【第5話】 一緒に行きませんか?
号外です。
「女の人、泣かせたら駄目だろ?あれ?あの子、リュートさん?」
「あ、アランお兄ちゃん!」
まっぱのアランお兄ちゃんが、ふっと目の前に現れる。
バキバキに割れた腹筋、目立つ肩の筋肉、三角筋だっけ?体脂肪、マイナスでは?と思わせる容姿だ。
「あ、この匂い、リュートさんだね。久しぶりだなぁ」
「アランお兄ちゃん、匂いで判断、絶対に口にしないで!」
「なんで?」
なんで?獣人族の常識と人族の常識は違うのよ!
女の子を匂いで判断するなんて、怖すぎる!
絶対嫌われる!敵視される!
と、思う。少なくとも、私は嫌だ。
「はいこれ、服と靴。あとフックね」
「おう、ありがとう。こいつら、聖龍門学校の生徒だってな」
「ええ」
私達、二人の会話をビックリして見聞きしている、数名の生徒さん達。
いや、会話じゃないな、アランお兄ちゃんの格好か。
戦闘時、裸の意識はカットされちゃうんだよね。
戦うことにのみ、意識を集中、よりベストな状態を選ぶ。
躊躇って選択を間違うと、死に直結する。
人モードで戦うか?獣モードで戦うか?
中間の獣人モード戦うか?
私はポメラニアンだから、人モード選択が圧倒的に多い。
「おい、明季、私のは?」
すっ、と現れるシンお姉ちゃん。
うわぁ、綺麗な肢体、眩しい裸体。見れないよ、シンお姉ちゃん。
詳細は省くが、リアルな生きたギリシャ彫刻?みたいな凄いバランスの女神がそこにいた、とだけ記しておこう。
「こ、これよ、シンお姉ちゃん!」
私はなるべく見ないように、視線をはずし、衣とフックを渡す。
魔力感知を働かせ、周囲の不届き者の、視線を妨げるように振舞う。
「明季、靴!」
「は、はい、シンお姉ちゃん」
最後に靴を渡す。
周りの生徒達は息を呑み、固まっていた。
「ん?どうした?」
「どうしたんでしょうね?」
「ああ、裸か、緊急時だ許せ」
いやぁ、許すも何も、眼福以上?もはや尊い域では?
獣人族は、人族ほど裸に拘らないんだよねぇ。
私は前前世があるから、ここで裸は無理。
人前なんて、水着でも無理。
「明季、お前変っているよなぁ」
「なに?アランお兄ちゃん?」
変っている?
なにがかな?
妹に変なこと言わないでね?お兄ちゃん。
私、兄弟姉妹耐性、殆ど無いの、いじわる言われたら、ほんと、へこむから。
「いや、俺に対しては平然と、ハイどうぞ、だろ?」
「?」
「きゃ、とか、もうおにいちゃん!とか妹味ではなくて、どちらかと言うと弟味だ」
「味?」
「だってよ、俺の場合、裸見てもなんともない感じで平然として、シン姉の場合は見ないよう視線、逸らしたり、防いだり、これ弟味だろ?」
「はははっ明季は男性属性が強いと?」
「いやシン姉、こいつ時々男だぞ」
うげっ!ゴブリン男子の意思が、出ていた?
「だ、そうだ。明季、アランの忠告だ、今後変な視線、婦女子に向けるなよ?」
心外である。
抗議しますっ!
変な視線とは、なんぞや?
「……」
「不服のようだな?」
こくこく。
「まあ、私は気にしないが、世の中広い、色々なヤツがいる、気にするヤツもいる。心に留めとけ、いいな?」
「……」
こくこく。
「シン姉、これからどうする?」
「王都を目指すよ」
え?生徒達は?
「行くぞ、明季」
え?
このまま?ポイ?
負傷者8名と生徒14名とア・ダウ担任、ポイ?
ん?アランお兄ちゃん、交渉している?
「我々が倒した魔獣と蜘蛛の魔石は回収する、蜘蛛の脚はそちらで回収して構わない、かなり高価で売れるはずだ」
……おい、あの獣人、蜘蛛の魔石取りやがったぞ……
ああ、俺達でも仕留められたのによ、あとから来て、弱っているところを……。
……何様?
あれは、私達の魔石よ?
……横取りなんて、ひどい!
「おい、そこの学生5人、聞き捨てならんな、魔石は仕留めた者が取る、そこに卑怯はない。横取りでも許される。お前達が我々より遅く、弱かったのだ。欲しければ奪うがよい、奪ってみるか?」
「う……」
「傭兵団や、ハンターにそのような口をきいたら、即、殺されるぞ、以後注意しな」
命より魔石が上ってことかしら?
これは亜紀の常識は横に置いておかないと、この世界では邪魔だな。
ん?この汗の臭いは?恐怖の臭い?
ちらっと眼を移すと、青ざめた学生が5人。
腕に、魔石付きのブレスレット。
少し、大きいか?
もしかしてお金持ちかしら?
この程度の生徒、聖龍門学校、たいしたことないかな?
いや、この欲張り学生で判断したらいけないな。
全体を見たい。
「シュート家の方、無礼をお許しください。生徒の暴言、不愉快な思いを」
「なに、警告は一度までですよ、あとは無視します。あのまま外の世界で暮らすと即、落命します。ここは氷の世界です。学校とは何を教えるところなのですか?」
うわっ、アランお兄ちゃん性格きつい?いや、この警告は響いている者もいる?
周りを見ると、雰囲気が変った者が数人いる。
この数人の学生は真剣な眼差しで、アランお兄ちゃんを刮目している。
「シュート家の方は、これからどちらに向われるのです?」
「王都へ、二人が聖龍門学校の入学希望でね」
「では、一緒に行きませんか?我々は龍門の生徒と関係者ですし」
ほらきた、ご一緒イベント!
どうするのアランお兄ちゃん?
ん?一瞬、シンお姉ちゃんを見た?
シンお姉ちゃん、お顔が厳しい?怒っている?
「それは、護衛の依頼か?」
!
え?そっち!?
次回配達は 2023/02/23 朝7時頃の予定です。
サブタイトルは 努力のドワーフ です。




