無い」


 そう言うと、次々にブーメランで残り4人の腕を切る。


 空中に浮かぶ5本の腕。


 肘で繋がっているその腕は、奇怪なオブジェのようだ。


 なぜ浮かんでいる?


 いや、それより脱出が先だ。


「傷口は焼いている、出血の心配は、今のところない!とにかく走れ!」


「うで、私の腕!」


「死にたいのか!?走れっ!」


「死んだがほうが、ましよっ!指輪、私の指輪っブレスの魔石!どうしてくれるのよっ!」


 取敢えず、この人担いで走るか。


 担ぎ、引きずり、蹴り飛ばし、ミンお兄ちゃんと二人で5人を引きずるように森へ向う。

 二匹の巨大ワームは、切断されて腕の所まで来ていた。


 北のゴブリン達の猛攻に耐えながらの移動である。


 魔石を確認するかのように、長い触手で斬られた腕に触れ始めた。

 何をしているのだろう?何かの確認か?

 魔石に触手が触れた瞬間、魔石は砕けちり、腕がボトリと大地に落ちる。


 何にしろ、もっと遠くへ逃げなければ!


 ワームは明らかにこの五人を探し、狙っている。


 ほら、こっち来た!


 うわ、悪夢みたいだ。バキバキを大木を折り、大地を揺るがし迫るワーム。


(ホッシーだ!あと少しで西に向った騎士団が駆けつける!それまで逃げ切れ!)


 西?騎士団?もしかしてニトお父さんが参加している騎士団かしら?


「おい獣人!お前らよくも腕を切り落としたな?覚えていろよ?」


「いいか、ただでは済まさないからな!知っているのか?俺達に親がどれだけコストを掛けているのか!」


「なんで連れてきたのよ!私達はあそこにいれば安全だったのよ!」


 それは間違いだと思う。


「コスト?金の計算、利益が全てか?」


 ミンお兄ちゃんが質問している?


 速く、少しでも遠くに逃げようよ!


「全てだよ!そんなことも分からないのか?」


「お前ら、友人を利益として見ているな?リュートさんやあのドワーフが邪魔だったか?親に何と言われた?それでいいのか?」


「……価値が全てなんだ、己の利益以外、何が必要なんだ?」


「明季、こいつら助ける価値あるか?俺達に、何も利益がないぜ?」


「ミンお兄ちゃん、意趣返しはやめて、あまり好きじゃないんだ、それ」


「置いていこうぜ、こいつらトラブルの元だぜ?今回の襲撃、こいつらが仕組んでいるぜ?」


「僕たちじゃない!」


「断じて違う!」


 抗議の声が上がる。だから、もっと速く走らないと!


 ほらっ!後ろから死が迫ってきているって!


「じゃ、誰だ?お前らも利益還元されそうなのに、何故気づかん?」


「お父様は言った!私達だけは安全だって!」


「喋らないで!舌を噛むわよ!」


 だから、担いで走っている私のこと、少しは考えなさい!


 左右の肩に一人づつ乗せての走行、舌噛むって!


 しかし根拠が親の言葉のみ?


「証明してみせるわ!」


 突然暴れ出す女生徒。


「わっ!そんなに!」


 そんなに動くと、落ちちゃうよ!


 突然の動きに対応しきれなかった。思わず落としてしまう!


 どさっ!


「ぎゃう」


 かなりのスピードで走っていたのだ。


 振り向くと、落ちた生徒はワームへ向って走り出す。


「なんだ、あいつ、走れるじゃん」


 おおお、お兄ちゃん!そこじゃないでしょう!

次回配達は2023/03/02の予定です。

サブタイトルは 呪縛 です。


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