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The Lily 前世の記憶は邪魔である  作者: MAYAKO
二章

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208/406

【第99話】 それぞれの道6

夕刊です。


「ううう、いってぇ……」


 が、アイお姉ちゃんの、その顔は満足そうに笑っている。


「次は仕留める」


「次はねーよ、ま、まさか二回も引っかかるとは、サウカお前、格闘センスないな」


「なんだと?わざと膝をついたとでも言うのか?負け惜しみを!両腕砕かれて、何を言う!」


「お前は生命属性の振動剣、いや振動手を力の限り、蹴ったんだ。知っているか?蹴るのと蹴られるの、力は同じだってよ」


「何を言う?蹴る方が強いに決まっている!」


「まあ、私もそう思うんだけどね……げほげほっ、あ、息しずれー」


 パキンと軽い音を立てるサウカの脚。

 ぶわっ、と魔力還元が始まる。


「理屈は知んねーけどさ、抜き、と振動剣を組み合わせたが?どうだ?」


 目を見開き、魔力還元していく自身の脚を見つめるサウカ。


「え?おやじっ!おやじ!おれが、俺が死んじまう!なんとか……!」


「へへ……生き残ったのは嬉しいけど……あんまり嬉しくないなぁ……」


 そう言ってアイお姉ちゃんはぱたり、と倒れた。

 サウカは魔力の粒になり、拡散していく。


「馬鹿なっ!お、俺の跡取りだぞ!名門、宗家だぞ!ヒマリ家の者だぞ、ヒマリ家の者を、よくも、よくも殺したなっ!」


 怒りに震え、ゾアントロピーを起すカナヤ。


 ノギお爺ちゃんが戦斧を握り締める。


「お前のその判断が!息子を殺したのだ!なぜ気づかぬ!この愚か者!」


 倒れたアイお姉ちゃんに襲いかかるカナヤ。

 家来衆は3人だけ動いた。


 他は動かない。宗家を捨てたようだ。


 ミミお姉ちゃんが一人を吹飛ばす。正拳突き、一撃。

 ケインお兄ちゃんがもう一人を吹飛ばす、掌底打ちだ。


 私とレイランお姉ちゃんは周囲を警戒している。

 絶対、あいつ側にいる。この現場を見ているはずだ。


 カナヤより先にアイお姉ちゃんを狙ったヤツがいた。しかし、ノギお爺ちゃんの戦斧が振り下ろされると、氷獣の剣、諸とも分断される。


 残ったカナヤは、ランお母さんの手刀で斬られる。


「愚かな、ガモサンモの部下は剣の達人級が多かった。私達が死を覚悟するほど強かった。お前の得手は拳であろう?なぜ剣に頼った?」


「……確実にお前達を消すためだ……なぜ、季羅を選んだ?」


「卑怯は嫌いでね、素直が好みだ」


 魔力が集まる!?


 ランお母さんの足下に集まる、火と水の結晶魔法!

 これを書き換える!新月期だし、魔力は充分ある!


 どうだ?


 じゅっ。


 やったね!


「明季何の音だ?」


「ダークエルフが近くにいる!」


 火と水のバランス崩せばこんなもんだ!そう簡単に、水蒸気爆発魔法は使わせないから!

つぎは誰を狙う?


 後ろ手に朱槍を握り締める。


 ゴブリンの、技をコピーする能力を使って、何回も脳内再生した。

 魔力感知せずに、何故消える?現れる?

 何度も何度も検証した。


 魔力は使っている、多分。


 それも外側にではなく、内側に使っている。と思う。


 とても危険な使い方だ、寿命を縮めるような。

 全部、憶測だけど、正解に近いような気がする。


 そして、魔力は意思で使う。方向性がある。


 武術で先々の先、という技があるそうだ。


 田崎さんの得意とする行動?らしいが、これが高度すぎて理解出来なかった。

 対峙した相手の行動を、先に先する?

 道場で技を教わっているとき、私が動こうとすると、すべて止められた。


 なぜ行動が分かる?


 相手の動きで、これからの動きが分かる、とは言っていたけど。

 これを、応用する。

 必ず動きがある。

 今は新月期、ダークエルフの動きに反応できるはずだ。


 今の私ならば……そうでしょう?ローローとネーネー?


