【第1話】 東から南へ
おはようございます。
朝刊です。
そして、私は獣人族の村に帰ってきた。
倒れた3人の内、私だけ帰るのは複雑な気持ちだった。
「精霊の墓に報告が終わったら、直ぐに旅立つ。まずは東、ゴブリンの砦、それから南、王都ルゥリー・トゥルゥリーを目指す」
「慌ただしいな、ラン、少しはゆっくりできないのか?」
丸太のよな腕を、ガッチリと組んでお話をする季羅お父さん。
「私の代わりにアランが走る。私も忙しいからな。東の砦、白のドーム、明季が全て壊したのだぞ、侵攻は無いと思うが、ゴーレムの設置は早い方がいい」
ボリュームのある腰に、手を当て、季羅お父さんと退治しているランお母さん。
二人とも大きいなぁ。
「東の地が安定すると、ン・ドント大陸全体が助かる。地続きは東の地だけだからな」
「ただ今戻りました、季羅お父さん」
屋根も、壁も修理してある。
懐かしい我が家。
もう、何年も前のことのようだ。
「すまぬ、政治的に明季を利用している」
わ、季羅お父さん、正直すぎる!
「それで、獣人族が収まれば、私は構いませんよ」
と、格好付けて言ってみる私。
「……そうか」
「ただし、自由に振舞います。金狼は自由の象徴ですから。これだけは譲れませんよ」
「構わぬ、自由に生きて、その生き様を獣人達に見せてくれ」
「忙しいね、明季もぐもぐ」
あ、ミンお兄ちゃん。
相変わらず食べている。
「何かあったら直ぐに呼べ、ミンお兄ちゃんは何でも修理してやるよ」
……開発部長と気が合いそう?
「うん、その時はよろしくね」
挨拶もそこそこに、私はランお母さんと季羅お父さんと一緒に精霊の墓へ向った。
そこは村外れの小さな山で、1m程の石柱が3本立っている。
明らかに人工物、不思議な光景である。
中央に黒い丸い石が埋めてあり、お墓と言うより、力の場所だ。
魔力というか、圧力というか、不思議な力が集まっている場所で、ここに長居しては、魂魄、意思にヒビが入るのでは?と思わせるくらい高圧的な場所。
ハッキリ言うと、怖い。本能的に。危険では無いのか?
「き、季羅お父さん、ここは?」
「ここは精霊の墓と言っているが、本当は力の場所だ。神聖で、長居できない場所だ」
「明季、ここでの報告で成人儀式が終わります」
「はい、ランお母さん。では、精霊よ、これにて成人の儀式を終わります。これから獣人族として、一生懸命生きていきます」
ちらっ、とランお母さんを見る。
これでいいのかしら?
「充分です、さあ、帰りましょう」
「ここは強すぎる場所だ、獣人族でも疲労を覚える」
確かに凄い場所だな。戒めの場所かな?誰が作ったのだろう?
とても古い場所だ。力の蓄積も半端じゃない。
「「「!」」」
私達3人は同時に止まった。
何かいる!?
とんでもない力の塊?
この恐怖にも似た感覚はなんだ?畏怖か?
初めて魔族に会った時より怖い?
《ここは、お父さんのお父さんがいる場所だ》
!
お父さんのお父さん?お爺ちゃんか?
《違う、祖父ではない、お父さんのお父さんだ、苦しいときは尋ねてこい、その苦しみ、半分にしてやる。忘れるなよ、秋津川亜紀》
!
誰?
あ、もういない。
「き、季羅お父さん?」
「どうした明季?今、何かいたようだが?」
私だけに話し掛けてきた?何者だろう?炎の巨人さん?
この場所は、とても大事な場所だ。忘れないようにしよう。
「明季、報告も終わったし、帰りましょう。ここはン・ドント大陸でも稀な場所、長居してはいけない場所なの」
「はい、ランお母さん!」
こうして私の成人の儀式が正式に終わった。
村に着くと……宴会の用意が?
え?お酒?飲んでいいの?いや、飲まないよ?私、忙しいのよ、早く東の砦に行かないと、満月期、終わっちゃうよ!
宴会は用意というか、始まっていた。
みんな浴びるように、お酒を飲んでいる。
誰の儀式?
主役とは?
え?獣人族、酔うの?何か特別なお酒?
話題は、私のこと。
東の砦も、白のドームも、全て瓦礫にしたと、数千の魔獣を次々に灰にしたと、さすがにそれは話の盛りすぎだろうと、私を酒の肴にして盛り上がっていた。
ゴーレムはドワーフが作った新兵器、となっていた、
あ、このお話、いいかも。
それが、どういうわけか、私に従ったらしい。
ガモサンモのこと、抜きのこと、新しい技、氷獣の毒の剣、話題は尽きないようだ。
……ようは、私、ここにいてもいなくても、問題なし。
そしてランお母さんの爆弾宣言、女性だけに婦人会なるものを発足する、と言い放つ。
一気に酔いが冷める男性獣人。
大いに盛り上がる女性陣。
そしてミンお兄ちゃんも宣言。子供会を作ると。
婦人会にヒントを得たそうだ。
狩りに、料理、裁縫、薬草の知識、遊びながら覚えていく、そんな組織を作ると宣言。
獣人の村に活気が満ち始めた。
そんな中、私も旅立ちの宣言、唯、一言、行ってきますと言う。
それだけで、獣人さん達は各自遠吠えを始めて、私達を送ってくれた。
大きくなって帰ってこい、と季羅お父さんが言った。
いつでも帰ってきなさい、とランお母さんが言った。
みんな、総出で送ってくれた。
優しい言葉に慣れない私は、戸惑うことばかりだったが、嬉しかった。
そして、3人で村を後にした。
東を目指す私とシンお姉ちゃん、それとアランお兄ちゃん。
まさに、飛ぶように走る。
全力疾走!
今は満月期、更に獣人族の力が増す時期。
ほら、東の砦跡が、もう見えてきた。
あ、ゴブリン達が、瓦礫の撤去をしている!
一日ぶりのアイお姉ちゃんだ!
あそこで、待っている!
私の脚は更にスピードを増した。
次回配達は 2023/02/21 朝7時の予定です。
サブタイトルは 東から南へ2 です、




