【第101話】 旅立ち
号外です。
諸事情により、当分の間、朝の配達のみになります。
夕刊とお茶の時間は休刊となります。
すみません。
号外は不定期ですが、出ますので、その時はお楽しみください。
「じゃ行ってくるぜ」
アイお姉ちゃんは元気に言った。
ノギお爺ちゃんの家からの、旅立ちである。
「ミミ、アイをお願いね」
ランお母さん、悲しそう。
アイお姉ちゃんの暮らしが落ち着くまで、ミミお姉ちゃんと二人暮らしである。
行き先はゴブリンの東の砦。
まだ、できていないけど。
トビトカゲ、捕まえて暮らすって言うけど、大丈夫かなぁ?
私、心配の塊だよ!
「私も、すぐ会いに行くから!」
「おう、待っているぜ明季!」
「アイ、元気でね……グスッ」
「泣くな、エノン。王都は苦手だが、遊びに行く。その時は、うまいご飯、よろしくな」
「わ、わかった。王都、案内する!」
「さーて今日から満月期だ!」
そう言ってアイお姉ちゃんは半獣人化した。
「これこれ、この感じ!」
見送りは少ない。
ランお母さん、コロ叔父さん、シンお姉ちゃん、ケインお兄ちゃん、エノン、私、ノギお爺ちゃん、アルノお婆ちゃん。
獣人にとって東の砦はそう遠い距離ではない。
でも旅立ちの見送りと距離は別だっ!
「走ろうぜミミ」
「いいね」
二人は走り出し、あっという間に地平線の点になった。
ふっ、と現れる北のゴブリン達。
その数12名。
「ゴブ、アイさま、確かにお預かり致しますゴブ」
「過保護は駄目です。ですが無視もしないで」
こんな時、何て言ったらいいのだろう?
よろしくお願い致します、だけでいいのだろうか?
「ゴブゴブ、分かっておりますゴブ、安心するゴブ」
「ゴブ闘神さまの姉君、一獣人として付合わせてもらうゴブ」
「ゴブ、では明日の召喚の儀式でゴブゴブ」
「いろいろありがとう、これからもよろしく」
「ゴブゴブ」
北のゴブリン達は、足早に東を目指す。
パチン。
ん?ゴルちゃん?
ランお母さん?
(祖霊金狼よ、どうか、どうか私がした選択が間違っていなかったと、言えるような日々を、アイとエノンにお与えください。あの時、死んだ方がよかったと言う言葉を、二人に言わせないでください)
!
《我は、我にできることをする。それだけである》
ゴルちゃん、なにができるの?
ゴルちゃん、二人を見守って!
《もう一度言う、我は、我にできることをする。それだけである》
冷たいなぁ、それでも伝説の金狼か?
我に任せろ!とか、頼もしい言葉、吐けないのか!
「ランお母さん」
「なんだ、明季?」
「祖霊であり偉大な金狼は、きっとアイお姉ちゃんやエノン、皆を守ってくれるよ!」
《!》
「そうね、そう信じよう」
よろしくね、ゴルちゃん。
お母さんの想い、裏切らないでね?
裏切ったら許さん。
ん?シルバーっち?
《ホルダー阿騎、王都でニトやリュート、かつての友が待っています。王都を目指して》
皆、王都を目指せと言う。シルバーっち、王都になにがあるの?
「明季くん、うちも行くね。うち、王都で待っているからね、必ず、必ず来てね」
私の手を握りしめるエノン。
「コロ叔父さん、エノンをよろしくね」
「ああ、だが王都まで獣人の脚では直ぐだ、いつでも会える。心配するな」
違う、距離じゃないんだよ!
「エノンは……」
私の大切な、特別な……私の中で、幸せになってもらいたいと切望する人なんだ!
「心配ならば、王都に来い。行くぞ、エノン」
「俺もだよ、コロ叔父さん」
「ああ、そうだったなケイン」
「シン姉、明季、先に行く」
「ああ、ケイン学校偵察よろしく」
「明季くん、バイバイ」
エノンは何度も振り向き、小さな手を振り続け、見えなくなっていった。
「さあ、明季、私達も村へ帰ろう」
シンお姉ちゃんが、優しく私の頭を撫でる。
「うん」
「精霊のお墓に挨拶が終わったら、まず東の砦だ。そこで躍息のゴーレムを召喚だ。その後は、私は王都を目指す。明季、心は決まったか?」
嫌な思い出しかない学校。
良い思い出なんか一握りもない。
学校なんてどこも同じだろう。
……ニトお父さん、リュートお母さん、エノン。
そして王都には彼女がいる、メイドン。
サイザンお兄ちゃんの大切なゴーレム。
いや、あれは彼女か?友達、親友か?盟友か?それは半身?
もう一度、行ってみるか、学校。
嫌な思い出よりも、皆に会いたい気持ちが上回った。
「学校、行ってみようかな……」
「!」驚くシンお姉ちゃん。
「そうですか、でも嫌になったら、いつでも帰ってきなさい」
悲しそうに言うランお母さん。
そう、アイお姉ちゃんやエノンは、嫌になっても帰れないのだ。
厳しい氷の世界、そこで生きていくのは大変だ。
「学校……挑戦してみる」
私は旅立つことにした。
次回配達は 2023/02/20 朝7時頃の予定です。
次回より三章です。
サブタイトルは 東から南へ です。




