【第21話】 妖精の長老
小さいながらも、武人のオーラを纏った二人のゴブリン。
よく見ると、その二人の間には、迷彩のような柄のローブを纏ったゴブリンがもう一人。
「お邪魔するよ、よろしいかな?」
「え、お、おばばさまゴブ!」
「え?ドワーフ達との交渉はゴブゴブ?」
「その件で来た」
おばばさまは、鋭い目で一同を見渡すと、挨拶をした。
「やあ、今晩は。魔獣を倒したそうだが、詳細が聞きたい」
そのゴブリンはとても年老いていた。
曲がった背中、嗄れた声。
しかしその窪んだ目は力に満ち、皺だらけの小さな手には、大きな杖がしっかりと握られていた。
かなり高齢?
「250歳を越えているよ、小さな戦士よ」
「ゴブ!」
よ、読まれた?考えを!?
「驚くことはあるまい?」
「え、でも、250歳って……ゴブゴブ」
ここのゴブリン達は強化されて、5年しか生きられないはずだ。それが250歳?200歳平均の寿命を、大きく上回っている?
「それはワシがお前達と逆の術を施されたからさ。ワシが魔族に捕まった時は190歳、人族はこの老いぼれのゴブリンに、どこまで寿命が延ばせるか?という実験をしたのさ。永く生きると色々な経験をする。まあ中には無為に時間を消費する輩もいるがね、おかげで、おばばさまとか言われ、今じゃ相談役さ。ワシのこと大体分かったか?小さな戦士よ」
相談役の長老さま、という位置ですね、了解。
しかし、無為に時間を消費する輩?棘のある言葉だなぁ、と思いおばばさまの視線を追うと、そこにはいつの間にか、エルフさんがいた。え?ホントいつの間に?
「無為に時間を消費とは、私のことか?あん?」
「おや、いたのかえ、エルフ」
仲、悪い?
「いたのか、だと?呼ばれたから来たんだぜ、何用だ?」
「魔獣との戦いの話、聞きたいじゃろ?」
「っ!ま、まあな」
「ドワーフとの交渉に条件がいくつかあるゴブ」
おばばさまの右に控える戦士が声を上げた。
「ゴブ、その一つに、魔獣を倒した戦士と話がしたい、とゴブゴブ」
「え!わ、私とゴブ?」
「ああ、最終的には、お前と話し、確かにお前が魔獣を倒した、と確信できたら我々を迎えてくれるそうだゴブゴブ」
「え、弟は確かにラグナルを倒したよゴブゴブ、鱗だってあるし、コアだってあるよ、ほらこれゴブゴブ」
お兄ちゃんは首から下げている、綺麗な八面体を見せる。鮮やかな真紅だ。
?
お兄ちゃん、鱗は分かるけど、コアって何?その綺麗な八面体のこと?
「コアだと?嘘を言うな!紅コアはラグナルのリーダーがその体内に持っているとされている、魔力の結晶だぞゴブゴブ!」
「嘘ではないゴブ!これは一番でかい魔獣の抜け殻の中にあったゴブッ!」
「名前もまだない1年が、控えろゴブ!あの鱗は本当に魔獣の鱗かゴブ?焦げて溶けているもの、割れているモノもあったゴブ、偽物ではないのかゴブゴブ?」
カチン、兄に対する暴言、許せんな、と思っていたら、お父さんが動いた。
殺気を漲らせ、ゆっくりと踏み出す、お父さん。
お、お父さん、喧嘩は駄目だよ、相手は槍持っているし。
「おい、名前がなくとも、そいつは俺と一緒に戦った戦士だゴブ。5年生でも侮辱は許さんぞゴブゴブ」
足を止め、声の主を見いだすお父さん。
あ、3年生の戦士コロさんだ。
風の戦士コロさん、魔獣との戦い、格好良かったなぁ。今もお兄ちゃんを庇ってくれて、素敵だなぁ。
ん?
い、今、コロさんと目が合った!?
「それに偽物だって?なら、そのご自慢の槍でつついてみたらどうだいゴブ、鱗を。鱗は本物だよ。形、見ただけで分かるでしょう、どれだけ私達があれに苦しめられてきたか。戦士なら分かるはずだゴブ」
美観お姉さんが颯爽と現われる。
あれ?レイモンお姉さんは?
「ゴブゴブ気分はどうですか?」
「あ」
心配そうな顔で、私の横に立つレイモンお姉さん。
いつの間にか私達を中心に、皆が集まり始める。
日は暮れ、長い夜が静かに始まる。
次回投稿は2022/06/27の予定です。
サブタイトル「会議は眠たい」を予定しております。