【第9話】 獣人族の村
早めの投稿となりました。
誤字脱字はご容赦を。
(獣人族は個体差がすごいのだ)
(同じ、兄弟姉妹でも?)
(そうだ)
ミミ姉さんが答える。
(レイランからは、どんな話を聞いている?)
(そんなに詳しくは……)
(まず、明季は獣人族の獣に近い、産まれて直ぐに歩くし、喋る。母さんのお腹の中で色々なことを聞いて、それを理解していたからだろう。それに成長も早いしな。逆にヒューとかミューは同じ獣人族だが人族に近い。あの子達は成長が遅いし、学習しないと言葉を覚えない、喋れない)
(ふん、ふん)
(あと、見て分かることだが、アイは虎と人の中間の姿をしている、耳の位置とか形が人族と違うだろ?あと尻尾も、あの姿が自然体で楽なのだ。私は人の姿が楽だから人の姿をしている。明季は無意識に耳の位置が移動しているぞ)
(え?そうなんだ!まだ子供だから安定していないのかな?)
なるほど、個体差があるのは分かった。
確かに私は意識して獣化したり、人の形態に戻ったりするのが上手くいかない、苦手だ。
(共通しているところは、我々はとにかく頑丈だ。老いにくく、死ににくい、そして基本、満月期になると、とんでもない力を発揮する。鉄板を紙のようにさくことが出来る。遅老長寿で暑さ寒さに強い、全天候型だ。。)
(ち、ちろう?)
(お、おい!?性の知識どこで仕入れた?)
「わんわん」
(お姉さま?何のことですか?)
(ごまかすな!それと、あと月だ)
(月?)
(生活が月に支配されている。基本、満月時が一番強い、不死といってもいい。逆に新月時は弱い)
(どのくらい弱いの?)
(満月時に比較して、だがな、まあ弱いといっても簡単には死なんし、怪我をしても回復は早い。人族にしてみれば新月時期でも私達は超人に見えるだろうな)
チートではないか。
(実はこれにも個体差がある。私は新月満月関係無しに猫形態になれるし、月に関係なく日々絶好調だ、さらに満月、新月時は超絶好調になる)
うわ、なにそれ?
(はははっ明季、多分、お前も同じだぞ)
え?私も?自然に人の形になったけど、まだ意識して獣化は出来ないよ。
(このサイクルは普通、他者には明かさないし、聞かない、ことにもなっている。皆の約束だ、覚えておけよ)
(はい)
獣人族の常識ってこと?聞かない、話さない、か、だろうね、弱点だし。
(あとは強い者に従う傾向がある。それに臭覚、聴覚が異常に発達している。明季は性知識があるようだから伝えるが、我々獣人族は性が強い)
(は、はい?)
な、なにそれ?
(性欲を含む性格、個性、が強いと言った方がいいかな、子作りも好きだが、子育ても大好きで、食べることやお酒も大好きなのだ)
うわ、大好きのパレード?でも子育て大好きって、子供を大事にする?
(この村は一夫一婦制だが、一夫多妻制、一妻多夫制の村もある)
(村単位で、夫婦制度が違うってこと?)
(そうだ。ん?どうした?)
(強い者に従う傾向があるのなら、その一夫、一妻は強者?)
(……そうだ、かなり強い)
(ミミ姉さんよりも?)
さて、なんと答える?
(……互角、と言っておこう)
ミミ姉さんは、とんでもなく強い、と。
(その夫婦制度はこの土地と関係があるの?)
(お、いい質問だ。この土地は限られた者しか住めない。人族、オーク、ゴブリン、エルフ、こいつらは一冬越せない、寒さに死んでしまう。ドワーフは住めるが、永住者はいない)
さて、そんな土地になぜ住んでいる?それもかなりの個体数がいるみたいだけど?
(より強い子孫を残さないと、この地では生きていけない。だから色々な村がある。そして獣人族は、この地で、やらなければいけない使命がある)
使命?
(氷獣と聞いたろう?)
こくこく。
私は頷く。
(彼奴らは、氷属性の魔獣で危険な存在なのだ。奴等は氷の世界を広げようと群れを作り、南下してくる。それを退治し、南下を阻止するのが私達の役目なんだ)
?
