【第71話】 金と銀3
夕刊です。
ん?なに?ゴルちゃん?
「シルバー、シルバーの一族、誰一人損なうことなく救って見せようぞ」
ま、マジですか?見栄を切りましたね?ゴルちゃん。
ではそのゴルちゃんの思いに、答えねば!
「しかしゴルさま、これはゴブリン東の砦の戦いです」
「シルバー、何を言う?氷獣を倒し、多くのゴブリン達が命を落とした、我が獣人族は恩を知る者達ぞ?それに、一部の獣人達が、敵側に加担しておる、見過ごせん!」
(ホルダー阿騎さま)
ん?ゴブリン回路を通して、お話ししてきた?
(なに?シルバーっち?)
ゴルちゃんには、聞かれたくないお話か?
(ご存じとは思いますが、我々北のゴブリンは、弱い存在ではありません)
(だよね、記憶の継承が、今はどうなっているのか分からないけど、お話では朱槍で魔王を止めているよね?)
(はい。今は、そこまでの戦士はいませんが、いずれまた、生まれてくるでしょう。我々は、ブーステッドフェアリー、進化した超兵器の集合体です)
!
退化していると思っていたけど?違うの?
(利用され、他部族から恐れられるのを嫌い、代々、我々集合意識体がその力を封印してきました)
(……その封印を解けば、先の氷獣戦で、死ぬことはなかったでしょうに)
(自ら気づき、自ら解いてこその、北のゴブリン戦士です。ただ今回はホルダー阿騎の出現により、多くの北のゴブリンが力を発揮するでしょう)
(私の出現だけで?)
(はい、あなたは我々にとって、生きた伝説ですよ。彼らは封印を解かなくても、目を見張る戦いをするでしょう)
(死んで欲しくはないのですが?)
(彼らが選んだ道です、お気になさらずに)
(ゴルちゃんの応援は不要ですか?)
(い、いえ、頼もしいお言葉で、ここ、心が震えました)
……よかったね。
行くよ!
パチン。
世界は暗転した。
そして、意思の焦点が合う。
「明季?」
アイお姉ちゃんの声。
覚えている?
記憶は……持ち出せたか?
一番最初に思い出せたのは……ん?
シルバーっちとゴルちゃんが……なんか、いい感じ?
なんだこれ?……いや、他に大事なこと、沢山あったろう!?
え?思い出せない!?ばかなっ!
思い出せ!大事なこと!大事なこと!
あ、敵が迫ってくる!?
あと、メイドン!メイドンはどこにいる?……王都にいる!
他は?後は……うまく思い出せない!だが、これでよしとする。
ゆっくりと目を開ける私。
「「「敵が来る」」」
私とレイランお姉ちゃんとリラちゃんの声が、綺麗に重なる。
次回配達は 2023/02/07 朝7時の予定です。