【第76話】 新月と満月1
夕刊です。
(明季、氷獣討伐は終わったみたい、お父さん達、白いドームに向っている!)
え?あれを攻撃するつもり?同じ構造だったら、凄く頑丈だけど?危険では?初見じゃないの?
(魔ゴブリンは残30、魔獣が58、他は魔力還元したみたい、凄いわね900もいたのに……今ゴブリン達が向ったわ。彼らも白いドームを目指すみたい)
ん?閃き?警告?
「……エノン」
(なに?明季くん?)
「普通は獣人族、満月期が最高?」
(そうだよ?個体差はあるけど)
新月期の攻撃、普通なら今が最弱?
(レイランお姉ちゃん、ランお母さん達は?)
(まって、魔力が乱れて……苦戦している!)
「エノン!」砦はひとまず大丈夫だ。ならば!
(了解、全速でいく、しっかりうちに摑まって!)
ひゃああああああっ!悲鳴が声にならない!?
す、雀の速さではない!
息が出来ないほどのスピードである。
が、そのエノンを軽く追い越す鳥がいた。
(先いくぜ、明季、エノン)
ケインお兄ちゃん!?
(いいか、よく聞け、氷獣の毒を剣に塗り、攻撃しているみたいだ。斬られたら回復が遅れる、もしくは回復しない!心臓か肺を刺されたら、最悪死亡だ)
(なっ!氷獣の毒は抽出、出来ないのでは?)
(今まではな、今日から違うぞ)
何者かが、抽出に成功して、兵器として使用していると。
ガモサンモではないな、誰だ?私を助けたダークエルフか?
(下見て!)
エノンが一言、念を送ってきた。
あ、猫?
そこには、矢のように走るミミお姉ちゃんがいた。
(アイを庇ってコロさんが斬られた、アイも重傷だ、そこで念話が途絶えた、急ぐぞ!)
な、コロ叔父さん!ア、アイお姉ちゃん!え?重傷?念話が途絶えた!?
アイお姉ちゃん!皆!
アイお姉ちゃんは、もしかして満月タイプ?
だったら、今、最弱だ!
……皆が心配だ。でもあの3人が気になる、立ち位置がおかしい。
慌てるな、冷静に静かに考えろ、ゴブリンの兵器としての、冷たいほどの冷静さを思い出せ。
(エノン、私を途中で下ろして)
(いいよ、でもなんで?急がないと団長とアイが!)
(離れている3名が気になる。様子を見たい)
(彼奴ら危険だよ?魔力感知、妨害しているし、本当にあそこにいるかどうか……うちも一緒に行くよ?)
(団長が危ない、エノンはランお母さん達をお願い、エノンが行ってくれると安心する)
エノン、考えている?
(駄目、うちも一緒がいい。もし明季が倒されたら、うちは一生後悔する)
(団長は?皆は?)
(団長も大事だけど、ミミとケインが向った。傭兵団はいつも死と、隣り合わせだ。団員の覚悟は出来ている。でも明季は違う。うちの判断ミスで明季が死んでしまうと、うちの心も死んでしまう、だから一緒に行く)
前世の記憶が蘇る。
ドライアドの攻撃に晒されるエノン。あんな思いは二度としたくない。
連れて行かなければ、前みたいに黙って、ついてくる?
(分かった、一緒に行こう)
生き残ってみせるさ。
大地に降りると、エノンは狼になり、駆け出す。
半ば獣人と化した私とエノンは3人を目指した。
1人はガモサンモだ。二人目はガモサンモの子分、もう1人は多分あのダークエルフだろう。
予想は当たった。
遠方だが、ハッキリと見える。
見つけた、相手も知っているよね、気づいているよね。
どうして、あなたのような知識豊富なエルフが、こんなことを!
なぜ、私達の命を助けた?データーが欲しかったの?
あの親切は嘘なの?
「このまま攻撃する!エノンはフォローお願い!」
全速力で走り、跳んだ。
ガモサンモと目が合う。
軽装だ、余程戦いに自信があるのか?
あ!
ダークエルフ、消えた!?
魔力感知も、目視も、匂いも、なにも感じない!?
最初からいなかった?幻覚か?
まるで魔族並ではないか!
次回配達は 2023/02/09 朝7時の予定です。
サブタイトルは 新月と満月2 です。