【第27話】 追加
魔力感知に何名ヒットする?
4名?
「明季、何名の待ち伏せだと思う?」
え、私に聞くの?コロ叔父さん。
「4名」
「おしい、5名だ」
え?
私の魔力感知に反応しているのは、前方の4名のみ、なんですけど?
「私も4名と思うが、違うのか?」
シンお姉ちゃんが、魔力を纏い始める。
「シン、こいつらの隠れる術は凄いぞ。だが動きが単純すぎる。二人は子供、術者が一人、戦士が一人だ。この戦士は手強く感じる。子持ちの盗賊か?」
「子持ちの盗賊?この場所でか?コロ、詳細は分からないのか?傭兵団団長だろ」
うわぁ、ランお母さん、コロ叔父さんをチラリと睨んだ!
体育会系先輩と後輩の会話みたい。
「このような場所に子を連れてくるとは、寒さで死んでしまうぞ!どこの愚か者だ!」
「術者が強い、なっ!今、俺の魔力感知を上書きしたぞ。こいつは宮廷魔術師クラスだ」
上書き?偽の情報に書き換えた!?
そんなこと出来るの!?
ブーステッドフェアリー以上!?
今度私もやってみるか?
「残りの一人は?」
シンお姉ちゃんが半分獣化している。
不謹慎だが、耳が可愛い。
「魔力感知ギリギリのライン上にいる。それも上空だ」
「え!?空!?」
「そうだ。だが、こいつは傭兵団のメンバーだ。なぜ追ってきた?」
「連絡できるの?」
「繋がりを切っている。命令違反なんだが、こいつは仕方あるまい」
空ってことは鳥に獣化している?
誰だろう?
「ならば、警戒は前方の盗賊だけか?獣人族の一行を襲撃?後悔することになるぞ」
シ、シンお姉ちゃん?人、変わった?
「こちらを探っているが、襲撃とは限らん。ラン、すきにさせてもらうぞ?」
「コロはプロだ、プロに任せる。さあ指示を」
あ、ランお母さん目が怖くなっている!
全員戦闘態勢だ。
ん?
私の魔力感知をすり抜けている!
位置が時々ブレて、正確な場所が掴めない!
凄い術者だ。
これが書き換え?
だけど?
変。
こちらの様子を探っているけど、私しか見ていない?
なんで私?
警戒すべきはコロ叔父さんか、ランお母さんでは?
つんつん。
魔力で優しく、つつくような感じ?
あれ?この反応、知っている?
あ、これは!
「コ、コロ叔父さん!ランお母さん!レイランお姉ちゃんだよ!これ!」
「え!?あいつか?」
「レイラン?あの子がここに?本当ですか?明季?なら他の3名は?」
((かあしゃん))
あ、ヒューお兄ちゃんと、ミューお姉ちゃんだ。
(な、何をしているのです!ついて来てはいけません、帰りなさい!)
お母さんが怒る。
((やだ))
綺麗にハモる双子。
((いっしょ、行く))
私の兄と姉、ヒューお兄ちゃんと、ミューお姉ちゃんだ。
外見では私の方が姉だな。
((明季ばかり、ずるい))
いや、そう言われましても。
巧妙に隠れているが、残り二人も感知した。
あ、結界を解いた。
え?感知していた場所と全然違う!
レ、レイランお姉ちゃん、凄い!私の魔力感知に、干渉している!
これが上書き?
「アイ!レイラン!」
空気がビリビリと震えるくらいの怒声。
お母さん、怖いです。
雪原に突然現れる二人。
森にいると思っていたのに!
どうやって姿を隠していたのだろう?
