【第104話】 ゴブリン、ラストバトル1
「ゴブ、では遠慮なく使わせてもらうゴブ、ただし、飛龍隊が助けた命、進んで散らすことは許さないゴブ」
「!」
本音だけど、どう?
私だって今回の戦い、生き残れるか分からないけどね。
元帥さんも忠告しているし。
「分かりました、ホルダー阿騎、皆に伝えます。では」
空に舞うハーピード・ナ。
革の鎧で、飛行の邪魔にならないように、ツーピースみたいになっている。
「ゴビィ!痛い痛いゴブウウ!耳!耳!美観お姉さん!」
「ゴブ、ほんとにこいつは!今ド・ナさんが舞い上がるとき、スカートの中覗いたでしょうゴブゴブ!」
「ゴブ!覗いてないゴブ!そんなことしないゴブ!」
「嘘ゴブ!見たゴブ!」
いや、だって突然ひらりと、飛び上がるし、風も吹いているし、覗いてはいないけど、見たか?と聞かれれば、見ました、になると思う。
偶然見えたのです!本当です!信じてくださいっ!
覗きなんてしません!
そんなことしたら嫌われるじゃないですか!
……ああ、我ながら歯切れが悪いな。
(ドライアド2名が浄化を始めたぞ)
(わかったコロさん。まずバトルシップとスケルトンさん達の召喚を!それから魔昆虫をおさえて)
上空から海岸を見下ろす。
巨大なドームが7つもある。
その内の一つは魔木の根に覆われ、異様なオブジェと化している。
(阿騎、メイドンが一番小さい中央ドームを吹飛ばしてだって)
(分かった)
(それが終わったら次は、魔木の根に山茶花を!)
「ゴブ、美観お姉さん、玲門お姉さん、いいゴブ?中央一番小さなドームゴブ」
「「ゴブ、わかった」」
今、この熱気球には私を含め5名が搭乗している。
私、ボンバーズ、ノイモイさんとトアンの姉、トモイお姉さん。
そこで目のいいトモイお姉さんが不吉なことを口走る。
「ゴブ、海がおかしいゴブ」
「ゴブ?」
「ゴブゴブおい、阿騎まずいぞ、ゴブ」
「ゴブ?ど、どうしたのトモイお姉さん?何が見えたのゴブゴブ?」
「ゴブ、魔海獣の背中にゴブリンが数十匹乗って、海上移動しているゴブ凄い群れゴブ」
「ゴブ!?」
「なんで、ここにあの戦力を投入しないゴブ?行き先は………あの方向は?私達の海岸基地ゴブ!」
何でそんなに大量にゴブリンや魔獣がいるのだ?生産工場でもあるの!?多過ぎだ!それに私には見えないぞ?
「変だゴブ、黒い霧みたいな魔力感知しにくいマント?のような霧のようなモノに覆われているゴブ」
黒い霧を改良した?
開発努力は凄いな。
「ゴブ阿騎くん?」
部隊を二つに分けるか?しかし数が圧倒的に数が足りない!
兵站はどうしているのだ?まさか使い捨てか?魔昆虫同様、自滅、自壊する兵器?
(ドームを破壊しない限り、魔ゴブリンは生産され続けるぞ。彼奴らは皆殺しにしないと、どんどん強くなっていく。まあ我としては、サイザンと戦わせてみたいがな。ああ、メイドンでも、お前でもいいぞ、ホルダー阿騎)
(……魔族チクリ)
(培養液さえあれば、魔ゴブリンは大量生産が出来る。ゴブリンの細胞に我の魔細胞を憑依させ、その細胞を海水血液で満たす、成長すれば魔ゴブリンの出来上がりだ。あとは命令を電気信号で直接大脳に送り込むといい。そしてこいつらは、作戦終了と同時に自壊する、兵站はいらない、素晴らしい兵器と思わないか?)
(ゴブリンの細胞とあなたの細胞はどんどん培養されているのね?)
