【第36話】 夜明けはまだ遠い4
夕刊です。
エノンは薄らと目を開け、私を見ると、再び目を閉じた。
(で、で、これからどうするんだ?)
(ランお母さんのところまで運ぶの!)
(う、動いていいのかよ?)
(動かないと、運べないよ!)
雪洞の中をとことこと、出口を目指して歩き出す私。
こんなデカいカマクラ?よく作ったなぁ。
ん?
アイお姉ちゃんは止まっている。
?
どうしたの?
(ど、どうやって動くんだ?)
(え?……まず右足を前に)
冗談半分で言ってみる。リラックス、するかな?
(お、おう、右足な)
どしん。
(お、起きちゃうよ!?ゆっくり!ゆっくりだよ!)
(つ、次はどうするんだよっ!)
お願い!普通に歩いて!普通でいいよ!
(アイお姉ちゃん!)
(な、な、な、なんだよ!今、余裕ないんだよ!ぐにゃくにゃして、やわやわで持ちにくい!)
(落ち着いて)
(お、おう!?)
(私の真似して)
(お、おう?)
(こうやっていい?包み込むように抱っこする)
(お、お?)
(よく見てね)
(おう)
ごそごそ。
(上手だよ、アイお姉ちゃん!)
(おう!)
(大好きだよ)
(お……)
私が静かに歩き出すと、落ち着いたのか、そろりそろりと歩き出した。
(なあ、明季)
(なあに?アイお姉ちゃん?)
(今、私、命を抱いているんだな)
(!)
この姉が、更に好きになった瞬間だ。
この私が、人を好きになるなんて!
次回投稿は明日24日、朝7時の予定です。
サブタイトルは 夜明けはまだ遠い5 です。