【第29話】 更に追加
誰かいないのだろうか?
歴史に詳しい人!
この世界、文字はあるのだろうか?数字は?
書物は?記録は?
語り部だけでは、情報収集難しいよ!
作業しながら考えるが、どうしようもない。
パチン!
あ、なんか閃いた!
そうだ、王都だ!
学生がいるってことは、勉強、何らかの記録があるはず!
王都、行ってみたい!
「おい、明季、手が止まっているぞ」
「あ、ごめんなさい!コロ叔父さん!」
そして出来上がった、巨大カマクラもどき。
2階建てのカマクラ?
内部はテニスコート2面ほどの大きさだ。
獣人族の力、体力、スピードは凄い。
これは、人族の感覚で考えてはいけないな。
これだけの作業量を難なく熟している獣人族、重機だね。
「ここは暖かいね」
素手が、霜焼けになるのでは、と心配していたが、全く問題なかった。
獣人族は、防寒具の手袋は基本しない。
武器を握るとき滑るからだ。
着用は薄い皮の手袋か、指ぬきのグローブだ。
ゲシゲシと拳を使い、雪を固め、氷の魔法でコーティングする。
「え?暑いだろ?」
アイお姉ちゃん?暑い?
獣人族、体温変?
これが暑いと感じるならば、夏場はどうなのだ?
寒さに強すぎて、逆に暑さに弱いとか?
外は日が暮れて、更に気温が下がっているのに、暑いとは?
ん?外から声がする?コロ叔父さん?
「おい、火の魔法が得意なヤツ、誰かいないか?肉焼くぞ」
肉と聞き、わらわらと集まるメンバー。
しかし、このパーティーメンバーは凄いぞ。
全て戦士、パワー系。
多少の攻撃魔法も使い、回復は自ら行う。
そう、傷は自然回復してしまうのだ。
物理攻撃特化の弾丸パーティー?
「おい、レイラン!肉、肉!早く焼け!」
さらに肉食系か?
「ええっ!?また私?たまには焼いてよぉアイお姉ちゃん!」
「ああん?姉が焼けって言ってんだよ!」
体育会系?いや、これは横暴だね。
(焼きながら食べるって難しいのに)
頑張れ、レイランお姉ちゃん。
ここは可愛い妹が、焼いてあげましょう。
「レイランお姉ちゃん、私が焼くよ、どうするの?教えて」
薪は無いし、どうも直接魔法で焼くらしい。
ソリに積んであったレンガと金網でコンロ?竈?らしき物が組んである。
「火加減が難しいの、こうやるのよ」
金網に下に魔力が集まり、熱を持ち始める。
すかさず肉を載せるアイお姉ちゃん。
「レイラン、お前、火加減最高!私がやると生焼けなんだよ!」
「……ありがと、誉められると嬉しいわ」
レイランお姉ちゃん、棒読みだよ?
かなり繊細な魔力操作だな、これは以外と難しいぞ。
「気持ち的には、ほんの少しの魔力を使う感じ、手に握れるくらい」
「魔力1コ、握るくらいだね?やってみるよ」
と、言った瞬間、ストップの声が響いた。
「なにコロ叔父さん」
「折角の肉を炭にしたくない」
「えっ?」
信頼なし?
変なフラグ立っていた?
「まずは火を起してみろ、離れて、だぞ」
「コロ叔父さん、何を警戒しているの?」
私のどこが不満なわけ?
「明季、お前、金狼らしいな?金狼級の魔力1とレイランの魔力1が同じとは思えん、どうだ?」
「信用無いなぁ、傭兵団との戦いで、私の魔力、どのくらいか知っているでしょう?コロ叔父さん」
「明季、お前は成長が異常に早い。使える魔力量もかなり増えているはずだ。気づかないのか?」
え?増えている?そうかなぁ?
コロ叔父さん達、傭兵団との戦いで魔法を使ったけど、獣人族は使える量が少ないのだ。
使えない分、とんでもない怪力と回復力なんだけど。
まあ中にはレイランお姉ちゃんみたいに、研ぎ澄まされた獣人族の魔法使いもいるけど。
ん、このくらいか?
魔力を使ってみる。
ほいっ、と。
直径5m、高さ100m程の火柱が現れた。
轟音と共に渦を巻き、さながら炎の竜である。
泣き出す、新ちびちゃんズ。
お箸と木の皿をボトリと落とすアイお姉ちゃん。
「コロ、よくやった。あわや大惨事だ。しかしこれは見物だな、村からも見えるのではないか?」
お母さん、余裕だね、予測していたっぽい。
「明季……儀式が終わったら、傭兵団にくるか?」
(あ、やっぱり怖いかも、ごめんね明季、帰りたくなっちゃったかな)
(コロ、今の火柱は何だっ!皆無事か!?)
あ、季羅お父さん!
(兄貴、問題ない。ちょっとした手違いだ)
(本当か?とてもちょっと、には見えないが?)
(盛大に焼肉していただけだ)
(ラン!)
(大丈夫だ、夫よ)
(火元は明季か?凄い焼肉のようだな?)
(夫よ、あなたがいれば、もっと楽しいのだが。家族で旅がしたい)
(!)
