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The Lily 前世の記憶は邪魔である  作者: MAYAKO
二章

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210/406

【第101話】 旅立ち

号外です。

諸事情により、当分の間、朝の配達のみになります。

夕刊とお茶の時間は休刊となります。

すみません。

号外は不定期ですが、出ますので、その時はお楽しみください。

「じゃ行ってくるぜ」


 アイお姉ちゃんは元気に言った。

 ノギお爺ちゃんの家からの、旅立ちである。


「ミミ、アイをお願いね」


 ランお母さん、悲しそう。

 アイお姉ちゃんの暮らしが落ち着くまで、ミミお姉ちゃんと二人暮らしである。


 行き先はゴブリンの東の砦。

 まだ、できていないけど。


 トビトカゲ、捕まえて暮らすって言うけど、大丈夫かなぁ?

 私、心配の塊だよ!


「私も、すぐ会いに行くから!」


「おう、待っているぜ明季!」


「アイ、元気でね……グスッ」


「泣くな、エノン。王都は苦手だが、遊びに行く。その時は、うまいご飯、よろしくな」


「わ、わかった。王都、案内する!」


「さーて今日から満月期だ!」


 そう言ってアイお姉ちゃんは半獣人化した。


「これこれ、この感じ!」


 見送りは少ない。

 ランお母さん、コロ叔父さん、シンお姉ちゃん、ケインお兄ちゃん、エノン、私、ノギお爺ちゃん、アルノお婆ちゃん。


 獣人にとって東の砦はそう遠い距離ではない。

 でも旅立ちの見送りと距離は別だっ!


「走ろうぜミミ」


「いいね」


 二人は走り出し、あっという間に地平線の点になった。


 ふっ、と現れる北のゴブリン達。

 その数12名。


「ゴブ、アイさま、確かにお預かり致しますゴブ」


「過保護は駄目です。ですが無視もしないで」


 こんな時、何て言ったらいいのだろう?

 よろしくお願い致します、だけでいいのだろうか?


「ゴブゴブ、分かっておりますゴブ、安心するゴブ」


「ゴブ闘神さまの姉君、一獣人として付合わせてもらうゴブ」


「ゴブ、では明日の召喚の儀式でゴブゴブ」


「いろいろありがとう、これからもよろしく」


「ゴブゴブ」


 北のゴブリン達は、足早に東を目指す。


 パチン。


 ん?ゴルちゃん?

 ランお母さん?


(祖霊金狼よ、どうか、どうか私がした選択が間違っていなかったと、言えるような日々を、アイとエノンにお与えください。あの時、死んだ方がよかったと言う言葉を、二人に言わせないでください)


 !


《我は、我にできることをする。それだけである》


 ゴルちゃん、なにができるの?

 ゴルちゃん、二人を見守って!


《もう一度言う、我は、我にできることをする。それだけである》


 冷たいなぁ、それでも伝説の金狼か?

 我に任せろ!とか、頼もしい言葉、吐けないのか!


「ランお母さん」


「なんだ、明季?」


「祖霊であり偉大な金狼は、きっとアイお姉ちゃんやエノン、皆を守ってくれるよ!」


《!》


「そうね、そう信じよう」


 よろしくね、ゴルちゃん。

 お母さんの想い、裏切らないでね?


 裏切ったら許さん。


 ん?シルバーっち?


《ホルダー阿騎、王都でニトやリュート、かつての友が待っています。王都を目指して》


 皆、王都を目指せと言う。シルバーっち、王都になにがあるの?


「明季くん、うちも行くね。うち、王都で待っているからね、必ず、必ず来てね」


 私の手を握りしめるエノン。


「コロ叔父さん、エノンをよろしくね」


「ああ、だが王都まで獣人の脚では直ぐだ、いつでも会える。心配するな」


 違う、距離じゃないんだよ!


「エノンは……」


 私の大切な、特別な……私の中で、幸せになってもらいたいと切望する人なんだ!


「心配ならば、王都に来い。行くぞ、エノン」


「俺もだよ、コロ叔父さん」


「ああ、そうだったなケイン」


「シン姉、明季、先に行く」


「ああ、ケイン学校偵察よろしく」


「明季くん、バイバイ」


 エノンは何度も振り向き、小さな手を振り続け、見えなくなっていった。


「さあ、明季、私達も村へ帰ろう」


 シンお姉ちゃんが、優しく私の頭を撫でる。


「うん」


「精霊のお墓に挨拶が終わったら、まず東の砦だ。そこで躍息のゴーレムを召喚だ。その後は、私は王都を目指す。明季、心は決まったか?」


 嫌な思い出しかない学校。


 良い思い出なんか一握りもない。

 学校なんてどこも同じだろう。


 ……ニトお父さん、リュートお母さん、エノン。


 そして王都には彼女がいる、メイドン。


 サイザンお兄ちゃんの大切なゴーレム。

 いや、あれは彼女か?友達、親友か?盟友か?それは半身?


 もう一度、行ってみるか、学校。


 嫌な思い出よりも、皆に会いたい気持ちが上回った。


「学校、行ってみようかな……」


「!」驚くシンお姉ちゃん。


「そうですか、でも嫌になったら、いつでも帰ってきなさい」


 悲しそうに言うランお母さん。


 そう、アイお姉ちゃんやエノンは、嫌になっても帰れないのだ。

 厳しい氷の世界、そこで生きていくのは大変だ。


「学校……挑戦してみる」


 私は旅立つことにした。

次回配達は 2023/02/20 朝7時頃の予定です。

次回より三章です。

サブタイトルは 東から南へ です。

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