【第95話】 それぞれの道2
おはようございます。
朝刊です。
孤独や不安は、どうしたら取り除けるのだろう?
愛情か?優しさか?思いやりか?
みんな、みんな私が過去欲しかったもの、他者に示しても、帰ってこなかったもの。
清掃員さんに出会ってから、少しずつ世界が変り始めた。
まどか、私に何ができると思う?
膝の上からアイお姉ちゃんを見上げる。
思いやりの一粒、届くかな?
「ぺろっ」
「ひっ!こら!明季!」
「ぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろっ」
「ひ~っ!やめろって!どこ舐めているんだよっ!なんだよ!急に!」
ほっぺた、塩辛い。
さては、泣いていたなっ!
おでこ、眉、目に耳、鼻の頭、唇に犬歯、ぺろぺろ舐めた。
特に頬は、涎でベロベロになるまで舐めた。
「うわ!こら!明季ぃ!べたべたじゃねーかよ!やめろって!」
「フンッ」
でも、涙の後は消えたよ?怒るかな?アイお姉ちゃん?
「……ありがとな、明季、おまえいいヤツだな」
無意識に尻尾が揺れる。
そして振り向く。
エノンと目が合う。
「え!?う、うち?うちはいいよ!」
ぴょんと飛んで、エノンにしがみつく。
「きゃっ!」
思わず両手で、私を受け止めるエノン。
「ぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろっ」
「ひいいぃ!やめてえぇえっ明季くん!」
やめません。
おでこ、眉、目に耳、鼻の頭、唇に犬歯、ぺろぺろ舐めた。
特に唇は、涎でベロベロになるまで舐めた。
私は知っている。
エノンは人知れず、唇を擦って泣いていた。
何度も何度も、擦って泣いたいたのだ。
あのダークエルフ、長さんの砲撃で死んだかな?いや、おそらく生きているだろう。
許さん。
技を、自身を磨き抜いて、対峙する。次は手首では済まさない。
がしっ、と誰かに摑まれる私。
あっさりと引き離され、ぶら下がり状態になる。
え?誰?気配無し!?
匂いも、フェロモンも感じなかった!
「クゥーン」
あれ?私、怯えた声が出た!
本能だ!本能的に逆らうな、と肉体が私に教えている!
「明季!エノンに何てことしているのですっ!」
あ、ランお母さん。
あ、今、匂いがしてきた!一体どんな技使っているのだろう!?
「ウわがきした」
「上書き?」
唇の上書き。嫌われたかな?
ペロペロは私の独善、我儘かも知れないけど、ほっとけなかったんだ。
ちらり、と上目遣いにエノンを見る。
エノンと目が合う。
あ、横向いた。
横を向いたエノンは、小さな声で、何か呟いた。
私の耳には、ありがとう、と聞こえた。
……ごめん、まどか、私はエノンをほっとけない!
アイお姉ちゃんを、見捨てることができない。
嫌な予感しかしないんだ、まどか。とても悪い予感だ。
一体、どうやって人族か、獣人族か見極めるのだ?
遙か遠い記憶に、私は思いを馳せた。
次回配達は 2023/02/17 17時の予定です。
サブタイトルは それぞれの道3 です。




