【第45話】 東の砦前で焼肉4
夕刊です。
まさかまた、丸焼きを食べることになろうとは。
じゅうーと焼ける音。
ああ、この香ばしい匂い、あの時と同じだ。
お兄ちゃん、私、また食べるんだよ、トビトカゲ。
リュートお母さん、なぜ、あなたはここにいないの?
「明季、これ、すんんんっつっつげー美味いんだぜ!」
知ってる。
「でよ、捕まえるの結構難しいんだ!」
それも知っている。
「アイ、よく捕まえたね!うち、感心する!」
「へへっ、すげーだろ」
「トビトカゲはドワーフが大好物なんよ、傭兵団で武器注文するとき、金貨よりもこっち持って来いって言うんよ」
あ、それも知っている。
「へー」
「それでね、うち達、捕まえに行くんだけど、動きが速すぎて捕まらないんよ、うちら獣人族だよ?それなのに!」
ドワーフさん、相変わらずトビトカゲ好きだね。
あと角イノシシも好物だったよね、こっちはどうかしら?
絶滅とかしていないよね?
ドワーフさんやゴブリン、会ったらどんなお話をしよう?
「明季、話があるの」
え?ランお母さんからのお話?
ん?コロ叔父さんとエノンが横に座った?
お話はゴブリンとの交渉についてだった。
先にお話をした、ケインお兄ちゃんによると、氷獣退治の件、お礼は全て断られたそうだ。
沢山のゴブリンが死亡したけど、こちらから赴いたこと、と言い何一ついらぬ、と言うことだったらしい。
そんなゴブリン一族から、お願いが1つだけあった。
私に会いたいと。
始めはケインお兄ちゃんも話を聞いた季羅お父さんも、困惑したらしいが、余りのゴブリンの熱意に、成人の儀式として向わせること、にしたらしい。
ゴブリン達、何か気がついているよね?多分。
私の声で、獣人族の村に集まったし、皆死んでしまったし、どう思っているのだろう?
「明季、ゴブリンに対しては、何を喋っても構わぬ、季羅の言葉だ。ただ礼節をもって対応しろ、とも言っていた」
「分かりました。ランお母さん」
陽は大きく傾き、星が見え始めた。
森の中が騒がしくなり始める。
夜行性の獣達が動き始めたのだ。
「この儀式、旅はまだ長い。長いが、旅が終わった後のことを、少し話したいの」
「……はい」
自然と皆、集まってくる。
「取敢えず、私は次のトビトカゲ焼くね」
「お、調理、手伝うぜ。なんせ私が捕ったヤツだからな」
「じゃ私も……」
「シン、アイ、あなた達にも話があるの」
「皆、耳だけはこっちに向けとけ」
なんだなんだ?もしかして、お見合いとか、婚約とか、け、決魂とか?
二人とも妙齢だし。
次回投稿は明日 7時 の予定です。
サブタイトルは 東の砦前で焼肉5 です。