【第12話】 王都まで1日
ちょっと遅い夕刊です。
襲撃者達を撃退し、無事に森を抜けることができた。
王都が辛うじて見える。
あと一日、もう少しである。
だけど、彼ら傭兵団の雇い主というか依頼主が、何処かにいるはず。
これが何も解決していない。ああ、それから目的もだ。
1班がターゲットだったから、やはり研究内容が原因かな?
森を抜けた所で宿泊、キャンプとなった。
さすがに満月期過ぎてのOVERKILLはしんどい。
身体が重い。
平然と振舞っているが、実は眠たい。
ん?
リュートさんと目が合う。
くいくい。
手招きしている?私か?
こくこく。
何だろう?
「どうかしたの?リュートさん?」
リュートさんの周りには負傷者が集まっている。
各々好きな形で寛いでいる?
大半は寝ているのかな?
ミンお兄ちゃんが、私の代わりに引っ張ってきた10人だ。
でも?
10人以上いるよね?
「疲れているでしょう?」
そう言って、私は手を握られた。
!
過去を思い出した。
それは前前世のお母さんの手。
柔らかい、女性の優しい手。
亜紀が望んで、得られなかった手だ。
ん?揺れている?
空間が揺れていると感じた。
「リュートさん?揺れています!周りが!?」
「そう感じるのなら、だいぶ疲れていますね」
「こ、これ?あ!おっぱい波動!」
「や、やめてくださいっ!その名前!いつの時代の言葉ですか!今は、癒やしの波です」
付近の男子全員が、リュートさんの胸を見る(一部女子含む)。
ばこん。
どす。
どげしっ。
「不届き者!ママ・リューに、変な視線を向けるなっ!」
ホッシー、負傷者、蹴った?殴った?叩いた?
ギロッ。
あ、ホッシーの視線が痛い。ごめんなさい。
「あ、ご、ごめんなさい!今の言葉知らなくて、つい……」
ごめんなさいは、大切だ。
ちゃんと謝らなければいけない。
「アッキーいつの時代の住人だよ?今時、言わないよ?」
……アッキー?私のことか?
ホッシー、ちょっと怒っている?
「いや、その、ホッ、星……影さん……」
「ホッシーでいいよ、言葉知らないって、試験大丈夫なの?」
?
試験とは?
「入学試験!」
「入学試験?簡単実技少々と聞いたけど?」
「今年から、実技と筆記だよ」
筆記!?
光の速さでシンお姉ちゃんを、我が眼が捉える。
(おおおおおおおねええちゃんっ!!!ひ、ひっ、筆記試験があるぅ)
眠たい気持ち、ぶっ飛んだ!
(え?実技だけじゃないの?やだなぁ)
それだけ?
え?待って、シンお姉ちゃん、書けるの?読めるの?そもそも文字が……あ、サイン欲しいとか誰か学生さんが言っていた!
この世界、文字あるんだ!当たり前か?いや、今まで必要性、感じなかったぞ!?
どうしよう?
何で今年から?
どうして?
実技だけでいいじゃん!
(シ、シンお姉ちゃん、読み書きできるの?)
(ああ、ランお母さんとレイランに習った。そういえば明季は……どうする?)
(ど、どうするって、どうしよう?)
(名前だけでも、今から覚えるか?)
いや、確かに学校は行きたくない。行きたくないと、言っていたけど、言っていたけどぉ!
零点なんて嫌だ!前前世では数学だけが、心の柱、支え!拠所だったんだ!
殺された絵の代わりに、私を守ってくれた数学!
この世界に数学があるかどうか分からないけど、零点なんて嫌だ!数学に対して申し訳なさ過ぎではないかっ!
どんなに虐められても、クラスの皆や先生に酷いことされても、孤児院で無視されても!数学だけは守り抜いたんだ!
……どうしよう?
ホッシーがじっと、私を見る。
「もしかして、字、読めない?」
こくこく。
「書けない?」
こくこく。
私、泣きそう。
?
ホッシーがポーチから何やら取り出した。
びっしりと文字らしきモノが書かれている。
木炭のような、鉛筆のようなモノを取り出し、何か書いている。
?
徐に、それを見せるホッシー。
手に取って見てみる。
「?」
もちろん、なんと書いてあるか私には分からない。
流れるような文字が、一つずつ書いてある。象形文字?何かの形かしら?
「分からない?」ホッシーが尋ねる。
「……分からない」
ポロリ。
……涙、でた。
次回配達は 2023/02/27 朝7時頃の予定です。
サブタイトルは 王都まで、あと1日しかない です。




