【第14話】 ホントに学生さん?
諸事情により、1時間早い投稿になりました。
「誰だ?こいつ?」
王都の学生さんだって。あ、聞こえないか……。
「シン、名は聞くな。人族の薬師だ」
血液を使う?
「若いな?校章?学生か?」
薬関係は分からないけどDNAとか関係するのかしら?
「見習いだそうだ」
血液で感染する病気もあったような?
「父さん、任せて大丈夫なの?」
大丈夫なのかな?
「ンナイの紹介だ。それにこの時期、他に誰もいない」
血液型もあるよね。
「ンナイ村長の?」
魔力や魂魄、血液の関係で解毒剤を作っている?
「血を一滴欲しいのですが」
「変態!」
お、お姉ちゃん!
「そちらの女性も」
「麗乱、一滴だ」
「やだ、お父さん、私怖い」
だよね、分かるよお姉ちゃん。
「……俺の血では駄目か?父親だが、それに毒無効だぞ?」
「特殊な解毒です。女性系統の血液でないと、この方法は使えません。それに、あなたは、今は毒無効ですが、新しい強い毒は有効ですよ。おそらくあなたがどく無効になったのは十数年前からでしょう?もうそろそろ毒無効の期間が切れます。気をつけた方がいいです」
く、詳しい!この人について勉強したら、凄い薬師になれるかも!ニトお父さんみたい!
「詳しいな?事実か?」
「王都には色々な情報が集まります。この治療法も他では実施していない最先端薬術の一つです」
ああ、この人、ニトお父さんと話が合いそう!
ニトお父さんもこの人、好きになりそうだな。
そう思った瞬間、とても悲しくなった。
弱気は駄目なのだが、やはり悲しくなってしまう。
ああ、前世の記憶は大事なのだが、邪魔だ!
いやニトお父さんが邪魔なのではない。記憶が邪魔なのだ!
「あ、脈拍が落ちてきた、ではあなたの血を一滴もらいますよ?」
「シン」
「分かったよ、父さん。で、どうやって血を取るのだ?」
「採血は耳たぶをちょっと傷つけて取ります」
「み、耳たぶっ!?」
「はい」
「変態!」
お姉ちゃん……。
カチッ。
ガラスの音と思うんだけどなあ。
「ちょっとチクッとしたけど、もういいの?」
「はい……あ!」
?
「大事なこと、言い忘れていました!」
「え?え?え?な?なに?なに!?」
焦りまくるお姉ちゃん。
何だろう、大事なこと?
「この方法で解毒すると、あなたと、この子に親子、母親と子供に近い感情が稀に生じます。構いませんか?」
「構わんよ?明季好きだし。明季が元気になるなら、それでいい」
!
おおおおおお姉ちゃん!即答!?
「多分、明季も私のこと、好きだと思う。こいつ、私にしかペロペロしないし」
「「「ペロペロ?」」」
「あ、今の無し、忘れてくれ。麗乱、喋るなよ?」
「薬師見習いよ、一ついいか?親子だと?何故、そのような現象が起きる?」
あ、お父さん、いい質問!
「血の繋がりが出来るからです」
「姉妹だ、血の繋がりは元々ある」
「それは横の繋がりです。親子は縦の繋がりなのです。このお姉さんの血を元に、解毒再生剤を作るので再生された細胞は、今までの細胞プラスお姉さんの細胞です。この細胞があなたの魔力に反応します。これが親子関係に近いのです。ただし、この現象が起きるのは最初の段階だけです。後は希薄されます」
「そのような研究を日々、行っているのか?」
「はい、これは一応腐敗、溶解系統の猛毒についての技術です」
喋りながら作業していたらしく、解毒剤はあっさりと完成する。
「完成しました、これです」
「早いな?」
「一つご協力を、いいですか?」
「幾つでもいいぞ?」
「今から、この子の毒を私の腕に付けます」
「「「「!!」」」」
「この猛毒は即効性なのでで、直ぐに全身に回ります。そこでこの解毒剤を直ぐに塗布しますが、効果が無かった場合、私の腕を切り落としてください。まだ死にたくないので」
「な、何を言う!?」
「では、お願いします」
止める間もなく、私の傷口に腕を着けたようである。
「ぐわっ」
ひ、悲鳴が!
何なの!?この学生さん!臨床実験なら、横にいる獣人さんでしょう!?身体再生能力半端じゃないのよ?解毒はできても、再生するの?人族の腕!?
ペタペタ。
ジュウウウウウウッ。
「げ、解毒は出来たようですね、あ、再生までは無理か」
「ば、ば、馬鹿者!そのような実験は私でしろ!」
本気で怒鳴る、お父さん。
「愚か者!両親から貰った身体、粗末にするでない!」
切れるシンお姉さん。
「痛い?痛い?ああ、血がっ!ど、どうすればっ!!」
涙声で叫ぶレイランお姉さん。
「な、変わり者だろ?」
いたの?紹介してくれた獣人さん。
「大丈夫ですよ、私は優秀な薬師見習いですから」
「いや、優秀とは言えぬぞ?」
そうだね、お父さん。私もそう思う。
それから臨床例2が私で3がミミ姉さんだった。
ミミ姉さんは直ぐに回復したが、私は重傷だった。
意識は戻ったが、動けないのだ。
詳しく書くとグロテスク(R15)なので省くが、筋肉や骨が溶解し、薬師見習いさんが溶着を分離しながらの回復なのだ。
氷獣の新しい毒は、毒というより溶解液だな。
分離は薬師見習いさんの自慢のナイフで行われた。
えーっと、とても痛かったとだけ記しておこう。
このナイフは特殊なナイフだそうで、ミスリル製とのこと。
お父さんはこれを見て、ミスリル製の武器には注意だな、と呟いた。
なんせ獣人族の回復力を上回る、殺傷力なのだ。
瞼はまだくっついているので見えないが、声は出せるようになったので、薬師見習いさんと話してみる。
「あの……薬師さん」
「見習いだよ、なんだい?」
「臭くないですか?」
「気にせず休みなさい」
そうは言われても!
臭いとか言われたら、立ち直れないかも……。
「私、治ります?」
「治るよ、声も出せるようになったし、音も聞こえるでしょう?もう暫くすると目も見えるようになる。動き回るのは暫く無理だけどね」
「本当?……うれしいです……けど」
「けど?心配事かい?」
「傷跡、残ります?」
「!」
残るのかな?
「大丈夫、残らないよ。獣人族の再生能力は凄い、羨ましいほどだよ」
後で聞いたけど、目を最初に治すと、再生途中の傷跡を見て凄いショックを受けると思い、目の治療は最後にした、そうなのだ
「薬師見習いではなく、もう薬師では?」
「薬師かぁ、そうだといいね、あ!」
あ?あ、何?何ですか?あって!?
「時期、満月だよ。きっと思っていたより、早く治るよ」
そうだ!満月!我ら獣人族の守護神!
「!」
「どうしたの?」
何か近づいて来る。
何だろう?
氷獣ではない。
これは?
……ゴブゴブ……。
!?
ゴブリンが近くにいる!!
……。
?
聞き違いか?いや、確かに声が?
ゴブゴブ。
ほら!確かにいる?
どこ!?どこ!!
次回投稿は2022/12/24の予定です。
サブタイトルは 駆けつけた者達 です。