【第85話】 精算の時4
15時 お茶の時間です。
(見ろ、あの粒を!この粒を!あの日から集めた感謝の粒だ!)
「と、時を忘れるくらい前から集めたぁ!」
小さな粒は空を覆い始め、大地にも溢れてきた。
魔族チクリは、私の前に立った。
(これだけのことをした。私は許されるのだろうか?過去は清算されるのだろうか?)
「分からないわ」
私には分からない。
私を虐めた人達、あの時、田崎さんやまどかに、助けてもらえなければ、私は酷い目に遭って死んでいただろう。
彼女はどうだろう?思い出せば、自ら死を選ぶほど酷い目に遭ったエルフさん。彼女はその魔族チクリを許すだろうか?
これだけ粒を集めても、感謝されても、過去は消えない。
「私に復讐するのですか?」
「わ、我の、ふ、復讐にぃ意味は無い!」
自然とランお母さんに目が向いた。
「さまよえる賢者さま、許す、の声が聞きたいのですか?」
「そうだぁ、そうなのだ!他のことはどうでもいいのだぁ!ワシはなぁ、阿騎!ワシはお前の許す、の一言が聞きたいのだ!」
ジャッジが私!?
なんで私?
こいつ、許せるか?
許せん。
心が狭いと言われようが、私は許せないんだ。
「私は許すことが出来ない」
(そうか……ならば、お前の唇から『許す』の言霊を引き出すまで粒を集めよう)
「なぜ粒を集める?」
(それしか知らぬ)
「そ、それしか出来ぬぅ」
(また遠い日に会おうぞ)
「み、未来で会おうぞぅ」
鈴を鳴らし立ち去る魔族チクリ。
「まって、魔族チクリ」
「…なんだぁ?」
(……どうした?)
「ありがとう」
(!)
「!」
「あなたのしたことは許せない、でも感謝する。エノンを、アイお姉ちゃんを助けてくれて、ありがとう」
(お前が私に、礼を言うのか!?この私に!)
「……お、お、で、出来ることをぉしたまでじゃぁ」
誰かが袖を引っ張る。
ん?ヒューお兄ちゃんとミューお姉ちゃんだ。
「おじいちゃん泣いているよ?明季、駄目だよ、泣かせちゃ駄目!仲良くしなきゃ、おじいちゃんは大事にしないと!」
無邪気だねヒューお兄ちゃん、ミューお姉ちゃん。
そんな小さな妖精にも、こいつは実験台に……。
私は許せない。でも……
(次に会うときは許すと、言わせる。さらばだ)
「ああ、誰だ?誰かが呼んでいるぅ……」
空に浮いている沢山の粒は、パッと弾け、私達に降り注いだ。
沢山の感謝、ありがとう、が降り注ぐ。
次回配達は本日 2023/02/12 17時の予定です。
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