【第61話】 さまよう賢者2
号外です。
あ、あいつとんでもないヤツだよ?
変なことされなかった?
(へ、変とは?とても紳士的でしたが?)
紳士!?あれが紳士!?
エルフさんや私達ゴブリンに酷いことをした張本人!実験のため、自分の好奇心を満たすためなら、手段を選ばない究極の迷惑魔族!
あげく、私やエノンに××18禁××を見せろとか言うし!あのド変態!
(そ、そ、そ、そのようなことを!?し、信じられません!見せたのですか!?)
(見せませんっ!恐ろしいこと言わないでください!)
あ、それで私、あいつを?あれ?あいつ、どうなった?
(さまよう賢者、魔族チクリさまは言いました。お前は残留思念の集合体、依代がないといずれ霧散してしまうだろうと)
魔族チクリと交渉したの!?危険すぎる!
(さまよう賢者は私のために膨大な魔力を使い、循環する意思のリングを作ってくれました)
な、なぜ魔族がそこまで?魔族のメリットは?信じられない!
(分かりません。北のゴブリンのエネルギーは、このリング上を絶えず循環し、進化し続けています。見かけこそゴブリンですが、もはや違う生き物なのかも知れません)
ゴブリン亜種というには強すぎか?モラルもかなり高そうだけど?
(そして、さまよう賢者に、ありがとうございます、と礼を言うと、彼は非常に喜び、勇みました。そこでさまよう賢者は私に、お前はホルダー阿騎を慕うゴブリン達の思いだ、それが集まり、意思を持った者だ、と。名をつけると、更に存在が強くなる、と言って名を付けてくれました。この名前は異世界の英雄神の名で、固い絆に結ばれた二柱の英雄神の片方の名だそうです。そのような偉大な名を、私が名乗るのは畏れ多いと思い、隠しております)
それは、何という名前です?
(はい、エンキドゥと言います)
ギルガメシュ叙事詩!
な、なんで魔族チクリが知っているの!?
どこで知ったの!?
私が驚いていると、エンキドゥは静かに語った。
(私のような存在は、過去にも幾つかあったそうです。ですが、残留思念の集合体なので、時が経つと消えていったそうです)
いつかは消える、思いの塊?
(私は、さまよえる賢者に巡り会えて、北のゴブリン一族の守護者のようになりました。この思念のリングがあるので、先に消えていった者達より、私は長く止まることができるでしょう。私が消えてもリングが残ります、ゴブリンを守り続けるリングが。そして第2の私がこれに宿るはず)
いつかは消えるの?
(はい。ですがそれは、死を迎える生き物と変わらないと思います)
ローローとネーネーみたいだな?
では、これはゴブリンという種族全体に憑依している、過去の亡霊の集合体?
あ……今、ニヤリ、と笑ったでしょう?
2023/02/03 朝7時 朝刊配達の予定です。
サブタイトルは 一言だけのメッセージ です。




