【第106話】 ゴブリン、ラストバトル3
サブタイトル ゴブリン、ラストバトル3 になりました。
(飛龍隊残り全機、首都へ!到着後スケルトンの工作部隊を召喚、粒の兵器の無効化を)
即、コロ隊長が反応する。
(阿騎、ここはどうする?お前達だけで押さえられるのか?スケルトンは凄い数だが?)
(元帥さんもいる、粒の兵器の場所も分かった、早く首都へ)
そしてメイドンと目が合う。
「ゴブ、メイドン!飛龍隊と熱気球を向わせたゴブ。それでも首都防衛の戦力が足りないゴブ」
「……」
群がる魔獣を倒しながら、魔木を目指すメイドンとお兄ちゃんと私。
「ゴブ、メイドン、お願い!」
メイドンは分かっているはず。
お兄ちゃんが向えば首都は大丈夫だと。
魔木は私かメイドンのOVERKILLでなければ倒せない、私達はここを動けない。
「……」
しかしメイドンはお兄ちゃんから離れられない。
お兄ちゃんが暴走したら、魔王化するからだ。完全に魔王になってしまうと、メイドンでは倒せない。
勇者の登場となる。勇者と魔王の戦いはどうなるか予想できないという。
世界の大半を巻き込み破壊するか、一瞬で雌雄が決まるか。
(あと鼓動50程で魔海獣隊が青3番に追いつく、合計300の数だ。多くはないが、お前達の基地を破壊した、汚染された部隊だ。どうだ?お前が向えば駆逐できる数だぞ。気球や飛龍も頑張っているようだが?)
魔族チクリ、笑っている?
汚染はドライアド・トルクさまにお願いすれば、時間は掛かるが浄化出来る。
(阿騎!)
ん?エルフさん?
(交戦中だ!)
え?
(聞こえるか!)
え?
(エ、エルフさん!)
(ん、つながったか?幽霊船に向う途中、人族の船が攻撃してきた)
(人族の?何隻?)
(3隻だ!おそらく不通り島からの船だ。魔獣を乗せて、大陸に向っている。おばばさまが言うには首都を目指している!今1隻は沈めたが、2隻は……)
ん?繋がりが?切れた!
(エルフさん!?)
「ゴブ、メイドン、お兄ちゃん!人族の船が首都に向っているゴブ、2隻ゴブ」
お兄ちゃんと目が合う。
(お前やサイザン、メイドンなら間に合うぞ?どう選択する?魔木を放置するか?こいつは粒の兵器より危険な存在だぞ?倒すなら今だ。ほら生れ始めたぞ、我とドライアドの子供達だ!)
大地が盛り上がり巨大な根が毒蛇のようにのたうつ。
発達し始めた根上がりは、その中に金属のボールのような物を包み込んでいる。
あれが粒の兵器か?大きいな、直径5m?
すると、その根から瘤が発生し、瘤はメキメキと成長、人の形をとり始める。
(成長させるな!)
スケルトン達が一斉に刈り込む。
(根を切り、焼き払え!)
熟練の戦士達の連携が光る。
しかし、召喚したスケルトン達は時間制限がある。
魔獣は数を減らしている、人族のドーム基地も沈黙して活動していない。
メイドンと目が合う。
近くの魔獣が吹飛ぶ。
お兄ちゃんの槍だ。
ここはかなり強い戦士でないと、立っていられない戦場だ。
まず、敵の姿、攻撃が見えない。
「ゴブゴブ、メイドン!お父さんやお母さん達が死んでしまったら、それこそお兄ちゃん、暴走するゴブ!」
「サイザンさま、首都へ向ってくださいデス」
メイドンの周囲にボトボトと、折れた槍のような木片が落ちる。
「ゴブ?」
「ここはメイドンと阿騎さまにお任せデス。リュートさまとニトさまがピンチデス」
一瞬、考えるお兄ちゃん。
説明を急ぐ私。
その間も私達の動きは止まらず、敵を倒し、魔木の根を刈る。
「ゴブ、首都の敵を倒したら。直ぐに戻ってくるゴブ、メイドン、ちゃんと壊れず待っているゴブ」
「いえ、サイザンさま、メイドンが魔木を倒し、応援に行きますデス」
二人はこうして別れた。
「ゴブ、メイドン……」
「アキ、ベストの判断デス」
(阿騎くん、幽霊船が時間たい、今から全弾打ち尽くす、ちょっと避けときなっせ)
(え?元帥さん!粒の兵器が!)
