【第98話】 それぞれの道5
朝刊です。
響めく獣人達。
苦々しい顔でカナヤが言い放つ。
「足をわざと崩すとは、卑怯な勝ち方だな?おいエノン?」
おいおい、卑怯とは?
お前らのことではないのかい?
「エノンを卑怯と言うなら、鏡を見るんだな、きっとそこには、醜い顔が映っているだろうよ」
「言うじゃねえか、ケイン、いつからそんなに偉くなった?」
「偉くなくても、もの申す。空のケインは自由のケインだ。知らないのか?おい、お前ら、そんなヒマリ家なんかさっさと抜けて、シュート家に来いや、賑やかで毎日、おもしれーぞ?お茶目な金狼もいるしな」
「そいつはまだ儀式の途中だ、故郷に帰って精霊の墓に報告していない。金狼は名乗れん」
「だから今日襲撃に来たんだろ?皆殺しにして、一族の長の座をもらう。まずは金狼がじゃまだからなぁ。金狼が認められたら、お前らのプライド、ボロボロになるしな、お家断絶ってか?」
「……」
「どうした?図星か?エノン見てわかったろ?力の大半を無くしても、お前らとは対等以上だ。キング・オーの戦斧を持つオークのノギ(元)大将軍、獣人族最強の戦士ラン、その後継者ミミ、そして敵味方問わず白のドームも東の砦も瓦礫にした怒りの金狼明季、お前達、勝ち目ないぞ?」
「我々には代々の技がある!」
「その剣、ダークエルフに貰ったか?歌姫の子孫を名乗るお前達が、ダークエルフに屈するか?歌姫が泣くぞ、馬鹿者ども!そんな剣に頼るから、勝てないんだよ!何が代々の技だ?家臣共!お前らヒマリ家の奴隷か?自分の進む道、自分で選べ!」
スラリ、と半数が剣を抜いた。
半数は抜かなかった。
それどころか、剣を手放したのだ。
「お前ら、裏切るのか?抜け!家族、殺すぞ!」
「金狼に剣は向けられん、それに話が違うぞ宗家!」
「OVERKILLなら気にするな!あれは膨大な魔力を使うと聞く、あのじじいはもう使えないはず」
「あら、私は使えるわよ?何回でも」
子供の細胞は無理をするかも知れないけど、新月、満月期だったら何度でも使える。
この技は獣人族と相性がいいのだ。
「な、なんだと!?でまかせだ!」
「獣人はその回復力と、月の魔力でカバーできるのよねぇ魔力不足」
「ワシはこれで補っておる」
巨大な魔石を見せるノギお爺ちゃん。
ふっ、とサウカとその横の二人が消える。
抜刀し、アイお姉ちゃんに襲いかかる。
「手を出すな!」
叫ぶアイお姉ちゃん。
(この3人、倒してみせる!私だって獣人!)
ぽっと両手が光る。
(筋肉女って悪口言われていた私だ!ならば魄属性の魔法は相性がいいはず!両腕に意思を加える!)
振動が始まり、生命属性の腕!拳の出来上がり!
後はその痛さに耐えて!
「3対1だ、手、出すぞ」
ケインお兄ちゃんが指弾を使い、襲いかかる3人に、次々にヒットさせる。
手の甲、手首、指、こめかみ、突然の痛みに剣を落とす3人。
そこへ、両腕を剣のように使い、一人、二人、と切り伏せるアイお姉ちゃん。
(斬れたぞ!)
が、三人目のサウカには届かない。
さすがに新月期の獣人は強い。
エノンが勝てたのは、おそらく傭兵団の経験があったからであろう。常に戦いの場に身を置いて、全力で相手と戦う、修羅の世界。
アイお姉ちゃんや私達が知らない世界だ。
サウカのバックハンドブローがアイお姉ちゃんを捉える。
バランスを崩し、ガクッと膝をつく。
そこへ鉈のような重く鋭い蹴りが襲いかかる。
腕をクロスさせガードするが、軽く吹飛ばされてしまう。
後方の大木にぶつかり、倒れてしまう。
「ぎゃう」
両腕は砕けていた。
それでも、よろよろと立ち上がったアイお姉ちゃん。
その目はまだ死んでいない。
次回配達は 2023/02/18 17時の予定です。
サブタイトルは それぞれの道6 です。




