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The Lily 前世の記憶は邪魔である  作者: MAYAKO
二章

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205/406

【第96話】 それぞれの道3

夕刊です。

 アイお姉ちゃんとエノンは、食欲が大幅に減退した。


 朝から、あんなに好きだった雪鹿の焼肉、少し食べると、もうお腹一杯、と言って食べなくなった。

 人族に近いからだろうか?


 うう、何を見ても腹立たしいっ!


 エノンは普通に歩いていたが、アイお姉ちゃんは、さみーさみーと言いながら歩いている。


 これも腹立たしい!


 この怒りと悔しさ、どこにぶつけたらいい!


 遠方に見えていた森は、ぐんぐん近づき、その森の中に大きな家が見えてきた。

 あれが、オークの家かしら?


 老夫婦のオークは、アイお姉ちゃんやエノンを優しく迎えてくれた。


 が、言うことはかなり物騒だった。


「ケインとミミが来るなら問題ないか、わしら二人じゃ守りきれん」


「おや、お爺さん、ご謙遜。腕が鳴るとか言っていませんでしたか?」


 話が見えん!


 しかし悪い予感は的中しそうだ。


 私は、どうにか人バージョンにはなったが、やっぱり右目は見えないままだ。

 死角が大きい、距離感が掴めない時がある。

 バトル中、ミスしないようにしなければ。


 うう、これも腹立たしい。


「おお、こちらが噂の金狼さんか?」


「北のゴブリン達は、闘神さまとか言っておったが?」


「おはようございます!シュート家の明季です」


 おはようの息が白い。


 ここは森の中の一軒家。

 住人がオークだけあって、一軒家だが、五軒くらいの大きさだ。

 地下もあるみたいだけど、これ、お掃除が大変では?

 まあ、外から見た感想だけど。


「私はこの森で樵をしている、ノギ、妻は……」


「アルノよ、アルちゃんと呼んでくれると嬉しいわ」


 私以外は顔見知りみたいだな?


 ヒューお兄ちゃんとミューお姉ちゃんは、何やらノギおじいちゃんとお話を始めた。

 しかし、守るとか、腕が鳴るとか?どういうことだ?

 ご高齢のようだが、この二人、かなりの使い手と見た。


「みせしめ、復讐、仕返し、季羅お父さんの身代わり。汚い感情さ」


「アイお姉ちゃん?」


 何のことだ?


「ここでお別れだ、満月まではここにいる、何時でも来いよ」

「じゃぁね明季くん。必ず来てね」


「ここでなにがある?」


「明季」


「ランお母さん、私、納得するまで動かない」


 誰か来た。


 ケインお兄ちゃんとミミお姉ちゃんだ。


「ランお母さん、話していないのか?」


 何のお話?ケインお兄ちゃん。是非聞きたいわ。


「ヒュー、ミュー、こっちおいで、私とアルちゃんと、皆で遊ぼう」


 シンお姉ちゃんが、この場から、ちびちゃん二人を引き離す。


 ランお母さんが重い口を開く。


「みせしめだ、獣人族と名乗れるかどうか、第三者が決める。身内では決められないのだ」


 なるほど、それは分かる。身内の甘い判定なら意味が無い、か?獣人族に相応しくない者も、認めるかも知れないと。


 それで、どうやって決めるの?方法が知りたい。


「見極めるのが、季羅のライバルの息子だ」


「なんのライバルなの?」


「全てにおいてだ。身体能力、力、技、生まれてから今まで、全てカナヤが勝っていた。季羅は二度しかカナヤに勝利したことが無い」


 それはライバルと言えるのか?


「ヒマリ家のカヤナ、獣人族の名門。多くの英雄を輩出し、獣人族を導いてきた存在。歌姫の子孫とも言われている」


 さすが語り部候補、レイランお姉ちゃん。色々知っているなぁ。


 でもねぇ。


「過去でしょう?過去の栄光、意味無いわ。今が知りたい。氷獣討伐の時、そいつら拒否した連中ね?」


「そうだ」


 ランお母さんの苦々しいお顔。


 じっ、とランお母さんを見る。


「なに?明季?」


「その獣人、ランお母さんを巡って対立した?」


「なっ!何故それを知っている!誰が話したの!」


「一度目の勝利は、ランお母さんを妻に、それで、二度目は長の座ね?違うかしら?」


「……そうだ」


「そこで、力を無くしたと聞いて、アイお姉ちゃんやエノンを腹いせに?」


「見極めと言って……殺害するかもしれん」


「!」


 え?見極めどころか、最早、殺すことが目的なの!?

 今のアイお姉ちゃんやエノンが、まともに獣人と戦えるわけ、ないでしょう!?


「ようは戦って、その獣人族としての武を示せと?」


「そうだ」


「最初から、殺害目的で戦うかも知れないと?」


「そうだ」


 そう思わせる根拠が、他にも色々あるのね。


「誰が決めたの?相手のヒマリ家」


 わざわざ、そんな問題ありの相手を、選ばなくてもいいのに。


「昔からの決まりだ。ヒマリ家は獣人族の判定を司る一族だ」


「昔からの?曖昧ね」


「金狼が決めたと、各地の獣人族の語り部が、語っている」


 ゴルちゃん!?何しているの金狼!腐敗してるじゃん!ちゃんと責任持ってよ!


「正しい判定、下せるの?今までのお話聞いていると、無理みたいなんだけど?氷獣討伐にも参加しない、お陰でゴブリン達が大勢死んだわ。獣人族の誇りとは?」


 そう言って私はゆっくりと後ろを振り向く。


「判定は満月よね?」


 20名程の武装した獣人族が、ニヤけながらこちらに歩いてくる。


 え!?この臭いは!?

 この臭い!こいつら、氷獣の剣を持っている!?


「サニワに来た。用意しな」


 先頭に立つ若い獣人は、ニヤつきながらそう言って、咆えた。


 遠吠えは森に響き渡る。

次回配達は 2023/02/18 朝7時の予定です。

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