【第10話】 灰色の霧
号外です。
ん?
足音?
多いぞ?
「リュートお母さん、ここにいたの?ここで、寝るの?」
ん?
「リュー母さん、エノンと一緒がいいの?付き合うよ。星影さん、結界お願い」
ん?
「おお、任せなさい!ママ・リュー、先に寝てていいぞ、朝、交代ね」
ん?
私は疑問を口にする。
「リュートさん、お母さんって?」
答えたのはエノン。
「リューちゃんは、パーティーメンバーに、お母さんって言われているんよ」
なんで?私のお母さんだぞ?
いや、今は違うけど……ごにょごにょ。
歯切れが悪いな、私。
「え?俺は言わないぞ?」
「えっ?でもジェイは姐さんって言うよね?」
「姐さんは、姐さんだろ!」
「怒るなよ、ジェイ?」
「怒ってねーよ」
「ジェイ、剣の手入れしようよ」
「おお、ロットン、そうしようぜ。俺とロットンとホッシーで警戒するから、お前ら先寝ていいぞ」
「私、明季ちゃんと、お話し、したいんだけどなぁ?」
「ホッシー、研修中だぜ?話すなら姐さんの後か、明日の夜!」
「チッ分かったよ。明季ちゃん、明日の夜、星影、予約な」
予約されたしまった。
みんな、仲いいな。
何故だろう、羨ましい。
悔しいくらいに、羨ましい。
「スープできたよ!これ飲んで寝るといいよ」
「おお、ティーのスープだぜ!」
わらわらと集まるパーティーメンバー。とミンお兄ちゃん。
「どうぞ」
「え?私もいいの?」
紙だろうか?
三角形の紙質のコップだ。
「これ、持ち運び便利なんです。飲み終わったら回収して、火の魔法で焼いてしまいます」
「ティーさんが考えたの?」
「いや。リューかあ……リュートさんです。あと、私はティーでいいですよ」
ちょっと頬を染め、自慢げに話すティー。
「パーティーの皆さん、リュートさんをお母さんって呼ぶんですね」
「ええ、私達のパーティーメンバー、色々と問題が多いんです。それでリュートさんには、お世話になって、ホッシーが、あ、星影さんが、ママ・リューと言い出したら、皆言い出して……」
愛されているなぁ。
リュートお母さんのエピソード、色々聞きたいなぁ。
その日の夜は、何事もなく過ぎ去った。
怖いくらい静かな夜だった。
そして、夜明け前。
私は異変を感じた。
この感覚、以前感じたことがあるぞ?
「明季、アタックだ!」
ミミお姉ちゃんの声。
魔力感知を最大限に広げる。
え?
エラー?
何も感じない?
これ、黒い霧!?
「敵襲!数不明!抜刀!魔法詠唱キープ!」
星影さんの声が響く。
全身のスイッチがONになる。
森から、灰色の霧が流れ出てくるのが見えた。
サーッと、地面を這うように流れ出てくる、大量の霧。
ア・ダウ先生の簡易結界に触れると、ぽっと薄暗く発光する。
そっくりだ!
でも黒い霧は、夜だけのはず、改良版?
「ティー!スパイス!」
スパイス?香辛料?
「了解!」
星影さんが叫ぶと、ティーくんが腰に下げた袋から何かをつかみ出した。
流れからすると、スパイスなんだろうけど、なんで香辛料?
印を結び、それを空中に、豪快にばらまく!
「先生!」
「速、突、風、導、至!」
風が起こり、突風と共にスパイスが灰色の霧にぶつかる。
なっ!き、霧が散った!?
霧が、火に触れたように、あちっ!と言わんばかりに退き、霧散していく!
凄い!なんだ!あのスパイス!
一斉に飛び出してくる、小型の魔獣。
数が多いな。
あ、でも、こいつら、昨日と動きが違う!統制がとれていない?慌てて飛び出した?
さてはこいつら、霧に頼って油断していたな!
「エノン!リュートさんをお願い!」
この魔獣は動きが速いけど、私の方がそれ以上に早い。ゴブリンと獣人族の眼と耳と反射神経、それらをフルに使えば!
私は、朱槍で次々に魔獣を仕留める。
霧に中に潜んでいた小型の魔獣も、次々に狩られていく。
コロ叔父さん、フーララさんと競っている?
ギャウ!
魔獣を仕留めた悲鳴。
ジェイくんだ。何匹目だ?
だけど、学生さんの攻撃は、ジェイくんの剣撃以外、あまり効果が無いようだ。
「1、2班!先生の風に重ねろ!」
「はい!」
「いいぜ!」
風は更に力を増し、灰色の霧は終に無くなってしまう。
学生さん、凄い?
(チッ)
ん?誰だ?
誰かの舌打ちを、私の魔力感知が拾ったぞ。
「おい、ニトとミントはいつ帰ってくるんだよ!俺達2班は押されている!前衛不足だ!」
「人に頼るな!てめーらでどうにかしろ!」
そう言いながら応援に走るジェイくん。
が、2班を押していた小型の魔獣達は、ミミお姉ちゃんが瞬殺する。
……鬼猫……すげー。
見えた?拳だぞ、拳と蹴りで鱗ごと破壊した!
かっけー憧れるぜ。
おい、どうした?
み……みちゃった……。
なにを?
鬼猫のおっぱい。突きの時、胸元から……。
はああああっ!?
……お、おれ、鬼猫に殺されるのかなぁ……。
キンッ!
何かが弾かれる音。
「もう少しさがれ、あいつらは、君達の手に余る」
「は、はいっ」
「そこの学生」
「ひゃい」
「私の何を見た?」
「ひっ、え、えっと(嘘をついたら嫌われる?いや、殺される!?)み、見てはいけないモノを見ました!ご、ごめんなしゃいっ!」
「命のやり取りをしている戦いで、余裕だな、おい?……気に入ったぞ、名は?」
「れ、レイ・レッドですぅ」
「生きて王都に帰れたら、鍛えてやる。楽しみにしておけ!横のお前もだ」
……これは、お仕置きというより、彼らにとってはご褒美か?
次回配達は 2023/02/26 朝7時頃の予定です。
サブタイトルは 殺戮集団 です。




