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The Lily 前世の記憶は邪魔である  作者: MAYAKO
二章

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201/406

【第92話】 そして成人の儀式が終わる

夕刊です。

 ダークエルフの目的が復讐なのか、領土の拡大、経済的理由なのかは分からなかったが、凄い損失であろう。

 だいたい、領土、と言っても、ン・ドント大陸の妖精達は王都を守る意識はあるが、領土意識はほとんどない。基本、こちらから攻めることは、まずないのだ。

 これだけの大敗、ダークエルフがどのような国か組織か知らないが、タダではすまないだろうな。


 私の成人の儀式は、ここで終りになった。


 各村の訪問は無し、遺品は東の砦で全て、渡すことができたからだ。

 北のゴブリン達に感謝を述べると、それ以上に感謝された。


「朱槍です、どうぞ」


 私が、北のゴブリン長に渡そうとすると、断られた。


「ゴブ、それは闘神さま、あなたの持ち物ゴブ」


「私はあなた方、北のゴブリンが思うような人物、闘神ではありませんよ」


「いや、私達が伝えてきた闘神、そのままゴブ」


 獣人族と、北のゴブリンはお互いを助け合う躍息(造語です)をした。

 妖精達の躍息は約束と違って、とても珍しく、めったにしないそうだ。

 それは魂の結びつきと言われ、『契約』より上位らしい。


 壊れた砦を見ていると、気にするな、とゴブリンの長に言われた。

 東の砦は無くなったが、これより更に東に、新しい砦を建設する、らしい。

 この地の緑は増え続け、更に豊穣な大地へと変っていく。

 その後、ここに大きな街ができるのだが、それはまた別のお話だ。


 出発前、荷造りしていると(お土産のトビトカゲ)ドワーフが数十人、歩み寄って来た。


「?」


「それで?あの紋はなんだ?知っているのか?本物なのか?なぜ、あの紋が使われている?」


「えーと?」


「俺はドワーフ、鍛冶屋のドワーフ、東の砦の鍛冶担当」


 その若いドワーフは、歌うように話し掛けてきた。


「直ぐに教えろ!早く教えろ!訳を教えろ!」


 凄腕のドワーフがいると聞いたが、たぶんこのドワーフだ。


「もう一度会いたい、直ぐに会いたい、どうしても会いたい、ゴーレム会いたい」


 東の砦に20人ほどいる、ドワーフ鍛冶屋の長。

 ン・ドント大陸全体でも有名らしく、ン・キング、と呼ばれている。

 普段は王都を中心に活躍していると、コロ叔父さんに聞いたけど?


 ……さてこのドワーフ、誰かに似ているなぁ。


「コロは友達、俺と友達、お前も友達、ゴーレム見せろ」


 いつに間にか、友達にされてしまった。


「ン・キング、相変わらず、せっかちだな?」


 コロ叔父さんは苦笑いである。


「右腕どうした?俺に任せろ、直ぐに任せろ、計らせろ、作ってやるぜ、MAX義手」


「明季、ゴーレム呼べるか?ダチがご執心でね」


「無理かも」


 そう、何故か負担になるのだ。


 召喚は魔力1、で、できるのに身体への負担が大きい。

 召喚に必要なのは魔力だけではない?新しい問題である。


「そうなのか?いつなら会える?どこで会える?俺は会うまで待ち続ける」


「開発者なら呼べるかも」


「!」


「スケルトンだから驚くかな?でも私の大事な仲間、変な目で見ないなら喚ぶよ?」


「変な目で見ない!そんなことしない!お前のダチは俺のダチ!直ぐに喚んで!話がしたい!」


 ちらり、とランお母さんを見る。

 ワクワクしたお顔だ。では喚んでみるか。


 その時、バコンと何かを叩く音がした。


「え?」


 ン・キングの後ろに、長身の女性ドワーフが立っていた。


「ン・キング!また無理難題を突きつけているのでは!?コロ団長!断っても構いませんよ!?」


 右手にハンマー、左手には、ちっちゃな赤ちゃん、足下には……1.2.3.……7人の子供達!?


