【第3話】 やっぱり行きたくない
号外です。
王都がどんどん近づいてくる。
感覚で分かる。
妖精達のざわめき、善しも悪しも飲み込んだ巨大都市。
王都、首都、ン・ドント大陸の中心、ルゥリー・トゥルリー。
(明季、遅れてるぞ!)
アランお兄ちゃんの念話が飛んでくる。
王都は別にいいのだ。王都は……。
学校だ、問題は。
なんで学校行く、とか言ったのだろう?
聖龍門学校?最先端とか言うけど、どんな学校?
あ、気分が沈んできた、不安しかない。
見もしない学校だけど、楽しさが見つからない。
私はとうとう立ち止まってしまった。
行くと決めたのに、実際、学校に近づくと、沈んでしまう。
ああ、せめて見学から始めれば良かった。
嫌な思い出は、どうしたら消えるのだろう?
ああ、前前世の記憶、邪魔だな。
楽しい思い出って、大事だ、つくづく思う。
ゴブリンの時は、皆で目指した故郷、ン・ドント大陸、ルゥリー・トゥルリー。
全力で、目指した。
今は?
メイドンが待っているのに!ニトお父さんやリュートお母さんも?
「明季、どうしたの?」
シンお姉ちゃんが心配そうに、声を掛けてくる。
王都はまだ見えず、このペースだったら、到着は深夜かな?
「やっぱり行きたくない」
本心だ。
私は、こんじょー無しのヘタレです、金狼の二つ名、返上します。
《そんなっ!まけないで!》
!?
銀ちゃん?かな?
「明季!」
「アランお兄ちゃん、私……」
ダッシュでごー。
全力で逃げた。
嫌なものは嫌だ!
なんで、どうして、生まれ変っても、がっこー行かなければいけないのだ!
これこそ、いじめではないか!
何が悲しくて、もういっかいがっこー行かなあかんねん!
しかし、回り込まれた。
アランお兄ちゃん、脚、速すぎ!
まさか、もしかして、脱走防止のタメの同行者?
あ!今、ピクッて瞼が揺れたっ!
私、信用無し、ってこと?
いや、確かに逃げたけど……。
「おい!シン姉っ!」
!
これ!?
「血の臭い!?」
微かに声が?悲鳴か?
「……か……」
どっちだ?
「……だ……」
こっちだ!
「アラン、先行!いくぞっ、明季、服お願いっ!」
一気に服を脱ぎ捨てる二人。
ええええええっ!いきなり真っ裸!?
目、目のやり場に困りますっ!
瞬時に現れたのは、黒い豹と、すらりとしたチーター。
ド迫力である。
チーターはもう見えない、黒豹も小さくなっている。
「……残されてしまった」
焦るなよ、明季。
飛び散った服とフックを拾いながら、自分にできることをする。
え?なに私?私は、まっぱになりませんよ?前前世の記憶が邪魔して、恥ずかしいし、変態してもポメラニアンですから。戦闘向きの絵ではありませんし。
あ、今回は靴もあったんだよね、これも回収。
基本、獣人族は靴を履かない。戦闘時、フットワークの邪魔になるからだ。
でも今回は王都に向っているので靴持参。
「アクセス」
ステータス画面。
ゴブリン魔力感知、を最大限に……!
蜘蛛の魔昆虫!?
でかいな、これが1匹。
それと小型の魔獣かしら12匹。
12匹!?多いな。
人族?エルフ?15名、負傷8名。
何の集団だ?
この辺に、観光地とかあるのかしら?
私の脚は段々と早くなり始める。
到着した時には小型の魔獣3匹と蜘蛛の魔昆虫だけになっていた。
蜘蛛の魔昆虫も、残りのHP、少なそうだ。
(明季!後は任せた!倒せるだろう?)
(よろしく!)
え?え?
突然、お鉢が回ってきた!
なんで?どうして?まだ到着していないよ!
(こっちのバージョンだと、誤射される恐れがあるの!)
(そ、助けたのに、射られてはたまらん!)
なるほど。
目視できた!
蜘蛛の魔昆虫、やっぱりデカいなぁ。
取敢えず。
「これ、いいかしら?見ていてね?」
そう言って、避難している女の人に、服の見張りを頼む。
負傷者の手当をしているのかな?
ん?よく見たら、あまり変らないぞ?見た目私と!
「え、あ、あなたは!?危険です!あれは!」
「動かないで、じっとしていてね」
いい香りの女の子、ほんと動かないでね。
朱槍に魔力を通す。
その瞬間、巨大蜘蛛と魔獣が私をターゲットにする。
おお、魔力反応早いや。
だけど、シンお姉ちゃんとアランお兄ちゃんの攻撃で、ぼろぼろだ。
私は妖精の走りで間合いを詰め、まず、小型の魔獣を薙ぐ。
魔獣ラグナルの小型版みたいだ。
ボッ、と瞬時魔力還元する小型の魔獣。
これはこれで、集団戦になったら厄介だな。
速いし、小回りがききそうだ。
そして、蜘蛛を!
デカいな。私は軽く大地を蹴る。
「ふんっ!」
一撃に見えるが、実は縦横に斬っている。
魔石を残し、魔力還元する巨大な蜘蛛。
あ、脚は残るんだ。
魔獣ラグナルの鱗みたいなものか?
大地に降りると、同時に魔力感知を最大限で発動させる。
……悪意、敵意、殺意、なし?魔獣の感覚は感じられない。
うん、大丈夫。
「ふうっ」
私は戦闘態勢を解く。
すると、私に歩み寄る複数の戦士。
皆、若い?
あ、傷だらけの戦士、これは衣装からして魔法使いか?
年齢はランお母さん?くらいかな?いや、妖精族の年齢は難しいんだよね。
私も、まだ一歳ないし。
「獣人族の戦士の方でしょうか?」
「はい、私は獣人族、シュート家の明季」
「私は王都聖龍門学校の三年生の担任ア・ダウ」
……王都?聖龍門学校……担任?
あ、おわった。
これ、学校行き決定イベントか?逃げられないパターンだ。
次回配達は 2023/02/22 朝7時頃の予定です。
サブタイトルは だから、学校は…… です。