 一瞬、呼吸音が聞こえたような気がした。


 躊躇いなく、振り向きざまに朱槍を薙ぐ。


 サクッ、と手応えがあった。


 浅い、か!?


「ぐっ」


 腹部を押さえて蹲るダークエルフ。


「術を使わずに!?」


 ふんっ!


 2撃目は躱された。

 しまった!ここで重速術を使うべきだった!


 ダークエルフは、カナヤの横に現れると、カナヤを摑み、私を睨んだ。


「ン・ドント大陸に禍あれ」


 そう言い残し、消えた。

 ノギお爺ちゃんと目が合う。


「敵ながら、引き際は見事だな」


「明季、もう何も感じないわ。遠くへ行ったみたい」


 レイランお姉ちゃんの言葉に、私は緊張を解いた。


 それと同時に、パタリ、と倒れた。


 ああ、いつものヤツだ。無理しすぎた。


 疲労が蓄積していたかな?


 それとも今のダークエルフとの一戦、かなり力を使った?


 あ、意識が遠くなる……ランお母さん、みんな、後はよろしく。


 私は倒れた。


 でも夢は見ない。


 なかなか邂逅夢の世界へはいけないなぁ。


「おい、明季、起きているか?」


 ん?

 アイお姉ちゃんの声?


 目が覚めると、木造の天井、知らない天井だ。

 どうやら、私は発熱しているみたいだ。身体がだるくて動かない。


 意識がボンヤリとして集中できない。


「アイ、明季くん、辛そう、起したら駄目だよ」


 こつこつ足音が近づく。

 ドアを開ける音。


 この足音は、シンお姉ちゃんだ。


「3人とも起きているか?」


「うちは起きている」


「私も」


「……」


「明季は返事もできないほど、弱っている、と」


「シン姉、ここは?」


「ここはアルノお婆ちゃんの家だ。ここで、次の満月までお世話になることになった」


「敵は?アルノお婆ちゃん巻き込むの、うち嫌だよ?」


「獣人族は一応収まった。この小屋の周りは玄関にノギお爺ちゃん、庭にはケイン、更に森の中には、北のゴブリン達が見張りに立っている。安心していいと思う」


 そうか、反乱?は収まったのか。


「ランお母さんは?」


「ヒューとミューを連れて、ひとまず村へ帰った。どうしたエノン?」


「手当が、包帯が綺麗に巻いてある。薬師?」


「さすがだな、東の砦へ向う騎士団が寄ってね、随行しているそこの薬師見習いがお前達を看てくれたのだ」


「おいおい、シン姉、今度は本物だろうな?」


 え?今度こそ本物でしょうね?

 騎士団随行なら大丈夫、かな?


「ああ、本物だ。騎士団も、薬師見習いの学生も。コロ叔父さんに確認を取った。赤髪で身長はコロ叔父さんくらい、短剣の使い手、間違いなし。安心したか?確かエノンは知り合いだろう?」


「うん、うち知っているよ!とっても優しい人族でね、何度も助けてもらっているの!」


「無理はするな、と言っていたぜ」


「わかった、今度会ったら、お礼を言う!」


 エノンの知り合いか、なら安心か。


「そこで、そいつの見立てだが、明季、お前は子供の粒、未魔細胞が壊れて、次の満月までは安静にしろ、と。アイは両腕骨折プラス、末梢神経損傷、肋骨も骨折し、内臓も痛めている、お前も安静一番、エノンは、擦り傷と思っていたけど、相手は新月期の獣人だ、学生さんの見立ては内出血と、剥離骨折、各靭帯損傷だと。お前も満月まで安静にな、分かったか?」


「……わかった、うち、おとなしくしている」


「いい子だエノン、そこで一言、言っておく」


「「「?」」」


「お前ら、トイレは遠慮無く言えよ?」


「「「!」」」


 シンお姉ちゃんはニッコリと笑った。


 ああ、生まれ変わっても、私はシンお姉ちゃんの(エルフさんの)お世話になるのね。


諸事情により、朝のみの投稿になりました。

楽しみにされている読者の皆様、迷惑をおかけします。

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