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The Lily 前世の記憶は邪魔である  作者: MAYAKO
二章

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【第6話】 魔力は金狼級だったのに

「これは、どうしたことじゃ!?」

「こっちが聞きたい、この魔力は何だ?婆様、何か知っているか?」

「アラン」

「はい、お婆さま、何でしょう?」

「語り部を呼んで来るのじゃ。要件を聞かれたら、金狼の魔力を持った子が産まれた、と言え!」


 アランお兄ちゃん、走りっぱなし?なんかごめんなさい、走らせて。


「ラン、大丈夫か?」


 流石にお父さん、心配そうである。

 この人が私のお父さん。

 第一印象、弾丸筋肉。戦艦みたいな人だ。


「はい、大事ありません。それどころか、今までで一番楽でした」


 この人が私のお母さん。

 第一印象、妖艶スーパーモデル?

 ……え?私、この人から産まれたの?

 将来、こんなに乳デカくなるの?


 あ、ゴブリン男子の意識が残っている!

 おっぱいから目が離せない!

 いや待て、私、どっちだ?

 男の子?女の子?


「そ、そうなのか?苦しそうであったが?お産は耐えられる痛みではないと聞くが?」

「子のため、貴方のため、私のため、命のためです。それに止めようもありませんし」


 そう言って、お母さんは笑った。

 その笑顔は眩しかった。

 お母さんは格好いい。

 お母さんは凄い、そう思った。


 このお母さんで三人目だ。ゴブリンお母さんも強く優しかった。

 最初のお母さんは何を思っていたのだろう。


「オヤジ、この魔力どうにかならんのか!!」

「赤子に魔力制御は無理だろう、なに暫くすると収まるさ」


 お父さんとお母さんは二人で、二人だけの世界を作っているようだが、周囲は大変である。


 私は魔力の制御できず、巨大な狼と化した魔力は暴れ回っている。

 お家の屋根はもうない。周囲の家も壊れ始めているし、どうしよう?


 しかし、獣人さん達は動じなかった。


「これは元気な子供が産まれましたなぁ」

「おお、将来が楽しみじゃ」

「しかし季羅のところは何人目だ?九人?十人?」

「三女のミミの時も凄かったが、今回も凄いなぁ」

「誰か、語り部を呼んでこい」

「先程アランが走って行ったが?」

「満月の夜に、相応しい騒ぎじゃなぁ」


 ……どうしよう?


 そう思った瞬間、すっと暴れていた巨大な狼が消え始めた。

 それと同時に私の身体が変化し始めた。


 え?え?


 身体が魔力に包まれ、何かが私に干渉してきた。

 何だこの力?どこからか、流れてきている!?

 内側の魔力ではない、外から働きかけてくる力だ。


 あ、満月!


 空にぽっかりと浮かぶ月から、その力は流れてきていた。


「月の導きか?」


 何時しか、数十人の人達が集まっていた。ん?それ以上か?

 あれは犀?あっちは熊か?色々な動物が集まってきたぞ?


「まさか、産まれて間もないのに?」


 これ、みんな獣人族?


「導きは10日程経ってからだろう?」

「あの、狼に獣化するのか?」


 畏怖の波動だ。


「いや、霊体が狼でも、実体は何に変化するか分からんからのう」


 アランお兄ちゃんが連れてきた、超高齢らしきお婆ちゃんが、お母さんの横に立つ。

 この人が語り部だろうか?


「三女のミミは、実体が三毛猫だが、霊体は獅子だしな」


 え?

 ミミお姉さん、何それ?

 獅子?ライオン?無敵?反則では?

 泣き止んだ私はじっと満月を見つめる。

 吹飛んだ屋根の間から見える満月。


「澄んだ良い目じゃ、女の子か?」

「女の子です、名は明季」


 お母さんが、お婆ちゃんに告げる。

 あ、私、女の子だったのね。

 うううううれしいいいいいっ!!

 狼騒動で、性別、忘れていたよ。


 ざわめき出す周囲。

 周囲の人達は、私を恐れている?

 さっき産まれた、ちびちゃんだよ?


 あ、でもお父さんは……?


(もう獣化するのか?わんわんわんわんわんわんわん、わんわんであってくれ!)


 余程わんわん欲しかったのですね。

 あ、お父さんのイメージが!


 平原を疾走する二匹の狼!これは楽しそうだ!


(獣化する?月の導きよ、どうか私の夫の願い、かなえて下さい)


 お母さんの祈りの言葉が、静かに響く。

 お母さん、お父さんが大好き?


 そして、暴れ回っていた魔力が私を包む。

 あ、身体が溶ける?

 変化する?そんな感覚に襲われる。

 あ?あ!身体が解放されていく!


 これは獣化というよりも、こちらの姿が、本来の姿ではないのか?

 そう思わせる変化が、魂魄にあった。

 あ、まずい、まずい!お母さんの腕の中であんな巨大な狼になったら大変だ!

 何かが体内で組み変わっていく。

 私の知らないところで、私が変わっていく。


 遠吠えの衝動。

 漲るチカラ。

 疾走する開放感。

 そして、響めく周囲。


 ?


 感覚が人の感覚ではない!

 何これ?

 癖になりそうな充実感?

 バチバチと放電するようなチカラが、身体を駆け巡り続ける!


 あれ?周囲が沈黙?


 どうやら獣化とやらが、終わった様子。

 

 ん?


 お母さんと目が合う。

 あれ?

 私?大きくない?


 いやそれどころか、かなり小さい?


 ん?まだ赤ちゃんだから、当たり前か?

 しかし、この違和感は何だ?


「か、語り部よ、これは何だ?」


 え?お父さん?私、狼ではないの?

 思わず、お父さんに対して声が出る。


「アン、アン」


 な、なんだこの声!

 狼にしては可愛すぎないかっ!?


「これは……」


 お母さんの目、うるうるである。

 あ、お父さんの目も、うるうるだ?

 え?わ、私?何?どうなったの?


「アン、アン!」


「よしよし、いい子」


 お母さんがうるうるの目で、優しく撫でる。

 ん、心地よい。


 語り部さまと目が合う。

 あ、語り部さまの目もうるうるに!


「これは……おそらく……ポメじゃ」


 ぽめ?

 ポメ?


 語り部さまの目をじっと見る。

 産まれてすぐなのに、視力がいいのはゴブリン譲りか?

 その語り部さまの瞳に映る姿は?


 ?


 犬?


 あ、ポメラニアンだ。

 かわいい。


 !


 あれ?

 ええええええええええっ!!


 あれがわたしっ!?


 狼女ではなく、ポメ少女の誕生であった。

次回投稿は2022/12/11の予定です。

サブタイトルは どうして、なんで、こうなった? です。

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