【第60話】 さまよう賢者1
夕刊です。
ふと、考える……。
(どうかしましたか?ホルダー阿騎?)
あなたの名前は?お呼び、と言っても、なんと呼べばいいのか?
(え?わ、私の名前ですか?)
(リラちゃんはなんて呼んでいるの?)
(意思とか祖霊とか呼んでいますが?王都の者はリングとか無限とか呼んでいます)
名前は無いの?
さ……さまよう賢者から、いただいた名前ならあります。
?
さまよう賢者?誰それ?なにそれ?いたっけ?そんな賢者?
(さまよう賢者は、数万年前からこのン・ドント大陸を彷徨い続けている魔族です)
!
魔族!
や、ヤバすぎだ!菌糸算譜や勇者システムは何をしている!危険極まりない存在だろう!
(お、お待ちをホルダー阿騎さま!さまよえる賢者は危険な存在ではありません!)
魔族だよ!?
ホント、会ったことあるの?凄まじい存在感だよ、あれは!
(彼の者はン・ドント大陸を彷徨い、数多くの妖精達を助けています)
え?魔族が?
(はい、医療、薬草の知識を授け、治水の技術、環境の浄化、ありとあらゆる知識で妖精族を助けています。それこそ膝をすりむいたゴブリンの子供から、死にゆく老エルフの世話、とても魔族とは思えません)
いや、おかしいだろう?それは魔族と呼べない!
それに、そんなお人好し、不届き者が利用したりしないか?
あ、魔族を利用するのは人族くらいか?
(さまよう賢者は、悪意のある者の前には現れません。苦しんでいる者の前に、のみ現れます)
何かを要求するのか?
(はい)
やっぱり!彼奴らがボランティアするはずがない!
(返事を要求します)
へ?返事?はい?
(はい、助かったか?と必ず聞きます。そこで感謝の意を述べると、非常に喜んで消えていきます)
なにそれ?それだけ?
(意識を持ち始めた私は、このような存在なので誰にも相談できませんでした。孤独です。自身の存在に苦しんでいると、さまよう賢者、魔族チクリさまが現れました)
!!!!!!!!!
はあああああっ!?
あ、あいつ!
あいつが!?
賢者!?確かに知識は凄いけど?あの諸悪の根源が賢者!?
妖精を助けている?え、待って?あの時代は何年前だ?
次回配達は明日2023/02/03 朝7時の予定です。
サブタイトルは さまよう賢者2 です。




