【第2話】 新しい家族
早めの投稿になりました。
賑やかな声。
わあ、楽しそう!
この声、どこから?
こっちだ!
暖かい何かを感じる。
私はその暖かさに導かれ、そこに落ち着いた。
そこは暖かい闇?不思議な場所なのだ。
暖かい光の闇だろうか?
う~ん、表現が難しいな。
賑やかな楽しい場所。
「肉!お肉!」
「お姉ちゃん!お野菜も食べないと!」
「草なんか食えるか!おにくぅ~!」
「お母さん!お姉ちゃんが!」
「ミュー、苺とって」
「はい、お母しゃん」
「肉、うめぇ~」
「こら!バランスよく食べなさい!ほら、こぼしてる!ちゃんとお箸使って!」
ん?お箸のある文化?
しかし暗いな、暗くて何も見えない、声だけだ。
う~眠い。
「お姉ちゃん、うるさい!お母さんみたい」
「ミュー、苺」
「はいはい、どうど。お母しゃん、お肉食びないの?」
「あ、私のお肉!てっめェ~弟のくせに生意気だぞ!」
「もぐもぐ」
焼肉かしら?
「アイ姉さん、言葉使いもう少し優しく……」
「あん?何か言ったか?レイラン?」
「……いえ、何も……お父さん、アイ姉さんが……」
……何人いるの?
魔力感知、使えるかな?
少しだけ魔力を使って、周囲に感応する。
「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」
え?
一瞬で静まる周囲
え?
「シン、周囲は?」
「気配無しよ」
「ケイン、どうだ?ミミはヒュー、ミューを」
「ヒュー、ミューこっち、おいで」
「え~お肉ぅ」
「いいから、こっちきな」
「周りに異常はないよ、父さん」
「誰だ?我が家を探ろうなど、命知らずは?」
「アイ姉さん、物騒なこと言わないで、怖いわ」
「あん、苺おいしいぃ」
「……」
「どした?シン姉?」
「母さん、苺、おいしい?」
「ええ、美味しいわ」
「お肉は?」
「最近、お肉はちょっと、食欲無くて」
「え?母さんが?」
うそだろ、と呟く小さな声。
「母さん、苺、酸っぱくない?」
「そこがいいのよ、酸っぱいの!」
「おい、シン?お父さんを、獣を見るような目で見てはいけない」
「まさか……」
「……呆れた」
「まさかとは何だ?アイ。呆れたとは?ミミ?」
「レイラン、お母さんのお腹、見て」
「え?どうして?」
「いいから見なさい!」
「は、はい」
「どう?レイラン?」
あ、暖かい魔力が!
その暖かい魔力は、私をそっと、なでなでした。
なんて優しい魔力!
「キラキラしている。赤ちゃんいるよ」
「!!!!!!!」
「やっぱり!」
「えええええ?」
「おい、オヤジ、十人目だぞ?」
「なに考えているんだよ!」
「麗乱、どっちだ?」
「え?とうさん?まだ男の子か女の子か、分からないよう」
「違うよレイラン、そっちじゃない。オヤジが知りたいのはネコかイヌだ」
「え?そうなのアラン兄さん?」
「だろ?オヤジ?でも、わんわんならケインがいるじゃん」
「確かに、ケインは格好いいわんわんだが、鳥だ」
「俺、格好いい?鳥だけど」
「ケイン兄さんは飛べるし、格好いいと思う」
「ありがとう、レイラン。お兄ちゃん、うれしいよ」
まて、まって?この家族?何?飛べる?わんわん?犬と猫?
何言っているの?
どんな家族?
怖いんですけど!?
こぽこぽ……あ、この感覚、覚えがある。
お母さんだ、お母さんのお腹の中だ!
え?
私、ここの子供になるの!?
「え?私、妊娠しているの?」
「うん、お腹、キラキラしているよ」
「お腹の中で……魔力感知!?……凄い魔力の持ち主じゃないのか?」
「そうだね、アラン。先程の魔力感知はこの子だろう。どう思う、レイラン?」
「私もそう思う」
「……麗乱、どっちだ?」
「あなた、レイランを追い詰めないで、レイランは私達みたいにガサツじゃないのよ?」
お母さんがキツく言う。
「ごめんなさい、父さん分からないわ」
あ、なんかシュンとした波動だ。
「オヤジ、大体ヒューやミューの時も、分からなかっただろう?」
「……そうだな」
「あ、お肉っ!?」
「うまうま……ごちそうさん」
「あ、てめえミン!」
「あああ!お肉がっ!」
賑やかな家族だなぁ私が十人目?
どんな家族なのだろう?
私の新しい家族。
リュートお母さん、ニトお父さん。
私、嬉しいけど悲しい。
前世の記憶忘れたくないけど、忘れたい。
思い出は大切だ。いい思い出に限るけど。
忘れたいと思うのは、私を宿してくれたお母さんに、悪いと思うからだ。
私としては、お母さんを比べるのがイヤなのだ。
例えば、私が赤ちゃんを産むとして、他に大好きなお母さんの記憶があるとしたらショックだし辛い。
私だってお母さんだよ!と。
私はいいお母さんになりたいけど、過去が過去だし、自信が無い。
割り切れる人も、いるかもしれないけど、私は割り切れない。
暗闇の風景は、一瞬にして草原に変わる。
ん?あれ?霊夢かな?
誰だろう?誰かがコンタクトしてきた。
凄い魔法だぞ、これ。相手に夢を見せるなんて!
それにしても、広い!
でも、超空間ではないな、魔力がそこまで満ちていない?
吹き抜ける風、揺れる草花。
空の一点、輝く太陽。
そして矢のように走る獣、チーターだ!
青い、吸い込まれそうな空には、巨大な鳥が!
あれは?
鷲?かしら?
チーターは獲物を追っているのだろうか?
え?違う!追われている!?
追っているのは……えっ!?
三毛猫だ!
小さい三毛猫が、全速力でチーターを追っている!
なんて変な夢かしら。
低木にはジャガーだろうか?それとも、ピューマ?
枝にもたれて、周囲を見ている。
虎と豹が数匹、一緒に寝ている?
あ、大きな狼!
それは銀色の大きな狼。
大きいなぁ、熊みたい。
その左右には大きな牙を持つ虎?ああ、あれはサーベルタイガー、剣歯虎と耳に特徴があるカラカルだ。カラカル、綺麗!
ん?カラカルが?
ち、近づいてくる!?
こ、こ、こっちに来る!?
こ、こ、怖いよ!
綺麗だけど、私、ご飯?
(今日は、赤ちゃん)
え?
話し掛けてきた!?
次回投稿は2022/12/03の予定です。
サブタイトルは 待っている人達 です。




