【第103話】 気がついたら海岸戦3
諸事情により、1時間ほど投稿が早まりました。
ドライアド・トルク一族。
おばばさまとルカトナちゃんの説明によると、簡易転生したのがトルク・モ・カさま。私がトルクちゃんと呼んでいる子で次女。
長女がス・ミさまで四女がユ・ミさま、そして魔木にされたのが三女ド・カさま。
まあ世界に4体しかいないドライアド。優しくて、山河、森林、草花の化身ならば妖精達の人気は絶大でしょうね。
あ。
今、世界が震えた?
私は周りをゆっくりと見渡す。
変化はない。なんだろう?今の感覚。
戦場に一陣の風が吹く。
タンポポ?
白い綿毛?小さな種?
どこからか飛んできたの?うわっ!次々に飛来してくる。
その中の一つに、あ、小さな女の子が種に摑まっている!?
女の子の種は大地に降りると、キラリと光って成長し、緑の髪の女性になった。
「お呼びですか?ホルダー阿騎?」
息を呑む周りの妖精達。
次は大地からツタのような植物が現れ、渦を作り始めた。
渦の中から巨大な双葉が芽吹くと、その葉に女性が座っている。
「魔木の件、伺いましょう」
妖精さん達、固まっている?
そして空からゆっくりと気球が降りてくる。
「この姿を晒すのか?」
悪態をつきながら着陸した気球から降りてきたのは、ナイダイさんに抱っこされたトルクちゃんこと、モ・カさまだ。
「トルクさま、なんというお姿に……」
言葉に詰まる、エルフの聖騎士さん達。
「簡易転生で記憶が殆ど無い、皆の者すまぬ、思い出せぬ」
「モ・カ、まだ魔の波動が残っていますね」
「ああ、ス・ミ姉様、あと2回ほど転生しないと、この魔の汚染は抜けないだろうな」
「それよりも魔木化したド・カ姉様をなんとかしないと」
そうですね、そして皆揃ったかな?
メイドンとお兄ちゃんもいて欲しかったけど。
このタイミングでいいかな?もっと早い方がよかったかな?
「ゴブ、ドライアド様、元帥さん、人族が粒の兵器を開発、使用するという情報があります、どう思われますかゴブゴブ?」
一番に反応したのはキング・オーだった。
「それは本当か?もし本当なら危険すぎる」
キング・オー、核兵器を知っている!?
「阿騎くん、どこからの情報ね?ほなこつなら星喚びが動く」
「モ・カとド・カが動けない今、粒の兵器の使用は困る、浄化が私達二人では追いつかない」
「規模はどれくらいか分かるね、阿騎くん」
「ゴブ、情報源は魔族です、規模までは分かりません」
元帥さんの左右の旗手達が意見を述べる。
「元帥閣下、小型でも大型でも使用したら大変なことに」
「菌糸算譜の指摘が当たりましたね」
「阿騎くん、実は菌糸算譜も指摘したとよ、開発、使用する可能性が高いと」
聖騎士の一人がキング・オーに尋ねる。
「キング・オー、粒の兵器とは?」
「古書にある兵器だ。物質の構成している粒をぶつけ合い、高熱を発するとある」
「はあ、高熱ですか?」
「余りの高熱に、生物は蒸発し、影しか残らないそうだ」
「!!」
「な、なんと……そのような兵器が?」
(お兄ちゃん、聞こえる?)
戦っているのかな?こっちに意識が向いていない。
(お兄ちゃん!メイドンに伝えてもらいたいことがあるの!)
駄目だ。
何か、お兄ちゃんの気を引くものあるかしら?
これならどうだろう?
(お兄ちゃん!エルフさんの秘密の黒子!)
(ん?どうした?阿騎?)
即答!?……ほんとに、男ってヤツは……私も男の子だけど。
(今どこ?)
(海岸の人族基地の近くだけど?)
