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The Lily 前世の記憶は邪魔である  作者: MAYAKO
二章

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204/406

【第95話】 それぞれの道2

おはようございます。

朝刊です。

 孤独や不安は、どうしたら取り除けるのだろう?

 愛情か?優しさか?思いやりか?


 みんな、みんな私が過去欲しかったもの、他者に示しても、帰ってこなかったもの。

 清掃員さんに出会ってから、少しずつ世界が変り始めた。


 まどか、私に何ができると思う?


 膝の上からアイお姉ちゃんを見上げる。

 思いやりの一粒、届くかな?


「ぺろっ」


「ひっ!こら!明季!」


「ぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろっ」


「ひ~っ!やめろって!どこ舐めているんだよっ!なんだよ!急に!」


 ほっぺた、塩辛い。


 さては、泣いていたなっ!

 おでこ、眉、目に耳、鼻の頭、唇に犬歯、ぺろぺろ舐めた。

 特に頬は、涎でベロベロになるまで舐めた。


「うわ!こら!明季ぃ!べたべたじゃねーかよ!やめろって!」


「フンッ」


 でも、涙の後は消えたよ?怒るかな?アイお姉ちゃん?


「……ありがとな、明季、おまえいいヤツだな」


 無意識に尻尾が揺れる。


 そして振り向く。

 エノンと目が合う。


「え!?う、うち?うちはいいよ!」


 ぴょんと飛んで、エノンにしがみつく。


「きゃっ!」


 思わず両手で、私を受け止めるエノン。


「ぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろっ」


「ひいいぃ!やめてえぇえっ明季くん!」


 やめません。


 おでこ、眉、目に耳、鼻の頭、唇に犬歯、ぺろぺろ舐めた。

 特に唇は、涎でベロベロになるまで舐めた。


 私は知っている。


 エノンは人知れず、唇を擦って泣いていた。

 何度も何度も、擦って泣いたいたのだ。

 あのダークエルフ、長さんの砲撃で死んだかな?いや、おそらく生きているだろう。


 許さん。


 技を、自身を磨き抜いて、対峙する。次は手首では済まさない。


 がしっ、と誰かに摑まれる私。


 あっさりと引き離され、ぶら下がり状態になる。


 え?誰?気配無し!?

 匂いも、フェロモンも感じなかった!


「クゥーン」


 あれ?私、怯えた声が出た!

 本能だ!本能的に逆らうな、と肉体が私に教えている!


「明季!エノンに何てことしているのですっ!」


 あ、ランお母さん。

 あ、今、匂いがしてきた!一体どんな技使っているのだろう!?


「ウわがきした」


「上書き?」


 唇の上書き。嫌われたかな?

 ペロペロは私の独善、我儘かも知れないけど、ほっとけなかったんだ。


 ちらり、と上目遣いにエノンを見る。


 エノンと目が合う。

 あ、横向いた。

 横を向いたエノンは、小さな声で、何か呟いた。


 私の耳には、ありがとう、と聞こえた。


 ……ごめん、まどか、私はエノンをほっとけない!

 アイお姉ちゃんを、見捨てることができない。


 嫌な予感しかしないんだ、まどか。とても悪い予感だ。

 一体、どうやって人族か、獣人族か見極めるのだ?

 

 遙か遠い記憶に、私は思いを馳せた。


次回配達は 2023/02/17 17時の予定です。

サブタイトルは それぞれの道3 です。

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