【第8話】 王都まで2日
おはようございます。
朝刊です。
「ドロトン君はン・キング、知っている?」
「い、いま一番会いたいドワーフ!」
「会ったことないの?」
「ン・キングは王都にいたことあるけど、すれ違いでなかなか会えなかったんだ。いまはゴブリンの東砦にいるはず!」
「会いに行かないの?」
「明季くん、ゴブリンの東砦は遠いよ、僕では辿り着けない。途中で魔獣のご飯になるか、方向が分からず、泣きながら帰ってくるか、のどちらかさ」
連れて行くとなると、キッドナップと疑われるかも知れないな。
キッド=子供、ナップ=捉える、誘拐のことだ。
ン・キングを王都に呼ぶか?
「王都に着いたら、ン・キングを呼ぶ?」
「え?またまた、明季くん。ン・キングは自由のドワーフ、誰のいうことも聞かないよ?我儘の極みたいなドワーフだよ?」
「ダチだ。果てしなく昔から知っている。私の言うことは、まず、二つ返事で聞いてくれる(たぶん)。ドロトン君、君の技術は素晴らしいが、危険だ。ン・キングの元で修行する気、ある?」
「え?紹介してくれるの?」
「紹介できる。だけど一度紹介したら、ドロトン君、どっぷり嵌まるのでは?」
「もしかしてゴーレムの研究?」
「あれ?知っているの?ゴーレム?」
「ン・キングのゴーレム研究は有名だよ、王都のメイさまの保管所に突撃して騎士団ともめた」
「え?」
「騎士団と互角に戦って、ホントか嘘か分からないけど、沈静に朱槍のゴブリンが駆けつけたそうだよ」
は?
「で、ど、どうなったの?」
「保管所まで辿り着いたらしいけど、メイさま、大きな泥の山?に包まれて、会えなかった、とか」
「ン・キングは?」
「1000日間、入都禁止」
うわ、王都から出て行けと?1000日間、出禁?
「今、ン・キングは、ゴブリンの東砦でスーパーゴーレムを手に入れ、研究をしているわ」
「え?入手したの?うっそだぁゴーレム自体いないよ?」
「多分、ドロトン君と、気が合うと思う。君が望めば、いい形で紹介してあげる」
「……」
「どうしたの?」
すっ、と小指を握られた。
「きゃっ!」
え!?
わ、わたし、きゃっ、って言った!?
女の子みたい!
いや、女の子か。
(突然ごめんなさい、僕、念話苦手で)
(え?な、なに?)
ドキドキドキドキ。
し、心音が!?
(この襲撃、僕が……僕たちが、原因だと思う)
(?)
(僕達の班、リュート、ニト、ジェイ、ティー、星影さん、ミント、ア・ダウ先生と傘の再現をしているんです)
(傘!?)
(それと、飛龍という文字が頻繁に出てくる古文書を、王都の図書館で見つけて)
飛龍!
(誰かに話した?)
(クラスの皆は知っています。あと学校の先生達も少し)
(皆、古文書は偽物だって言うけど、書いてあることが面白くて……)
(再現したの?)
(まだ途中ですけど)
(圧力かかった?)
(はい、他の先生からやめるようにと。ア・ダウ先生とその先生、喧嘩して。ニトも今回の実習は気をつけろ、と言っていたし)
(その研究、のったっ!)
(え?)
(ン・キングと共同研究にできる?彼と研究するならある程度安全だよね?)
(はい、それはもうン・キングは、私達ドワーフ一族の憧れみたいな存在ですし、彼の敵はドワーフ一族の敵ですから)
しかしそうなると、王都に到着しても気が抜けない、ってことか?
ン・キングに引き合わせることと、リュートお母さんやニトお父さん達の安全確保、これが優先かな。
(よく話してくれたわね?始めて会ったのに)
(そうですね、自分でも不思議です)
(一ついいかな?)
(はい)
(なんで再現しようと思ったの?)
(え?それは僕が、ドワーフだからですよ)
おお、いい答えだ。
「アクセス・イージーモード」
「え?」
瞬時に私の周りに現れる、3体の超小型ゴーレム・ピジョン。
鳩サイズのこの銀色のゴーレムは、言葉を届けることができる優れものだ。
まだ満月期。ネクロマンサーの召喚術は問題なく使える。
「ン・キング!真球と純鉄の答えを知りたくば、王都へ来られたし!行け!ピジョン1.2.3!」
銀の矢のように3体のゴーレムは飛び去る。
魔力の流れを感じた生徒もいたが、ほとんどがピジョンを見ていない。
緊急時、召喚呪文を省くシステム。要は、無詠唱だね。
魔力はかなり使うが、超便利である。
ただ、大人数とか、でかいスーパーゴーレムは無理なんだよね、今のところ。
嬉々として王都へ来るだろうな、ン・キング。
あ、でも出禁か?
まあ、途中まででも来てもらえれば、どうにかなるでしょう。
「次は森の入り口まで歩く、いいな!」
シンお姉ちゃんの声が響く。
そして、その日は森の入り口でキャンプ。
何も起こらない静かな夜。
「なぜ、王都から誰も来ない?おかしいだろう?」
ジェイくん、落ち着いて。
敵は満月期が過ぎるのを待っている?
すると、魔力感知に5つの影。
南の王都方角から2つ、北から3つ。
私の次に、反応したのは星影さんだった。
「南2つ、北3つ、みんな、抜刀用意!魔法班、詠唱開始!3、2……」
緊張が走る。
「安心しろ、私達の応援だ」
シンお姉ちゃんが、その場を押さえる。
南からの訪問者はコロ叔父さんとエノン。
北からは、ミミお姉ちゃんとミンお兄ちゃん、それとフーララさんだ。
長い一日が過ぎようとしていた。
次回配達は 2023/02/25 朝7時頃の予定です。




