【第2話】 東から南へ2
おはようございます。
朝刊です。
歌が聞こえる。
ゴブリンやドワーフ達が、歌を歌って解体作業している。
辺りの緑はさらに濃くなり、森林地帯のようだ。
緑化が凄いスピードで進んでいる!魔族チクリの影響だ。
(来た!)
(見えたぞ!)
(闘神さまだ!)
ザワつくゴブリン達。
(早く来い、直ぐに来い、今はどこだ?ここに来い!一日千秋、想いも千秋)
あ、これン・キングだ。
ゴブリン達の歌声が、更に大きくなる。
アイお姉ちゃん!来たよ!
到着するなり、アランお兄ちゃんが一言。
「おい、明季、これホントにお前が壊したの?」
砦、柱だけじゃん。と付け加える。
「……それ、言わないで」
「ゴブ、ようこしょ、闘神さまゴブゴブ」
「こんにちは、リラちゃん!躍息通り来たよ」
「ゴブ、お待ちしておりましたゴブ、特に……ゴブゴブ」
「どこだ?ここか?まだか?今か?先程見えたぞ、少し見えたぞ、到着したか?まだ来ぬか?」
「ン・キング!ここだよ!」
転がるように走り、近づくン・キング。
「待っていた、古代の知識、知識の結晶、ドワーフ技術、復活の鍵!」
「よっ、明季!」
「アイお姉ちゃん!え?」
アイお姉ちゃんはドワーフの子供達を引連れていた。
1、2、3……12名!?
ん?よく見ると、エルフやゴブリンの子供も混じっている。
「な、何を?」
「いや、なんだか、なつかれて、な」
え?着いたの昨日だよね?
抱っこに、おんぶ、脚にもしがみついている。
みんなキャキャ奇声を上げて喜んでいる?
「ほーれ!高い高い!」
「え?」
ぽっんと軽く浮く、ドワーフの子供。
「んきゃっ!」
うわぁ凄く嬉しそう!
え?でもアイお姉ちゃん、子供好きだけど苦手、だったよね?
「へへっどうだ?可愛いだろう!凄いだろう!」
「う、うん、ちっちゃな子、もう平気なの?」
「おう、ドワーフ限定な」
「限定?」
「この子達、硬くて丈夫!頑丈なんだ!ふにゃふにゃしていないし!安心して抱っこできるぜっ!」
もじもじ。
ん?あれ?リラちゃん?
「こっちおいで!」
とことこっと走り寄り、私の脚に取り付く。
そして、私を見上げニッコリと笑う。
ひょい、と抱き上げると、ゴキゲンで笑い声を上げる。
可愛いなぁ、ちっちゃいゴブリン。
……邪な考えが、頭を過ぎる。
「アイお姉ちゃん、パス!」
そのまま両手で、アイお姉ちゃんに、リラちゃんを渡す。
「パス?っおおおおおおいぃ!」
あ、フリーズした。
「駄目だよ明季!やわやわは駄目だって!お前、ちょっと見ないうちに、性格悪くなっていないかっ!」
「え?昨日会ったじゃん」
「いいから、リラちゃんを!お願いっ!怪我させたくないんだよぉ!」
「リラちゃん、大きいよ?」
「大きさの問題じゃないんだよっ!」
「仕方ないなぁ、おいで?」
リラちゃんは首をふり、いやいやをする。
え?アイお姉ちゃんがいいの?
「嫌だって」
あ、なんか分かるかも。アイお姉ちゃん、不思議な魅力があるんだよねぇ。
「そそそそそそんなぁ」
リラちゃんはアイお姉ちゃんの首に手を回し、頬に熱烈なチューをする。
ぷちゅううううっ。
「!!!!!」
更に固まるアイお姉ちゃん。
うわぁ耳まで真っ赤だ。
そしてリラちゃんは、あっさりと寝てしまった。
「ど、ど、ど、どうしよう?」
困惑する、アイお姉ちゃん。
ん?ちょっと待てよ?
北のゴブリンは、皆繋がっているんだよね?
お気に入りのステータス画面で、ゴブリン念話を開いてみる。
(ほわああああっお、俺、女の子にちゅーしちゃったよ!責任取らなきゃ!)
(闘神さまに、だ、抱っこ!更にはお姉さまにも!)
(おい、まずい、俺まで眠くなってきた!)
(アイお姉さま、闘神さまより……)
(馬鹿者!この罰当たり!聞こえていたらどうするのよ!皆きらわれちゃうよ!)