(メイドンに伝えて、粒の兵器があるかも知れないって!)
(粒?分かった粒の兵器だね)
多分あるだろうな。
(阿騎、メイドンが反応あるって、3つあるって!)
なんかメイドン、キレれている!と言葉を続けるお兄ちゃん。
3基も!?完成しているのかな?
(完成間近で、破壊するなら今がいいって)
(分かった、お兄ちゃん!今からそっちに行くね)
「ゴブ、完成間近が3基あると、メイドンが言っているゴブ。今から破壊に行くゴブ。コロ隊長、激戦になる、最悪みんな魔力還元するかもゴブゴブ」
「ゴブ、ここのやつらは気に入らない、が、大地は隔てることなく受け入れてくれたなゴブゴブ。この大地で天に帰るのは悪くないゴブ」
「魔木の攻略もはっきりしないゴブ」
もどかしく私が問題を口にする。
ニヤリとする美観お姉さん。
「ゴブ、元帥さんとも話したが、魔木の回復より山茶花の発動が速い、これに海琴隊の幽霊船の主砲を使うと、分離が出来るかも知れないゴブ」
ならば問題は魔昆虫と海魔獣だ。
「キング・オー頼みがあるとばってん」
「なんなりと」
「まだ何も言うとらんよ?」
「古の英雄、その英雄は今でも世界を護っている。断るは無作法」
「キング・オー、あんたはオークの王さまじゃろ?即答してよかっか?」
「王よりも、戦士でありたいと願う者ですよ、元帥閣下」
「単騎でも参加すると?」
「御意」
「魔昆虫の討伐ば頼む、報酬は……そうね、こん旗ばやる。右と左どっちがよかね?」
「……いいのですか?」
「迷惑ね?」
「いえ、この上ない名誉です」
「なら任せたよ、成功報酬だけんね」
そう言って元帥さんは消える。
「ゴブ、阿騎、飛龍隊はいつでもいいぞゴブゴブ?」
「ゴブでは、サイザン、メイドンと合流して魔木、及び粒の兵器の無力化をゴブゴブ。私も熱気球で向うゴブ」
一斉に飛び立つ飛龍隊、圧巻である。
そして、ゆっくりと地上を離れ、遙か上空を目指す私達の熱気球。
(コロ隊長、到着次第元帥さんと幽霊船を召喚、一気に攻めます)
(分かった。しかし決め手に欠けるな)
(こちらの策が練り上がるまで待ってはくれないよ、メイドンが今、と言ったら今しかないんだと思う。逃したら取り返しがつかないよ)
(……ん?)
(どうしたのコロさん)
(ハーピーの一軍が付いてきている?)
(あ、本当だ!24名だよ)
私は遙か上空から数を確認する。
そのうちの一際大きい1名が上昇してくる。
そして編隊を組んできた。
「お邪魔してもいいかしら?」
ふわり、と熱気球の横に並ぶハーピーさん。
すかさずその胸に目が向う。
谷間が……!
バコン!
「ゴ……ガ、ゴブゥ……美観お姉さん、痛いですぅゴブゴブ」
「ゴブ、どうぞ、狭いところですがゴブゴブ」
玲門お姉さんが手招きをする。
すぅっと静かに、やや大きめのゴンドラに降り立つハーピーさん。
革の防具を身に纏っているのは、機動性重視だろうか?
「ホルダー阿騎、先日は危ないところを、ありがとうございました。私は紫隊のド・ナ、女王の命で同行させていただきます」
「ゴブ、いえ、でも助けたのは飛龍隊ですよゴブゴブ」
ハーピーさん助けているなんて、知らなかったし。
「はい、その飛龍隊の盾になれ、との命を受けております。私達は先日の人族の襲撃で滅ぶところでした、この命、どうかお使いください」
……重い、さて……なんと答える?
次回投稿は2022/11/20 お昼の予定です。
サブタイトルは ゴブリン、ラストバトル1 です。