誰が命令したのだろう?
(これは精霊が示した役目、と言われている。まあ討伐すると金にもなるしな)
お金?お金の概念がある!?
まあ元帥さん達は金貨を持ってはいたけど、流通している?
(氷獣を倒すと、群れのリーダークラスやデカいヤツは死体を残さず、魔力還元する。この時、鱗と魔石が残るんだ。これが金になる。特に魔石は貴重でね、人族が法外の値段で買い取る。群れの小型や中型の氷獣は、討伐して角を持っていくと換金してくれる)
?
何かに似ている?これ、まるでラグナルではないか!?
でも、魔石を?使い道、何かあったかしら?
(魔石を変換器に取り付け、人族が装着すると、彼らは私達並に強くなるんだ)
!
(凄い!)
なんだその科学力?魔科学力とでも言おうか?そんなの初耳だぞ!?
(まあ、魔石の魔力が切れたら、それまでだが、相性がいい魔石と巡りあった人族は脅威だ)
その人族に魔石を販売していると?
(私達が装着したらどうなるの?)
(面白い発想だな、そんなに強くなってどうする?強さの先は破滅だぞ?)
「!」
(残念ながら、私達が装着しても変化、無し、なのだ魔石と相性が好いのは人族だけだ)
なんか、研究の余地ありそうだな。
(氷獣を倒すのは大変なの?)
ラグナルは大変だった。この氷獣とやらはどうなのだろう?
私の抜き、通用するのかな?
ん?
五十戸ほどある獣人の村、その村の住人達が忙しく動き出した。
倉庫から食べ物やら、お酒の瓶などを持ち出している。
(場所を変えよう、騒がしくなってきたな。ここにいると、今夜の会議の手伝いを頼まれそうだ。付いて来れる?)
ミミ姉さんは、ポンと軽く屋根を蹴り、となりの屋根に移り更に軽く飛び上がり、垣根の外に、村の外に出た。
さて、出来るかな?
真似をしてみる。
身体を沈めて……よっと。
ぎりぎり、辛うじて隣の屋根に着地。
屋根は、雪は落としてあるが、氷が張っていてツルツルである。
わ、わ、わっ!
バ!バランスが!脚が滑る!よくない!これでは付いていくのは難しいかな?
ジャンプをするけど、力加減が分からない。
ゴブリン感覚でジャンプしても、それ程距離がでない!
試してみるか?
「アクセス」
イメージを膨らませ『ゴブリン』に接続する状況を思い描く。
魔法はイメージだ。
私が使いやすい環境をイメージする。
情報、通信、巨大な記憶装置。
そこにある私のゴブリンとしての記憶、経験、技の数々。
これを今の私にダウンロードするイメージ。
あ、許容量不足でちょっとしかダウンロードできない。
うっ……まあ、そう簡単にはいかないか。
ん?知識は全部ダウンロード出来るぞ?
ちなみにネクロマンサーはダウンロード出来るかしら?
こっちは魔力不足か。
え?驚くほど魔力が足りない!
こうしてみると、ブーステッドフェアリーは優秀だ。
魔族チクリは、とんでもない技術者ということか。
やったことは許されることではないけど。
「お?動きが好くなったな?骨を摑んだか?」
単なるチートです。
ぽーんと雪原をジャンプしてみる。
獣人族は身体能力が凄いな、耐久性も半端ない感じだ。
身体を動かせば動かすほど、柔軟性が増していく!
今の私は、ゴブリンより大きいから、感覚がちょっとズレるな。
これは訓練した方がいいかも。
着いたところは小高い丘だった。
村は、遙か前方に小さく見える。
私はゼーゼーと呼吸を乱していた。
「お、お姉ちゃん!は、早すぎっ!」
さ、酸素が足りん!こ、この感覚、亜紀の時味わったヤツ!
あの体育教師!
私が体力ないの知っていて、無理矢理校庭走らされた時の感覚!
「まさか、付いてこれるとは。凄いな明季、産まれて一年も経っていないのに」
へ、変なこと試さないで!お姉ちゃん!
次回投稿は2022/12/17の予定です。
サブタイトルは 氷獣 です。