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【第79話】 死にゆく二人

朝刊です。

 ……近くにゴブリン達がいる。


「ゴブ、お目覚めか?闘神さまゴブゴブ?」


「エノンは?」


「急に動いてはいけませんゴブ!背中の傷が開くゴブ!いま薬師をゴブゴブ!」


「明季、目覚めたのですか?」


 ランお母さん!お母さんの声だ!

 うう、右目が見えない、それにこの痛み、回復しないのか?

 背中が、引っ張られる感じで痛い。あの状況でよくかわしたな、私。


「これを飲むゴブ」


「え?」


 木のお椀に、青い液体が注がれている。


「これを飲むゴブ、解毒と魄の回復、調整薬ゴブ、ゴブリンの薬は嫌ゴブか?」


「そんなことはないですよ、この匂い、魔力還元を押さえる薬草も入ってますね?」


 私はゆっくりとその液体を、身体に流し込んだ。


「ゴブ!よくおわかりでゴブゴブ」


 この薬、ニトお父さんの匂いだ。

 そう思った瞬間、周りのゴブリン達が一斉に私を見た。

 え?さっと目を逸らすゴブリン達。気のせいか?


「ランお母さん、ここは?」


 野戦病院?数十人のゴブリン達が、手当を受けている。


「ゴブリンの東砦よ」


 ゆっくりと周りを見る。

 半壊した建物、あ、ここか。。

 もしかして、ゴブリン達の、怪我の原因は私か?


「違うゴブ、あれは白の砦、攻略失敗の怪我人ゴブ」


 そういって薬師ゴブリンはお椀を回収し、何やら作り始めた。


 ランお母さんが私の髪を撫でる。

 私は震える声で、尋ねた。


「……エノンは?アイお姉ちゃんは!」


「私は……ここだぜ……」


 少し離れたところに、アイお姉ちゃんとエノンが仰臥していた。

 傷だらけのアイお姉ちゃん。どれも深手だ。

 傷口の塞がりが遅い?

 獣人族特徴の一つ、超回復が機能していない。


 アイお姉ちゃんは粗末な布の上に、ごろりと寝かされていた。

 エノンはベッドらしき物の上に、寝せられている。

 ああ、背中の治療もしているのだな。


 エノンは魔力還元していない、生きている?

 だけど呼吸が浅く速い……意識は……ない?


「……明季、ちゃんと……計算……9匹た倒したぜ……すげーだろ?」


「アイお姉ちゃん」


「な……泣くなよ、明季、戦いで……死ぬのは獣人の……さだめさ」


 そんな!私は、アイお姉ちゃんの手をそっと握った。


「い、今まで……散々、氷獣や敵を倒してきたんだ……今度は私の番……さ」


 そうかも知れないが、納得できるかっ!


「ゴブ、簡単には死なせないゴブ!北のゴブリンの薬師はン・ドント大陸一ゴブ!」


 周りのゴブリン達が、次々に声を上げる。


 虚ろなアイお姉ちゃんの目、静かすぎるエノン。

 ニトお父さん、助けて……。

次回配達は 2023/02/10 16時の予定です。

サブタイトルは 死を止める者 です。

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