(夫よ、きっと楽しいぞ)
(そうだな)
(ラブラブ中申し訳ないが、うちの伝令はどこ行った?)
(火柱を見て、そちらに飛んでいったが?)
(そのままこっちで使っていいか?)
(お前の傭兵団員だ)
(分かった、何かあったら連絡する)
(待て)
(どうした)
あ、嫌な予感がする。
(今、連絡が入った。ガモサンモが、村人30名程連れて消えたようだ)
(!)
(警戒しとけよ、襲撃するかもしれん)
(分かった)
(後方に10名付けた、これ以上は回せん)
(過保護だな、10名も?)
(出来れば戦いたくない)
(襲撃されたら容赦しない、こっちは子供もいる)
「ランさん、傭兵団一名追加だ」
「鳥か?」
「ああ、鳥だ。それから全員に連絡だ、ガモサンモが村人30名程連れて消えた」
「!」
「襲撃があるかも知れん、警戒は怠るなよ。特にレイラン!」
「は、はい」
「お前の魔力感知は、彼奴らにとって脅威だ、最初に狙われる」
「え?」
青ざめるレイランお姉ちゃん。
「傭兵団が一人来る、帰るなら付けるぞ」
ふーん、帰れとは言わないんだね、選択はレイランお姉ちゃんに任せると。
「残ります」
即答?大丈夫?レイランお姉ちゃん。
「襲撃されたら一切躊躇うな、獣人族の恐ろしさは知っているよな?」
「ああ、知っている、そしてそいつらにも教えてやるよ」
ニヤリとするアイお姉ちゃん。
「儀式、中止の選択はないのですか?」
シンお姉ちゃんがコロ叔父さんを睨む。
「ない」
「なぜ?」
「一度始めたことだ、やり通す。それに今回は、金狼の儀式だ」
「家族を危険に晒しても?」
「晒してもだ」
あ、シンお姉ちゃん、お母さんモードなんだ!
「シンやアイ、レイランの時は厳かに儀式が進みましたが、長い歴史の中で、儀式中の襲撃は何度もあったそうです。死者も少なくないと聞きます。それでも、それを乗り越えないと獣人の成人とは言えないのです」
なるほど、色々な意味も含めて、襲撃も含めて儀式なんだね。
で、私の時だけ、襲撃あり?
ガモのあの性格なら、襲撃は確定だろうな。
容赦はしない。
魔力全開で返り討ちにする。
これだけ魔力があれば、重速術が使えるだろう。
ネクロマンサーの回路も開くかもしれない。
超空間へ行けるかも。
検証したいな。
でも、どんな影響が周りに出るか分からないし、どうしたモノか?
皆の前で検証する?
いやシンお姉ちゃんの記憶もあるし、レイランお姉ちゃんの魔力感知は敏感すぎる。
どうする?
しかし、いつの間に私の魔力、こんなに大きくなったのだろう?
まあ、確かに体格も変わってきたかな?
二次性徴っぽい?
反抗期とかくるのかしら?
じっと見てみる。
ちょっと大きくなった?
ランお母さんを見る。
シンお姉ちゃんを見る。
アイお姉ちゃん、レイランお姉ちゃんを見る。
溜息一つ。
がしっと首に腕が回される。
「!」
「なに溜息ついているんだよ!?」
「ア、アイお姉ちゃん!?」
「どこ見ているんだ?ここか?」
さわさわ。
「んっきゃああああっ!い、今痛いんだから触ったらだめっ!」
「あ、ワリい。んじゃお詫びに優しく触るぜ」
ひ~っ!
私はダッシュで逃げた。
「!」
「どうした?レイラン?」
「コロ叔父さん、何か飛んでくるよ?」
私の魔力感知外、まだ感知出来ない。
凄いな、レイランお姉ちゃん。
魔力は私が上だけど、感度はレイランお姉ちゃんの方が上だ。
空を見上げる。
ゴブリンの目と獣人族の目で見る。
夜なのに、星の明るさでお昼のよう。
いや違うな、不思議な夜の明るさ?
音も無い静かな星の瞬き、その星に埋め尽くされた空。
静かなのに、賑やかな空、ああ、綺麗だな。
「!」
鳥?鳥が近づいてくる!
あ、目視ギリギリで雪原に舞い降りた。
ん?足音?
アイお姉ちゃんが身構える。
筋肉が膨れ上がり、眼光が鋭くなる。
近づいてきたのは一匹の灰色狼。
団員は鳥と聞いたが?
それに舞い降りたのは、ちょっと大きめの鳥だった。
が、近づいてくるのは灰色狼である。
なんで?
あ、走り出した!
うわぁ、流れるように走るんだ!綺麗!
(え?うち綺麗?)
!
え?エノン?
立ち塞がったアイお姉ちゃんを、軽いステップでかわし、大きな灰色狼は私の前に躍り出た。
綺麗な狼は。私の前でゴロゴロとお腹を見せて転がり、目が合うと、ピョンと飛びつき、顎をペロペロ舐める。
「く、くすぐったいよ!」
遙かに私より大きな灰色狼に抱きつかれ、押し倒されないのは、力持ちの獣人故か?
次回投稿は2023/01/18の予定です。
サブタイトルは 獣人族とフェロモン です。