(粒の兵器は魔木が吸収しとる、あの金属の球体は空たい、工作兵が調べたとよ)
「ゴブ、メイドン、船から一斉……」
メイドンはひょい、と私を軽々と抱き上げ、遙か上空にジャンプする。
海より虹のような光が幾つも訪れる。
そして、もの凄い光の渦が、魔木を包む。
その威力は、周囲のドーム基地を悉く破壊し、魔木を焼き尽くす。
「アキ、魔木の再生が速いデス」
上空でふわり、と待機しているメイドン。
飛べるの?メイドン?いや、ゆっくりとだが落下している?
ん?
!
「ゴブ!エノン!?」
(ごめんなさい、ウチ阿騎くんが心配で残った)
(エノン!ここは危ない!速く離れて!)
(え?)
魔木からは絶えず高速で、棘らしき物が飛ばされている。
私やメイドン、スケルトンさん達は苦もなく躱しているが、飛龍隊で躱せるのはコロ隊長くらいだ。
翼がバキンと音を立て、フレームが曲がる。
「ゴブ!?え?何!?」
エノンは棘を捕らえることができない。
まずい!布が破れないのだ!
この場合、棘が布を貫通し、破れれば素直に落下するだけだ。
予備の傘を地上ギリギリで使い、風魔法でバランスをとればいいのだが、破れない布は次々と棘を包み、エノンを遙か後方へ飛ばした。
格好の的だ!
「ゴブッ!!メイドン!」
メイドンは私をエノン目掛けて投げ、更に盾となって魔木からの攻撃を防ぐ。
空中で杖を使い、飛んでくる棘を打ち落とし、氷の魔法と風の魔法で足場を作りエノンを目指す。
間に合わないっ!エノン!
次々に襲ってくる棘に、打ち抜かれるエノン。
私の目の前でボロボロになり、落ちていく。
捕まえて、地上に降りた時には、魔力還元が始まっていた。
(阿騎くん、ごめんなさい)
弱々しい思念が伝わってくる。
(謝るのはこっちだ!私がちゃんと説明していれば……)
(なぜ超空間を使わない?)
魔族チクリ!
うるさい!黙れ!
(その個体、メスだろう?ならば助かる可能性がある)
(め……エノンをそんな風に言うなっ!)
(規定値を超える強い個体を体内に宿せば、緊急回避プログラムが作動する。そうなるように私が作った)
何を言っている?
(エノンの魔力では超空間に行けない)
(お前が、連れて行けばいいであろう?)
出来るならしている!黙れ魔族!
あ。
「どうだ?連れてきてやったぞ?」
目の前に広がる日本庭園。
亀さんも鶴さん夫婦も気配がある。
「ねさま、大丈夫?」
ルカトナちゃん……。
「何故ここに?魔族チクリ」
エノンはゴブリンのままで、おばばさまと違い、容姿は変わっていない。
魔力の量も力も足りないエノンはここでは動くことすら出来ない。
が、魔力還元は地上ほど速くない、ゆっくりである。
「哀れだな、力のない者は、動くことも出来ないのか?」
じろり、と魔族チクリを睨む。
「我がここに存在できるのは、亀か鶴、どちらかが認めているからだ。そうでなければ、ここへは近づくことも出来ない、まあそう睨むなよ、ホルダー阿騎」
「私になにをさせる気だ?実験か?」
「その通り」
「エノンは渡さない」
「違う、お前はここがどのような空間か、知らないのだろう?単なる夢の世界ではないぞ?この超空間は雛形なのだ。ここで起きたことは現実世界に反映される、分かるか?お前の修行がいい例だ、ここでの思いや行動は、現実世界に反映されるのだぞ」
ポチャン。
「ふん、亀よ、今回は止めないのだな?では話を進めるぞ、ここは高次元の存在が星々や世界を作り出す場所の雛形だ。奴等はここで意思を与え合うのだ」
「……何を言っている?魔族チクリ?」
「女性原理を内包した男性原理と、男性原理を内包した女性原理が互いに意思を分け合い、思いを繋いで世界を作るのだ、ここは聖誕地と言われる創造の空間の雛形だぞ」
次回投稿は2022/11/27お昼の予定です。
サブタイトルは 私の死 から あるゴブリンの死 に変更しました。