【第81話】 死を止める者2
おはようございます。
朝刊です。
針金のような手を伸ばすと、その指先に何かが現れた。
え?雪美草?
でもあれは、ただの草では?なんの言い伝えもない、雑草だ。
あ、でもニトお父さん、言っていた。
雑草なんてない、全ての植物は薬草だって。
「雪美草?でもそれは……」
「ち、違うぅ、こりはタダの草ではない……こりは浄化装置だぁ」
次々に空中から現れる雪美草。
(契約はまだ成立していない、俺がまだ納得していない、まだ仮契約ってところだ)
(え?助けてもらえないのですか?あなたは?)
(命を繋げる前に一つ、言っておく。母であるお前が決めるのだ、いいな)
(……はい)
二人の会話が聞こえる?魔族チクリ?やはり存在がバラバラだ。
魄と意思の繋がりが、壊れている?
『魄』と『意思』がそれぞれ独立している?
何があった?それに妖精達を助ける?こいつの利益は、動機は何だ?
本当に、アイお姉ちゃんやエノンを助けるの?
(俺の存在は気にするな、俺は不安定な存在でね。先程喋っていたのは俺の魄だ。今、念話しているのは意思の方だ。俺は分裂しているんだ。いいかよく聞けよ)
(はい……何でしょうか?)
(この毒は強い、そして、お前達の言う雪美草はこの毒より強い)
え?私、食べたけど!?
(昔、この地で魔王サイザンが討たれた)
え?
(サイザンの念はこの地に残り、数々の災害を呼んだ。そこで空中都市の者が、魔王の怨念を浄化するために、この雪美草をこの地にばらまいたのだ。この雪美草は魔王の思いを浄化するために作られた、強力な浄化植物なのだ)
ここで?お兄ちゃんが?どういうことだ?
それに、雪美草ってそんなに凄いの?
(ただ、これは条件が揃わなければタダの丈夫な草だ。そして条件が揃えば、大地を浄化する上位存在の髙植物になる。この者達に使えば、獣人の能力も浄化される。能力は半減、もしくは無くなる、よいか?)
(生きるのですね?)
(そうだ、ただし、その暮らしは人族と同じになる。満月の3日程は獣人になれようが、他は人族と変わらんぞ、それでもいいか?)
人族と変わらない?
あ!あの極寒の地ではもう暮らせない?
次回配達は 2023/02/11 17時の予定です。
サブタイトルは 精算の時 です。