【第18話】 風の戦士達
捉えた。
屈強な戦士だな。
「!」
両脇から私の進路を阻もうと、4人の戦士が現れる。
一人目は双剣で、足捌きが凄い戦士だ。
上半身と下半身がバラバラで、間合いを狂わせ、左右の剣で仕留めに来た。
二人目は槍使いで双剣の死角から突いてくる。
うわっ見事な連帯。
この二人の後ろの二人も、抜刀しているし、手練れだな。
取敢えず、地面を破裂させる。
ドンッ!
盛り上がり、弾ける大地。
「なっ!」
「え?無詠唱!?」
脅かすには十分。
だけど、種明かしをすると、これが今の私の最高出力魔法なんだよね。
訓練すれば、出力は上がると思うけど、今はこれが精一杯。
獣人族は腕力、脚力、体力、物理系等は凄いけど、魔力の使用範囲が極端に狭い。
魔法での攻撃は、想定していたのかな?していないよね。
ここで4戦士に虚ができる。
要は隙だね。
私の視線は足下。
地を這うような低姿勢だ。
靴の先が8つ見える。
ローローとネーネーに教わった『影切り』を試してみる。
ゴブリンの時は、使い熟せなかった技だ。
靴の位置が分かれば本人の位置が分かる。
靴の大きさで、相手の大きさ性別が分かる。
靴の向きで動きが分かる。
そして、靴の形、縁の減り具合、で靴底を予想する。
そうすると、相手のクセ、技、力量が分かる。
らしい。
私はまだ、そこまで到達していない。
だって難しいんですもの。
靴底は絶対に見せるな、と言うのがローローとネーネーの教えの一つだ。
私は、魔力感知で全体を捉えて、朱槍を振るう。
ちょっとオーバーアクションで決めてみる。
「なっ!」足払い!こいつは男、右足が軸足!
「うわっ!」足払い!こいつも男、左利き!
「えっ!なんで見えるの!?」足払い!この人女性、外反母趾!
「ちっ」あ、ジャンプした!さすがに警戒されるか、足払い4回目だもんね。
でも逃がさない。ちなみにこの人男、右足を負傷している。
しかし、よくジャンプしたな、さすが獣人族。
でも槍は剣に比べて、長いのだ。
軽く突きを入れる。
どうだ?躱せるか?空中だぞ?
キンッ!
お、剣で弾いたか、お見事。
でも私は4人抜いた。
目の前の人物、こいつが大将だ!
さて大将、どう動く?
あ、魔力の動きが見えた!
え?大きい!?
ヤバい、この人獣族だけど魔法使いだ!
この人の雰囲気からして、得意属性は風かな?
「風よっ!」
ほらね、でも詠唱が風の一言なんて、凄い。
私は自分の足下を、派手に破裂させる。
無論、爆風は私を傷つける。
だが、相手の虚を突くことが出来る。
その裂風を利用、加速してっ!!
一撃!
詠唱一言でも、一瞬行動が遅れる。
どうだ!?
スカッ!
あれ?
外れた!?
!
風の戦士は攻撃魔法ではなく、魔法を移動に使っていた。
上空に!?移動した?に、に、逃げたっ!?
!
ん?何か来る!
左右の死角から不規則に迫っている?
魔力感知をブーステッドフェアリー並に引き上げる。
あ、これ!
ブーメランだ!
ヒュン。一つ目は躱した。
ブンッ。二つ目は躱せない!
槍を使い、下からすくい上げる。
ガッ。鈍い音と共にブーメランがバランスを崩し、ひらひらと私の手に落ちる。
ブーメランを握りしめる。
この感覚懐かしいな、青3番、動いているかな?
私は大地に向ってブーメランを投げる。
「!」
「おい、投げたぞ!?」
ブーメランは大地スレスレを滑るように移動し、風の戦士の着地点へ向う。
「団長!」
誰かが叫ぶ。
がブーメランはヒット寸前で急上昇し、大きく弧を描き私の手に向う。
「そこまでだ!」
お父さんが怒鳴る。
その声は、空気が震えるような感じだ。
ビリッと電気に触れたように、身体か硬直する。
「わっ」
ペキ。
あ、やった。
突き指。
痛い。
目茶苦茶痛し。
え?獣人族って屈強なのでは?
なんで突き指で涙でるの?
回復は早いけど、痛感はありますってこと?
うう、ゴブリンの痛感無効に慣れきっているよ。
氷獣の時も、実はこれで失敗しているし。
あ、突き指と言えば、前世を思い出し、ポロリ、と涙が零れる。
「おい、団長、あの子泣いているぞ?」
「え?」
「どこか痛めたか?」
「皆、やり過ぎだよ!」
「見てくる」
すらりとした容姿、ショートカットの綺麗なお姉さんが、音も無く近づいてきた。
「大丈夫?ごめんね」
……このお姉さん、知っている気がする。
「だれ?」
「え?私?わたしは、トアンよ。獣人傭兵団『雪原の飛龍』のメンバー」
「トアン?」
「そう、トアンお姉ちゃんと呼んで」
トアン!?
「トアン……お姉ちゃん」
「そう」
「私は……」
「明季ちゃんね、知っているわ。ごめんなさい、試してしまったわね。ここの傭兵団、すぐ悪ノリするのよ」
じっ、とお顔を拝見する。
綺麗である。
美人さんである。
そばかすが魅力的である。
一重瞼。
睫が凄く、綺麗で長い!
「そ、そんなに見つめないで、明季ちゃん。ちょっと、恥ずかしいかも」
さわさわさわ。
「んきゃっ!」
私は悲鳴を上げた。
「ひいいいいいいいっ」
だだだだだだれっ!今、誰か、私のおしり触った!?
気配なんてしなかったのに!
おしりを押さえて振り向くと、誰もいない!?
「まえた」
更に後ろからぐっと、抱きしめられる。
え?ふわっとした香りが私を包む。
何の花だろうか?
香水?違う、これは、人工的な強い、刺すような匂いではない。これ、自然の香りだ、いや、霊匂?
何かを思い出させる!
「うち、この子気に入っちゃった!この子、もう、うちの!」
え!?この声!?
次回投稿は2022/12/31の予定です。
サブタイトルは スキンシップとは言い難し です。