【第38話】 夜明けはまだ遠い6
夕刊です。
ランお母さんはペロペロとヒューお兄ちゃんとミューお姉ちゃんの毛繕いをし始めた。
アイお姉ちゃんは疲れたのか、お母さんの横に寝そべり、ガクンと寝てしまった。
もしかして、ランお母さんの癒やしの波動、おっぱい波動が出ているのだろうか?
じっと見てみる。
あ、絶対出てる。
だってヒューお兄ちゃんとミューお姉ちゃん、しがみついて寝ている!
(どこへ行くのだ、明季?)
(エノンが寂しがるといけない、向こうで寝る)
(そうか、アイのこと、大変だったな、礼を言うぞ)
(ランお母さん、私達、姉妹だよ、良いことは教え合う。ここは氷の世界だけど、それだけじゃないよね?)
(ああ、それだけじゃないと信じたいね)
私は足早に戻り、もふもふのエノンに抱きついた。
うっっっひゃ~もふもふだ!
されるがままのエノン。
起きている?寝ている?
狼と一緒に添い寝なんて、前前世では絶対味わえないね!
そして思い出す前世。
(……許せ、エノン)
私はエノンにしがみついて、少し泣いた。
そしていつしか、寝てしまった。
夢を見た。
子ネコの夢だ。子ネコがしきりに私の指を舐めるのだ。
お腹すいているのかな?
私は、一生懸命お世話をする、そんな夢だ。
ちゅっちゅっ。
ん?
外がちょっとだけ明るい?
夜明け前、出発だ!と思い、起きると、アイお姉ちゃんが私の指をしゃぶっていた。
!!!!!
ななななんで、ここにいるの!
向こうで寝てたよね!?
お母さんと一緒だったよね!?
夢の原因はこれか!?
あれ?エノンがいない?
アイお姉ちゃんと目が合う。
「おう、明季、おはよう!」
「……おはよう」
アイお姉ちゃんは、私の手を握りしめている。
「……」
起き上がり、すたすたと私の手を引っ張り、外に出る。
ごしごし。
「だ、誰にも言うなよ!」
いや、もう皆知っていると思うよ。
「!」
「どうした?明季?」
「何か飛んでくる!」
「あれか?鳥だろう?変な形だな?」
「いや、鳥だけど、違和感がある」
カマクラから外に出されたソリに集まるメンバー。
一同見渡す。
エノンがいない。
コロ叔父さんと目が合う。
厳しい目だ、何かあったな、これは。
次回投稿は明日24日7時の予定です。
サブタイトルは それはちゅんちゅん1 です。