【第97話】 それぞれの道4
号外です。
不躾だな。
若い、精悍な顔付きの獣人。
髪は茶色で短く、切れ長の目、耳にはピアスてんこ盛り、身長は190㎝?
イケメンさんだけど……血の臭いがする。
「サニワは満月だ、帰れ」
ケインお兄ちゃん、格好いい!?
「サウカ、まずは当主である俺の口上からだ、控えろ」
「あ、わりい、オヤジ」
「我はヒマリ家当主カナヤ、古の掟によりサニワを行う。シュート家のアイ、サウカと戦い武を示せ。一撃、入れることができたら獣人と認める」
アイお姉ちゃんが前に出ようとすると、ランお母さんより先にノギお爺ちゃんが止めた。
「最近の獣人は耳が悪いのか?審神者は満月と決まっておる。忘れたか?帰れ」
うわ、オークのノギお爺ちゃん、獣人相手に大丈夫?
!
その手にはいつの間にか巨大な戦斧が握られていた。
どこから出したの?
ん?あの戦斧、見たことある!?どこで見た!?
え?おかしくない?そもそもこの時代でオークに会ったのは、初めてのはず?
でも、わたしはこの戦斧、何処かで見ている!
「あ、キング・オー?」
「ほう!キング・オーの戦斧をご存じか?さすが闘神さま、あなたはどうやら本物らしい」
サウカの取り巻きだろうか、髪を金髪に染めた?獣人が一人進み出て、ノギお爺ちゃんに唾を吐いた。
「ぺっ、どけじじい、獣人さまの問題なんだよ、臭いオークは黙っていろ!殺すぞ?」
「やれやれ、ヒマリ家の家臣は礼儀を知らぬのう。シュート家の者達を見習うといい」
「シュートぉ?有象無象のクズ獣人、その他大勢の一族だぞ?俺達は代々戦闘家系の名門だ!こんな奴等と一緒にするなよクソジジイ!」
ノギお爺ちゃんに対する暴言を聞いて、思わず口が切れた。
「氷獣にビビって、討伐にも参加しない腰抜けが何を言う?腹痛でも起したか?」
一瞬、ポカン、とする金髪。
「明季ぃきさまぁ、我らを侮辱するかぁ?」
そう言って剣に手を掛けた。
へー私の名前、知っているんだ。で、こいつ誰?
「抜くなよ、若造」
金髪の獣人はスラリと液体の付いた剣を抜いた。
「抜いたがどうした?今は新月、俺様不死だぜ?老いぼれジジイ!」
ブワッと魔力還元する金髪。
え?一瞬?
氷獣の剣は意味を成さなかった。
こ、このお爺ちゃん、使い手だとは思ったけど、まさかOVERKILLの使い手!?
私より速い?
「あと、19」
うわぁ物騒だなぁお爺ちゃん。でも凄く頼もしいかも。
ごしごし。
ん?エノン?
「ノギお爺ちゃん、綺麗になったよ。ごめんなさい、ヒマリ家って常識が無いの」
「聞き捨てならんなぁエノン、いや人族に弄ばれた汚れ者、お前は獣人でさえないんだ、消えな」
こいつ、エノンを!戦い回避はうれしいが、獣人として認めないのは腹が立つ!
「一撃入れたら、獣人として認められるんだよね?」
「エノンやめておけ」
「いやよ、ノギお爺ちゃん。ノギお爺ちゃんを侮辱したこいつら、うち許せないんだ」
ちょっと待った!エノン!人族よりは強いかもしれないけど、相手は新月時に最大の力になる獣人だよ?意識してそいつらを集めて来たんだよ?
私が動こうとすると、エノンは軽く止めた。
「うちを信じるんだったら、止めないで、お願い」
そう言われると、動けないではないか!
チラリとノギお爺ちゃんを見る。
あ、OVERKILLスタンバイしている。
エノンが危ないと思ったら、このお爺ちゃん、躊躇いなくOVERKILLだろうな。
「お前に、一撃の権利はない、申し出は通らんよ。残念だったな、はははははっ」
「人族であれ、何者であれ、一撃入れた者は獣人を名乗ることを許す、と語り部に伝わりますが?まさかお忘れですか?」
え?そうなのレイランお姉ちゃん?
「ちっ、レイランか、見習い語り部、お前の聞き違いでは無いのか?」
「獣人族、全ての語り部を呼びましょうか?」
「くそっ、誰か相手をしてやれ!挑む者は殺しても構わぬともある、いいな、レイラン」
「どうぞ」
「ラン、ごめんね始めちゃって。うち、どうしてもこいつら許せないし、獣人として一度でもいいから、認められたいんよ」
「こいつらに認められても意味無いよ?エノン、エノンは獣人だよ?拘るなよ!」
「俺が相手になろう」
「サウカ、あなたはランの相手では?」
「エノン、お前、目障りなんだよ、汚れた者め、ここで死ね」
サウカは瞬時に間合いを詰め、鞭のようなハイキックをエノンの頭部に叩き込む。
が、あれ?当たらない?ヒットしない!?
新月期の獣人族の速さで当たらない?ハイキックも回し蹴りも、アッパーカットも、バックハンドブローも、擦りはするが、ヒットしない!
連撃を全てかわしたが、エノンの左足がガクッと崩れる。
「死に晒せ!ゴミが!」
サウカの拳が振り下ろされる。
お互い視線を交す二人。
歪んだ歓喜に満ちたサウカの顔、エノンの死を確信した顔だ。
エノンは相手から目を離さない。そして思いっきりサウカの軸足、左足の甲を踏み抜いた。
「うぎゃああっ」
500kgの雪鹿を持ち上げ、それに耐える脚力、その足が全力で踏んだのだ。
お辞儀をしたサウカの顎の先端を横殴りに殴るエノン。
「二撃いれたぞ、これでうちの勝ち!うちも獣人!」
ドサリ、と倒れるサウカ。
サウカは倒れたまま立てない。脳が揺れているのだ。
エノン、その技!いつの間にっ!
次回配達は 2023/02/18 朝7時の予定です。
サブタイトルは それぞれの道5 です。




