【第93話】 帰路
おはようございます。
朝刊です。
帰路、メンバーが変った。
季羅お父さんとコロ叔父さん達は先に帰り、私達旅のメンバーにケインお兄ちゃんが入った。
私は召喚で疲れたのか、ポメ・バージョンになっていた。
なんと、ポメラニアンになると、右目が再生した。
試しに、どうにか、人バージョンに戻ってみると、残念ながら右目は失明状態に戻った。
なんで?
次の満月期に衛生兵さんを召喚して、一度看てもらうか?
長さんが常駐できるのはよかったな、東の地方は安定するのではないか?
長さんに挑む者、出てくるだろうか?
北のゴブリン達も強いし、土地も魔族チクリの祝福で潤っている。
問題があるとすれば、長さんの設定だろうな。
ドワーフの王さまと、サイザンお兄ちゃんは、あの設定で大喜びするかもしてないが、私は戸惑うばかりだ。
色々と考えているうちに、疲れている私は荷台に乗り込み、眠ってしまった。
夢は見ない。
私は心配事が多くある。
アイお姉ちゃんとエノン、彼女達とはもう一緒に暮らせない。
越冬できないのだ。
これからどうするのだろう?
メイドン、会いたいなぁ。
王都の学校、どうしよう……。
誰かが抱っこして運んでいる。誰だろう?暖かいなぁ。
ふと目が覚めると夜だった。
パチッと焚き火が爆ぜる。
ランお母さんと目が合う。
「よく寝ていましたね、少しは疲れ、取れましたか?」
「アンアン」
あ、ポメ・バージョンだ。
どうやら私は、ランお母さんのお膝の上らしい。
いつも独占しているヒューお兄ちゃんとミューお姉ちゃんは?
あ、シンお姉ちゃんと一緒に眠っている。
何かが香る。
うわぁランお母さん、凄い、いい匂い!何の匂いだろう?
私が鼻を鳴らしてフンフン言うと、ランお母さんは優しく私の頭を撫で始めた。
「あなたは本来なら、まだ乳を吸っている赤子です。東の砦では頑張りましたが、母としては嬉しくも思い、心配でもあります」
「アンアン!」
「右目は見えていますか?我が愛し子の右目を奪うとは、許せませんね」
バキ、バキッ!
何?筋肉の軋む音?関節音?
あ、ゾアントロピーだ。
おおおお、おかさん!?
お顔が怖いです!
ここで怒るの、やめてくださいっ!
「クーン、キューン」
「あら、ごめんなさい、怖かったかしら?」
「フンフンフンフン」
あ、怒った匂いが消えた。
そしてまた、不思議ないい匂いが漂い始める。
どこからだろう?
あ、おっぱいだ。
「フンフン」
匂いの元はここだ!
ランお母さんは胸元に手を差し入れ、そのスイカみたいな乳房を露わにした。
「ほしいのか?」
乳首からは、母乳が滴っていた。
ぱくっ。
本能である。
「やっと吸えたな、私の乳房を。成人にはまだほど遠いのに……それなのに無理をさせる。金狼の宿命か……」
私は愛情を飲みながら、愛情に包まれ、いつしかまた眠ってしまった。
……私の中の壊れていた何かが、少し、癒やされたような気がした。
次回配達は 2023/02/16 17時の予定です。
サブタイトルは それぞれの道 です。