「アイ、ヒューとミューのお世話は、連れてくることではありませんよ?」
「でも、でも母さん、二人が……どうしても、お母さんと一緒がいいって……会いたいって」
「甘やかすだけではいけません!」
「母さん、無理だよ、駄目だ。私、小さい子、叱れない。可哀想になる」
「ヒューとミューが我儘になってしまいます。二人とも我慢を知らないといけません。そしてアイ、あなたも厳しさや、優しさを覚えないと」
さてどうしたモノか。
「それからレイラン、なんです、あなたまで。何があったのです?術者が不在では村の者達が困ります。直ぐに引き返しなさい」
「周囲警戒は……他の人でも、十分よ」
なんでレイランお姉ちゃんが??
私を怖がっていたのに?儀式で私が不在になれば少しは落ち着けただろうに?
「明季は怖いけど、離れたくない。凄く寂しくなる」
はい?
「明季の魔力に依存していますね、それではいけませんよ」
え?依存?
「え?依存?」
あ、シンお姉ちゃんとハモった。
「今すぐとは言いませんが、レイラン、自立しなさい」
「無理だよ、お母さん。私、他人の雑念に耐えられない。明季がいると、雑念やドロドロした念が、私まで届かない。無意識に明季が庇ってくれる」
え?私、そんなことしていたの?
無意識に魔力が働いていた?
「そ、それに私、フェロモンの調整が出来ない」
「!」
ん?なにそれフェ?フェロモン?
「成人の儀式は終えたでしょう」
「氷獣は倒したし、色々なお話も聞いた。でも、だからといって全部納得して、出来るわけじゃない!」
そりゃそうだ。
資格試験合格しても、国際A級銀行の激務事務現場、即戦力で通用するか?
ある程度は通用する(私の世界、限定だよ)。
しかし、応用、更に努力しなければ通用しない、職場異動となる。
対人関係もあるしね。
私はすすっ、とレイランお姉ちゃんにすり寄り、抱きしめた。
「!」
驚くレイランお姉ちゃん。
あ、いい匂い。
私はコロ叔父さんとランお母さんを、じっと見る。
「連れて行く」
「それは……」
言葉が詰まるコロ叔父さん。
「この者は私に助けを求めたのだ、見捨てることは出来ない」
「!」
シンお姉ちゃんが、はっとする。
何かに気がついた?
「どうするのだ、コロ?」
ランお母さんが溜息をつく。
「……連れて行こう」
「「え?いいの?」」
あ、レイランお姉ちゃんとハモった。
ぱっ、とレイランお姉ちゃんのお顔が輝く。
「助けを求める者を見捨てないとは、明季、お前はゴブリンみたいだな」
ギクッ。
ゴブリンでした。
「それでは、残り3名はどうするのだ?」
ランお母さんはギロリ、とアイお姉ちゃんを睨む。
ちびちゃんズは今にも、泣き出しそうである。
うう、この3名、仲間になりたそうに、こっちを見ている!
「……明季」
アイお姉ちゃん!いつもの元気はどこへ?
そんな、捨てられた小動物みたいな目、私にどうしろと?
「あき!」
だからミューお姉ちゃん。
「かき」
ヒューお兄ちゃん、まだお喋り練習中だよね。
これは、仲間にするしかあるまい。
私達のパーティーに、新しい仲間が4名加わった。
ぞろぞろ。
総勢8名、とても賑やかになりました。
「コロ叔父さん、空の人は?」
「ああ、アイツは季羅に報告だ」
「え?季羅お父さん、念話は通じないの?」
「氷獣の異常発生、ゴブリンの遺品管理、討伐不参加者への制裁、食料手配、王都対応、その他諸々、こちらに意識を向けている暇はない」
「……私達、儀式していて、いいの?」
人手不足?後継者育成って知ってる?
「成人の儀式が終われば、大人として使える。お前は有望だからな、明季」
とコロ叔父さんが笑う。
「後継者、明季」←シンお姉ちゃん。
「継承者、明季」←レイランお姉ちゃん。
「伝承者、明季」←アイお姉ちゃん。
え?姉妹で牽制?姉妹あるある?
「これ、あなた達も世を継ぐ者ですよ」←母。
うげ、儀式終わったら大変らしい。
次回投稿は2023/01/15の予定です。
サブタイトルは キャンプ? です。