【第84話】 精算の時3
おはようございます。
朝刊です。
嘘は嫌だ。
かといって、正直に答えたらどうなる?
わからん!
ではどうする?
「私は獣人族、シュート家の明季」
ど、どうだ?
「……やっと、やっとぉ巡り会えたぞぉおおおおうっ!」
聞いていませんな。
さまよう賢者は杖を空に翳した。
鈴の音が鳴り響く。
すると、小さなビー玉?ガラス玉くらいの魔力の玉が一つ、現れた。
それはキラキラと輝いて、とても綺麗で、魔族の所有物には見えない。
杖を振り、鈴が鳴る度に、そのガラス玉は増え続けた。
あのキラキラした玉、元気の塊じゃないでしょうね、と思わせる風景だ。
「わ、わしわぁ、あの超空間でお前に、お前に殴られぇ、こ、壊れてしまったぁ」
え?
「それからの日々ぃ、何に例えようかぁ!」
復讐に生きていた!?
ビー玉は増え、輝き続ける。
「壊れたぁワシに対する妖精達のゴブリンの態度ぉ!い、い、かにしてくれよう!お、お前だけに会うためぇ、今まで生きてきたぞぅ!ま、魔王から見放され、かえ、帰るところもないぃ!いやそれはいい、研究だぁ!研究もでき、出来なくなったぁ!そのワシにゴブリンやエルフ共は!寄って集ってぇ……」
え?踏みつけたの?趣旨返し?魔族だよ?危険では?危なくない?
この魔力の持ち主に、挑んだの?まさか!
あ、でも壊れているって。
だが、自業自得だろう!こいつのしたことは許容範囲を軽く超える!
「なぜ、ゴブリン共はあんなに馬鹿なのだ!エルフはお人好しすぎる!我が、きさまらにした仕打ち、忘れたかぁ!寄って集って助けやがって!面倒見やがって!何がご老人、食べ物をどうぞだ!疲れていませんか?足を洗いましょうだぁ?我は魔族!お前らなんか、一吹きで、異界送りだぁ!」
ん?変だぞ?
(お前にぶん殴られて、ベクトルが変わった、方向性がひっくり返ったのだ)
(だれ?)
(魔族チクリの意思だ、多少壊れているがな)
(私が壊した?)
(そうだ)
(放浪の責任を取れと?)
(いや、責任の問題ではない、ベクトルが変わって、俺はもう今まで通りの生き方が、出来なくなったのだ)
(え?変わったの?)
(お前が超空間で、私を変えたのだ!ぶん殴って!ああ、腹が立つ!裏で糸引いていたのは、あの亀だ!あいつが我を組み替えたのだ!)
「わ、我はもうぅ、魔族ではなくなったぁ、魔族なのにぃ!悲しいヤツを見るとぉ、居ても立ってもいられないぃのだぁ!た、助けなければ、き、気持ちが落ち着かん!お前のせいだぁ!そして我は気がついたぁ声だぁ!声が消えぬぅ!」
声?誰の声?
「ワシが苦しめぇ、殺してきたぁ妖精達の悲鳴が消えないぃ!」
え~そんなこと言われても。
魔族チクリが進んで行った結果でしょう?
悲鳴しかあげられない者、そして消えていった者達、今になって聞こえたの?
苦しさの声が。
魔族チクリ、遅すぎないか?
次回配達は 2023/02/12 15時の予定です。
サブタイトルは 精算の時4 です。