「ハンマー強い!嫁、力強い!我、立場弱い!どうにかしてくれこの世界」


「かあちゃん、ハンマーは駄目だよ!とーちゃん壊れちゃうよ!」


「大丈夫、多少ぶっ叩いても、ドワーフには効きませんよ」


 ……ホントかしら?


「ん?」


 気がつくと、3人ほど、私の足にちびちゃんが、しがみついていた。

 ニコニコ笑って、私を見上げている。

 ……最近、妙に子供に好かれる。


 何か、変なフェロモンが出ているのだろうか?


 ちびちゃん達は、さっとシンお姉ちゃんとエノンに回収され、二人と遊びだした。

 この二人、子供と遊ぶのが、とてもうまく、見ていて飽きない。ほんと、楽しそうに遊ぶのだ。


「じゃ、喚ぶね。アクセス!」


「!」


「今この時、ン・ドント大陸、ドワーフ達が集う東の砦にて、我、明季がゴーレムの開発者、開発部長1柱を、今後開発のため、我が魔力をもってここに召喚する、来たれ海琴隊の英雄!」


 ブウゥン、と軽い振動と共に魔法陣が浮かび上がり、その中央から1柱のスケルトンが浮かび上がる。


「お呼びですかな?ホルダー阿騎」


 ビックリする周囲。まあそうだよね、スケルトンだし、あっさり出てくるし。


「クレームです」


「はい、受け付けますよ」


「長さん、自己判断が強めです、もう少し弱くしてください!勝手に大砲撃っちゃうし!」


「無理ですな、ドワーフ王のプログラムですし、経験を積む以外変りませんな」


 うわ、一言却下だよぉ。


「では開発部長!あのスーパーゴーレム、常駐はできませんか?」


「!」


 この質問には周囲が、どよめいた。

 この地に常駐できたら、戦力の要、抑止力にもならないか、と考えたのだ。


「できますよ」


 あっさりと答えが返ってきた。


「条件は?」


「この地での魔力供給、ポゼスターの設定、この二点ですな。どちらかロストすると、ホルダー阿騎の元へ帰ります、ようは我々の住む場所で、待機状態になります」


「ポゼスターの設定って?」


「憑依する人物設定です。この地に止まり長さんの面倒を見る者です」


 私はチラリとン・キングを見る。


「適任者はここにいますか?開発部長?」


 あ、ニヤリと笑った。


「ええ、そこのドワーフファミリーならクリアーです」


「!」


「どうします?ン・キング?あなたに私の大切な宝物、一つを貸しますが?」


「大事にする!大切にする!ダチの宝物粗末にしない!ただし妻と子供の次である」


「では、次の満月、この砦を再び訪れますね」


 こうして長さんは、東の砦の要になった。

 そして、長さんを中心に、街が作られていくようになるのだが、これも先のお話である。


 荷造りが終わる頃には、辺りはゴブリンやドワーフで溢れ出した。


 フーララさんとリラちゃんに別れを告げ、私達は瓦礫と化した東の砦を出ることになった。

 旅立ちの時、北のゴブリン全員がボカロを歌って、送ってくれた。


 彼らはとても綺麗に合唱してくる。歌が大事にされると、私も嬉しい!

 他の曲も教えようかなぁ、などと考えてしまう。


 ……教えよっと。


 私はリラちゃんを手招きした。


「一曲歌うね」


 そう告げて、息を吸い込み、お気に入りのボカロを一曲披露した。

 目を満月のように見開き、一音も、逃さないよう脳内採譜するリラちゃん。

 リラちゃんを通して、北のゴブリン達、全員に届いたはず。


 くいくい。


「ん?なに?リラちゃん?」


「ゴブ皆さんが、アンコールと言って、うるさ……ゴブゴブ……アンコールを熱望していますゴブゴブ」


 体力モンスターの獣人族の肺活量が、どれだけあるか知らないが、息の続く限り、源キーで二曲目を歌い、私達は砦を後にした。


 北のゴブリン達は大変喜び、いつまでも歌って、見送ってくれた。

次回配達は 2023/02/16 朝7時の予定です。

サブタイトルは 帰路 です。

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