……とりあえす、念話はカットした。
その時、ひょいとつかみ取ったのは、ン・キングの奥様。
「アイ、慌てなくてもいいですよ?あなたは充分、優しく子供達を扱っています。自信を持ちなさい!」
「……はい」
あ、この場合、身内に言葉より、ン・キングの奥さまの言葉が、説得力ある!
第三者の評価は大事だ。
「アイお姉ちゃん」
「な、なんだよ?」
「いじわるして、ごめんなさい。一日しか離れていないのに、凄く優しい、お姉さんに見えるよ!」
「……ありがと。ん?もともと姉だ!私は!……待て、今までは優しくなかったと?」
うふふっ、私はこのお姉ちゃんが大好きである。
「ミミお姉ちゃんは?」
「ゴブリン達と偵察に出ている、ゆっくりしていけるのか?」
「急ぐんだ、この後、王都」
「げ、勉強か?ここで暮らせよ、そうしろ」
う、少し、心が揺れたかも?
「学校、駄目だったら、ここに来る」
「よーし、躍息だからな?」
「うん」
では、ン・キング、お待たせしました。
私は抉られた大地の中央部に降りていった。
ついてきたのは、ン・キング。
「アクセス!」
ドオオオンを空気が振動する。
「今この時、ン・ドント大陸、北のゴブリン達が集う東の砦跡にて、我、明季が長距離支援型スーパーゴーレムNo.18、長さん1体と開発部長一柱を、スーパーゴーレム設置、譲渡のためこの地に招く!ジャッジメント!」
魔法陣より、巨大なスーパーゴーレムと開発部長が浮き出る。
おおおおっ!
周囲から感嘆の声が湧き上がる。
現れる、巨大兵器。
ン・キングは無言で、No.18を見つめている。
「早速ですが、契約を。時間が限られておりますので」
「開発部長、契約って難しいの?」
「簡単ですよ、ホルダー阿騎が、ドワーフの想い、汝に渡す。といい、確かに受け取った、とン・キングが言うだけです」
「……ドワーフの想い?サイザンお兄ちゃんも含まれている?」
「当然です、あの方は、常にサイザンさまとホルダー阿騎、あなた達のことを思われていました。それとメイドン……」
……そう。
ドワーフの王さま、スーパーゴーレム達、大事に使わせてもらうね。
「ドワーフの王の想い、過去から伝わる熱い想い、今に伝わったこの想い、無駄にしない、粗末にしない!ここに誓う、我らの想い」
長さんは、じっとン・キングを見ている。
「長さん、彼はドワーフのン・キング」
「ウッス」
「彼が誰か、分かる?分かるでしょう?」
「……ウッス」
「ン・キングを、この地を、皆を守ってね」
「ウッス!」
「ドワーフの想い、汝に渡す!」
バチンと霊音が響く!
「確かに受け取った!」
長さんはこうして、ン・ドント大陸、東の地の守護者になった。
「で、ン・キング、相談があるのだけれど」
「何の話だ?いい話か?悪い話か?無理な相談は無理である」
「この長さん、ン・キングが作ったことにしませんか?私のような子供が、召喚したとなると、危険視される恐れがある」
「いつかはバレる、知れ渡る、それでも隠すか?見えなくするか?」
「はい」
「分かった、ならば、そうしよう。そして我は腕を磨こう、いつかゴーレム作ってみせる」
「ありがとうございます、ン・キング」
ん?辺りに香ばしい匂いが漂い始める。
これは?
ああ、トビトカゲだ。
「ゴブ、闘神さまはこれが好物、と伝わっていますがゴブゴブ?」
はい、今は食べれますよ、美味しく頂けます。
慣れって怖い!今じゃなんともない!それどころか、あの脚、美味しそう!
お昼ご飯は、とても楽しく、ゴブリンやドワーフ達と仲良く食べた。
そして、楽しい時間は直ぐに過ぎる。
「なんだよ、もう行っちまうのかよ?まだいろよ!あと少しだけ、いいだろ?」
行きづらい。
行くの、やめるか?
いや、そうはいかない。
「アイお姉ちゃん……」
「ちぇっ、分かったよ、今度来るときは何か美味しいもの、持って来いよ?手ぶらは駄目だぜ?」
「分かった」
「躍息だからな?」
「躍息する!」
そして足早に、東の砦を後にした。
短すぎる逢瀬だった。
振り向く度に、アイお姉ちゃんは手を振ってくれた。
北のゴブリン達も、ン・キングも、奥様も、子供達も手を振ってくれた。
「南に向うぞ」
「はい、アランお兄ちゃん」
私達3人は南へと、全力で走り出した。
次回配達は 2023/02/22 朝7時頃の予定です。
サブタイトルは やっぱり行きたくない です。