(そうだ我の細胞とゴブリンの細胞は相性がいい)
(それだけではないでしょう?エルフさんにも、ドワーフの王さまにも、あの島にいた妖精族全てにあなたの細胞を憑依させているはず)
(!)
(その細胞が命令をだしている。ただこの命令、複雑な命令は出来ない。故意にそう作ったのか、技術的に無理だったのかは分からないけど)
(……ホルダー阿騎、よくそこまで辿り着いたな?)
(その命令を出す細胞?を壊したのがメイドン)
(我の分身とも言える指令細胞を破壊すると、兵器のお前達は自壊するぞ)
(魔昆虫で使っているシステムね、多分あなたの細胞が3日ほどで死んでしまう設定だと思う)
(ではなぜ、お前達は死なない?)
魔族チクリは面白そうに言う。答え合わせを楽しんでいるのか?
(それは壊れた細胞を、メイドンがエルフさんの細胞で補ったからだ。だから私達の中に、視力、聴力が優れた者がいる、狩りが得意な者がいるのだ。私達はエルフさんの子供だよ)
(ははははっエルフは母か?では私は父親か?)
(父親は地牛博士。あなたから愛情は感じないわ、あなたの細胞、迷惑なんですけど?)
(地牛だと?忌々しい!我は地牛以上にお前達を愛しているぞ?)
(魔族が愛を語るの?あなたは兵器、使い捨ての道具として私達を利用しているだけよ)
(互いに利用し合うことを愛と言うのだ)
(あなたはそうでしょう、でも妖精さん達は違うみたいよ)
「ゴブ玲門お姉さん、山茶花発動お願いゴブ」
取敢えず魔族チクリは無視。
「……」
あ、美観お姉さん、睨んでいる?
ごめんなさい、二人で一つの魔法、片方だけにお願いしても駄目ですね。
「ゴブ美観お姉さん、お願いしますゴブゥ」
「任せとけゴブ、いくぞレー」
中央の一番小さいドーム基地が跡形もなく吹飛ぶ。
多分あれが培養液に関係する施設だ。
メイドンは一番に破壊をお願いしてきたから間違いない。
「ゴブ、次いくぞレー次はどこだ?」
「魔木の根ゴブ」
(コロ隊長、幽霊船とスケルトンの召喚は?)
(召喚できているぞ、攻撃に加わってもらった)
私の魔力は温存できている。皆のおかげだ。
(阿騎、海上に変な影が揺らめいて移動している、あの方向には俺達の船がある海岸だ)
(あの影は魔海獣で、背中に魔ゴブリンが大勢乗っている)
(!)
(飛龍隊を分けて向わせて、ハーピーさん達に協力してもらうといいかも、どう?)
(分かった、おばばさまに連絡しておく)
地上では人族の部隊とキング・オー率いる妖精族がぶつかり、戦いが始まった。
轟音と共に倒木する魔木、しかし再生が直ぐに……?
あれ?おや?再生が遅い?
ドライアド2名の力で、再生が遅いみたいだ。
明らかに弱体化している。
そこに次々と着弾する光の……球?
粉々に分解されていく魔木、これは?
あ魔木が収縮を始めた。
(どげんね?幽霊船の主砲は?光魔法の一種ばってん凄かろ?)
(はい、元帥さん、魔木は弱体化しています!)
これは、凄い!このままいけば分離もできるかも?
出来るならドライアドトルクさま、枯らしたくない。
(あと、こそこそと海ば渡りよる魔海獣ば見つけたとよ、届く限り砲撃ばするばってん、目測も魔力感知もすり抜ける厄介な奴等たい、なかなか当たらん。ドワーフの王さまん所に援軍ば送らんとまずかね)
援軍、飛龍隊の数名とハーピーさん達では間に合わない、魔海獣の群れなんて対抗できないよ。どうする?
次回投稿は2022/11/23の予定です。
サブタイトルは ゴブリン、ラストバトル2 です。