【第6話】 努力のドワーフ
朝刊です。
「一度は助けたが、2度はない。獣人の護衛は高額だ、最低500万」
「ご……3名で」
「違う、俺一人、一日500万だ」
「!」
ざわめく学生達。
中には頷く者もいる。
500万とは?金額らしいが?
価値がわからん!
「……では、そちらの女性は?」
「先生、獣人族は女性の方が雇い賃、高いよ?」
一人の生徒が言う。
「え?そうなの?」
「先生、よくそれで先生務まるね、魔法以外も勉強しないと」
「学校に、緊急連絡したのでしょう?それなら待つべきだ。動かない方がいいよ」
「そうだよ先生、時期に王都の騎士団か、上級生、来るでしょう?交渉よりも、待ったら?」
「そうそう、先生、待つだけでだよ?」
数名の生徒が抗議する。
先生、平然としているけど、焦っている?
汗の匂いが不安定だ。
「シュート家のアランさま、私は王都で食堂開いているリドンの子、ティーと言います」
エルフ?
「ハーフエルフです、シュート家の明季さま」
!
お、思考を読まれた!?
中々やりますな、この子。
身長は私と同じくらいか?
元気いっぱいの男の子!って感じだ。
眼は鋭く、鼻筋がすっと、通っている。エルフって基本美人さんが多いなぁ。
私目線だけど。
あ、あれ?ちょっと赤くなった?
「私は、ン・ドント大陸一の料理人を目指しています、今回、助けていただいたなら、生涯、一流の料理を提供致します」
「ほう、我が姉の護衛は一日、1200万だぞ?」
「うっ」
旗色悪いか?ティーくん?
「さらに我が妹は、姉以上だぞ?」
え?そうなの?
それぞれの学生達が、得意分野でアピールする。
ようは投資だ。
よく考えたなティーくん。でも獣人が興味を示す、価値を認める者いる?
「ティーとやら、戦略はいいが、札が今ひとつだな、我らが才能を認めるのは、リュートのみ」
うわ、シンお姉ちゃん、辛辣!
「では次は私が」
長身の女の子である。スタイルがいいし、手袋とか、アクセサリーとか、お洒落である。
「私は吟遊詩人、見習いです。名前は星影。古代から現代までの歌を集め、研究しています」
「一曲、歌うのか?」
「はい、500万には届きませんが、将来、有望と思いますよ」
「ほう、聞こうか」
「では、古より伝わる、北のゴブリンの歌を。この歌はとても異質で、不思議な歌です」
え?
目の前の少女は、源キーでボカロを歌って見せた。
よく響く声で、騒がしい生徒も沈黙して聞いている。
あの、他にも教えたくなったのですけど、この子に。
と、思わせる女の子だ。
私はウルウルの眼で、星影さんを見る。
「どうでしょう?」
「響く声だ」
そう言ったのはシンお姉ちゃん。
気に入ったのかな?
ん?ドワーフ?
生徒の中で、一番小さなドワーフが進み出てきた。
「私は古のドワーフ、名も無きドワーフ王の末裔です」
え?
「おいおい、またかよ、やめとけドロトン」
「何が末裔だよ、控えろよ!」
一部の生徒が騒ぎ出した。
この子、なにかある?
「皆、待って、ドロトン君にも話をさせて!あんなに一生懸命頑張って作ったのよ!」
ん?リュートお母さん熱弁?声を荒げた?
「正確に言うと、血は繋がっていません、ですが、その技術は直系です。シュート家のアラン、この価値がおわかりか?」
そう言って、直径10㎝程の玉を見せた。
「なんだそれ」
アランお兄ちゃんが、のぞき込む。
「真球です。材質は純鉄、私が古文書を読み解き、ドワーフの村々を尋ね作りました」
え?
「見せるな!ただの鉄の玉だぜ?恥ずかしいよ!」
真球?
「価値ないだろ?何の役に立つんだ?」
うるさい、だまれ!
「まだ、王都のドワーフ達には見せていない。これは悪用される恐れがある」
純鉄?
「またまた、お前、その妄想癖、どうにかしろよ」
私は一歩進み出た。
「見せてもらっても、いいかしら?」
ちょっと驚く、ドロトン君。
「どうぞ、シュート家の明季さま」
「明季くんでいいよ」
手に取る。
直感では本物だ。
凄い、この子!天才か?
「これを、今、真球と証明できる?無限鉄と証明できる?」
「はい、風魔法で浮遊させ、角度半分(45度)で風魔法を当てると、永遠に近い時間、回り続けます。そしてそれは、回転しているように見えません」
興奮して前のめりに話す、ドロトン君。
私を理解者、と認め始めたらしい。
「真球はそれでいいが、純鉄はどうする?」
「ジャイアント・スパイダーの脚を切っています、切り口をご覧下さい」
アランお兄ちゃんが確認をする。
「まあ、おかしいとは思っていたが、見事な切り口だ」
「アランお兄ちゃん、何がおかしいの?」
「この蜘蛛の脚は、斬るより、折るのがたやすい。ハンターでもここまで綺麗には斬れんだろう。剣はどこだ?」
「これがその剣だ」
負傷者はチラリ、とドロトン君を見る。
「貸していいのか?ロットン?誰にも貸すなって言っていたけど?」
「貸していいよ、ジェイ」
負傷者の一人が剣を差し出す。
「軽いな?試していいか?」
「どうぞ、望むところです」
ドロトン君が不敵に笑う。
ジャイアント・スパイダーの脚を1本、大地に突き刺し、徐に剣を振るうアランお兄ちゃん。
「よっと」
脚は瞬時に8っに分断される。
息を呑む生徒諸君。
……見えたか?
踏み込みだけ、少し見えた……。
魔石があっても、今の斬撃は躱せないぞ?
「ジェイ、だったかな?」
「は、はい何でしょう?シュート家のお方?」
「君は、この剣に助けられたな?」
「……はい、この剣でなかったら、死んでいました」
「恐ろしい剣だ。しかし明季、これは振動剣が作れるのでは?」
私はシンお姉ちゃんを見る。
「どう?」
「護衛しよう」
こうして、王都までの護衛が始まった。
生徒15名、負傷8名にア・ダウ先生、計24名。
(明季、気づいていないだろう?)
(え?何?シンお姉ちゃん?)
(この学生さん達、狙われている)
(え?)
(おいおい明季、気、抜くなよ?)
(お前もだ、アラン)
(じゃ、お金の交渉は?)
(芝居だ)
(え?お芝居?)
(私達が、リュートやその友達を、見捨てるわけないだろう?)
次回配達は 2023/02/24 朝7時頃の予定です。
サブタイトルは 王都まで3日 です。




