【第11話】 殺戮集団
一部グロテスクな表現があります。
虫の嫌いな方、苦手な方は、次話からお読みください。または、体調がいい時にお読みください。
魔力感知に影が浮かび上がる。
影は全部で12。
こいつらが仕掛け人?
目視では、魔獣の後ろから、人影が浮かび上がる。
「よおう、コロ、腕はどうした?」
「お前らか、生きていたんだな。虫使いの誇りはどうした?金に食われたか?」
「ああ、金が大好きでね、金さえもらえれば、どんなお仕事でもしますよ?我ら傭兵団『鮮血』は」
……鮮血だ……。
え?なんで鮮血が僕たちを?
彼奴らに狙われたなら……。
彼奴ら、死んだんじゃなかったの!?
西で全滅したと聞いたが?
学生達に動揺が走る。
鮮血?
先頭の人物が私を見る。
「傭兵団『鮮血』さまだ。暗殺を得意とする裏の殺戮集団さ」
「ご説明ありがとう」
「お前が、噂の金狼か?なかなかの槍捌きだが、今、ひとつだな」
「負傷者はママ・リューの所へ!急がせろ!」
ホッシーがそう言った瞬間、8本の矢が放たれる。
私は、軽く朱槍を振る。
すると、重い音を立て、矢が大地に落ちる。
この矢、見たことある。筋肉で打ち出す、体毛タイプのヤツだ。
見かけは人の形だが、とんでもない奴がいるぞ。
(3班のリーダー、レイ・レッドだ。3班女子は自決の用意を。選択は任せる)
え?なにを言っているの?
(彼奴らは魔昆虫使う虫宿師だ。適合した女子は母胎にされる。僕が前に立つ、タイミングは僕が倒れたときだ。鬼猫さん達がいるけど、掠われたら地獄の苦しみが待っている)
(適合魔昆虫の駆除は終わったはず!)
(彼奴ら以外はね、あいつら、死んだことになっているんだけどなぁ)
「昆虫宿師?」
「昆虫の特性を取り込む種族のことさ、蝶の羽を取り込み飛んだり、外骨格を取り込み身体強化したり、蜘蛛の糸を使い、相手を拘束したり」
「本来は、温和な種族よ。基本、皆、草食だし」
「そんな中に、野心たっぷりのヤツがいた。魔昆虫を取り込んだこいつらだ。一度はニトに駆除してもらったのに」
破裂音が連続して響く。
学生の一人が矢を放ったのだ。
「狙いはいいが、届かないねぇ」
空中にやや大きめの羽虫が飛んでいる?
かなりの数だ。これ、虫機雷?
「どうだ?近づけまい?動けないだろう?獣人族でも重傷だぜ?お前らの回復よりも俺達の羽虫が早い!月は欠け始めた、お前ら終りだ!虫使いは最強なのさ。1班は全て殺せ、後は生け捕りにして虫のエサだ、気に入ったメスは繁殖用だ!」
ヒュン。
投げ矢の音が走る。
突然上がる悲鳴!
「うがあああっ」
シンお姉ちゃんの投げ矢が、団長らしき昆虫宿師の胸や顔に何本も、深々と刺さる。
ア・ダウ先生とティーくんが動いた。
それと、同時に!
「速」
ステータス画面で魔力と体力を重速術に全部つぎ込む。ようは全振りだ。
虫機雷に接触するが、爆発しない、私の方が速いのだ!
まず、一番近くにいた、この団長らしきヤツをOVERKILL!
多分、方向からして、針を飛ばしたヤツはこいつだ!二人目をOVERKILL!
そしてこいつが虫機雷の司令塔!こいつもOVERKILL!
躊躇いは一切無い、リュートお母さんとホッシーを狙ったし、皆殺し宣言を聞いたからだ。
私が槍を振るわなかったら彼女達は死んでいた。誰も反応できない速さだった。
次々にOVERKILLで仕留めたが、8人目でステータス画面にレッドランプが点滅した。
危険信号である。あと4人だが、ここまでか?
通常モードに移り、朱槍で9人目を仕留める。
辺りに転がり、魔力還元する9体の鮮血傭兵団員。
一瞬である。
私が現れたと同時に、次々に爆発する虫機雷。
そして、ア・ダウ先生とティーくんが呪文を放つ。
「速、周、風、導、至!」
スパイスを含んだ竜巻が、生徒全員と鮮血のメンバーを包み込む。
巨大台風並の風に、全員が晒される。
なんだこれ?変な匂い?
突然苦しみだす鮮血メンバーと、小型の魔獣。
このスパイス・パウダーもしかして?
「ニトと僕とで作った魔昆虫の駆除剤。ニトは薬草の専門家、薬草で身体を治す。僕は料理の専門家で、スパイスで身体を癒やす。似たもの同士なんだ」
それがタッグを組むとこうなる、と?
残ったメンバーと小型の魔獣は激しく嘔吐し、体内の魔昆虫を全て吐き出したようだ。
「これ、魔昆虫用の駆除剤だから、他の生き物には無害だよ」
呆然とする生き残った3人。
こいつら、とんでもない悪臭だな。
周りを見ると、小型の魔獣は逃げ出してもういない。
どうやら体内の魔昆虫で、コントロールしていたみたい。
「ま、魔昆虫は死んでも、我ら、本来の虫は死んでいない!」
「い、一度受けた依頼だ、最後まで遂行させてもらう」
スラリと剣を抜く2人。
瞬時に身体が外骨格に変る。
残りの一人は、腕がカマキリのように変る。
走り出てきたのはジェイくんである。
「まさかここで、お前達に会えようとは、南のケナ、覚えているか?」
「キキッ?」
「グゲェ?」
「我らが外骨格、剣は通らん」
一歩踏み出し、剣を振るうジェイくん。
サクッと切れ、分断される虫使い。
「!」
残りを薙ぎ、突く。
魔力還元していく3人。
「周囲警戒!各班、状況報告!負傷者は1班、ママ・リューへ!」
私の魔力感知にはもう反応がない。脅威は去ったようだが。
学生さん達、凄い!
ア・ダウ先生が近寄る。
「助かりました。何といってお礼を……」
「いや、我々も助かった」
「ア・ダウ先生!ここは早く森を抜けましょう!」
生徒達が先を急ぐ。
「負傷者は?」
「2名追加です」
私が運ぶのね、10名。
戦闘勝利の興奮、生き残った安堵。ある者は口数多く、ある者は沈黙の中、生徒達は足早に移動し始める。
……金狼の技、見たか?
見えなかった。
突然の魔力還元、あれはOVERKILLではないのか?
まささか、あれは勇者と魔王の技だ、再現は難しいよ、まして修得は無理だと言われている。
「明季、代わりに引くよ、どきなさい」
「え?いいの?ミンお兄ちゃん?」
「なんの技で倒したか知らないけど、アレ、相当体力と魔力を使いそうだな?無理はするなよ?泣くのは、ランお母さんだけじゃないからな?忘れるなよ?」
!
「わ、分かった。ありがとうミンお兄ちゃん」
この兄は優しいな。いや今の私の姉妹兄弟は、みんな強くて優しい。
私は恵まれている。
「あと……」
「なに?」
「俺も、焼肉、食い放題なんだよな?」
誰から聞いたの?
「どうだろう?」
「そこのところ、よろしくな!」
この兄は、強くて、優しくて、食いしん坊だな。
次回配達は 2023/02/27 朝7時の予定です。
サブタイトルは 王都まで1日 です。




