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【第102話】 気がついたら海岸戦2

「元帥閣下」


 右側のスケルトンがぽつりと呟く。


「ん?ああ、まずは一勝たいね、おったい、頑張ったやろ?」

「ゴブッはい!大感謝です!私達だけでは……ゴブゴブ」

「気にしなさんな、阿騎達が嬉しかと、おったちも嬉しかとよ。ばってん次が問題たい」


 古代アトラ帝国の元帥の出現にざわめく周囲。

 自然と静まり、一同跪く。

 ん?ハーピーの女王さまとその側近?達は跪いていない?あとキング・オーも?

 一礼だけだ。


「お前ら失格、礼儀欠く、物事見る目も欠いている」


 静かに怒りを見せるドワーフの王さま。

 ん?ドワーフの王さま?誰に対して怒っている?

 周囲の者達に対して、更に怒気を吐く王さま。


「元帥閣下は阿騎の友人、阿騎の眷属。主、阿騎に合力するのは当たり前。お前達に合力したのではない。なぜ阿騎に礼をしない?どうもしない?礼をしたのはハーピー女王、キング・オー、ケンタウロス村長、3名、助けられた部隊の者達。小さなゴブリン、弱いゴブリン、ゴブリンだからと粗末に扱っている」


 見た目で判断されているのかな?

 私、ちっちゃいしね。

 固まる周囲の将校さん達。


「阿騎、こいつら、いない者として話を進める、我々だけの会議を進める」


 会議?でも王さま、立ち話って言ったじゃん。

 あ、目が怖い?ドワーフの王さま、かなり怒っている?


「ドワーフ王、すまんな、こいつらの不手際は私の不手際だ、王として情けない」


 ゴブリンだから、軽く扱っていたのね?

 見た目で判断と?

 先程、あれだけ皆戦って見せたのに?

 夜戦でも活躍したのに?

 一緒に戦ったのに?

 ゴブリン、市民権得ていない?


 なるほど、これで私が更に異常な力を振るうと、変に恐れられると?

 これを元帥さん達は警戒していたのだ。

 ゴブリンは、周りの妖精に比べて、あまりにも非力だ。

 だからゴブリン風情が、有り余る力を持つことを嫌う、これだね。

 本質は嫉妬か、妬みか?

 私達、ブーステッドフェアリーの力、利用されないようにしなければ。

 使い捨てにされる恐れがあるかも。


「戦いが終わったら、おったちの所へこい、あそこで暮らすとよか」


 そうだね、さすが元帥さん。

 だいたい、私苦手だよ、人前なんて。

 目立つのは嫌いなんだけどな、前世が前世だし。

 ああ、前世の記憶無ければ性格も変わったかな?

 もっと活発に、ゴブリンとして生きて、ゴブリンの誇りを持って。


 ……邪魔だ前世の記憶、私は人ではないけれど、ゴブリンでもない!


「そっでな、阿騎、魔木の封印は半分しか出来んとよ」


 ん?半分?魔族チクリは出来ないと言っていたけど?

 菌糸算譜さん、魔族チクリの予想を超え始めている?

 どっちの予測が正しい?


「ゴブ、半分は出来るのですね?どんな感じになるのですかゴブゴブ?」

「活動が半減するとよ、魔昆虫の繁殖や傷の回復やらがね」

「ゴブ、OVERKILLで魄だけを破壊するのに、都合がいいのではゴブゴブ?」

「阿騎、その技は危険、簡単に使えない、仕様は制限」


 ですよね、ドワーフの王さま。

 メイドンに頼るか?それともお兄ちゃん、使えるかな?


 騒がしいな?なんだ?


「ドワーフの王、暫し待て」

「なんだキング・オー?どうしたキング・オー?問題か?」

「話を折ってすまぬが、ホルダー阿騎殿はOVERKILLの使い手か?武人として聞き捨てならぬ技名だが」

「使うぞ、出来るぞ、凄まじいぞ」

「ならば……重速の技も使えると?」

「重速は、そこんエノンちゃんも使い手たい。ほ、あそこば見なっせ、人族の偵察魔昆虫が1匹、舞いよる。丁度よか、あれば仕留めて見せなっせ」


 突然名を呼ばれて、慌てるエノン。

 挙動が不審になる。


(え?元帥さん?あば、あばあばばあああああ阿騎くん、どどどどどお、どうしよう?うち、困るよ!泣きそうだよ!ボンバーズ、睨んでいるよぉ)

(エノン、見てみたい)

 私の素直な意見。

(え!?……阿騎くん!?)

 エノンの表情が変わる。

(うう、分かった。ちゃんと見ててね?うち頑張るから)


 ちらり、と元帥さんを恨めしそうに見るエノン。


「ゴブッ速!!」


 バチン、と弾け飛ぶ遙か前方の魔昆虫。


 人の目では決して捕らえられないほど遠方だ。

 人の視力では無理だろうけど、妖精族なら発見可能だろう。

 その妖精族の目でもエノンの動きは捕らえられない。

 エノンは動いたようには見えない。

 が、魔昆虫は砕け散った。


「見事!!」


 そう言ったのはハーピーの女王さまだ。


「見えたか?キング・オー?」

「見えん、どうだハーピーの女王?」

「あの子は動いたのか?まったく見えない」


「こん子達ば利用しようとか、独り占めしようとか思うたらイカンよ?恐れてもイカン、物知りキング・オー、おいの言いたかこつ、わかるやろ?」


「はい、恩人、友人として接しますよ元帥閣下」


「よう言うた、確かに聞いたけんね、物知りキング・オー」


 この妖精達が驚く技の数々、彼らは私達を羨ましと思うだろうか?

 寿命は5年、深手を負えば魔力還元。

 確かにこの力で故郷を奪還しているけど、まるで消耗品みたいだ。


(我が与えた力、役に立っているか?我に感謝するのだな)


(魔族チクリか?ふざけるな、これは全てお前が原因ではないか!魔獣も、ブーステッドフェアリーも、魔木も!命を何だと思っているっ!)


(命?弱者の命は強者のモノだ、知らないのか?)


(違う!)


(ふんっ、まあいい。魔木を倒してやろうか?)


(!)


(我が妻になれ、それが条件だ)


(倒し方は教わったわ、それに妻の件は断った。だいたいリアルでは私は男の子だ)


(男でも構わんが?何なら我が女になってもいいぞ?)


(しつこいなぁ、一つ話がある)


(おお、なんだ?聞こう)


(私に周りの者達を、誘惑するなよ?)


(!)


(私が靡かないからと、私の周りの者達を破滅に導くなよ?)


(くくくっ、益々気に入った、約束はできんが、善処するよ……)


(?)


(……)


(なに?まだ何かご用?)


(……阿騎、お前は超空間の特性をどれだけ知っているのだ?)


(特性?)


 どういうこと?夢の世界の強化版ではないの?


(……亀が警告をしてきた?ふんっ、今日はこれで失礼する)


 そう言って魔族チクリは、現れた時と同じように静かに消えた。


「なんか、来とったね、阿騎くん?魔族か?」

「ゴブ、はい元帥さん、魔族ゴブ。魔木を倒してやろうか、と商談に来ましたゴブ」

「ほう、阿騎くんはなんて答えたとね?」


「ゴブ。魔族と取引はしませんよ」


「魔木は困るとよ、あれは強敵たい。菌糸算譜に聞いたばってん、完全封印は無理らしか。出来ると思ったばってん、生者と死者では封印が違うらしかとよ」


(元帥さん、魔族チクリに魔木の滅ぼし方を聞いたけど、ここでの確認はマズイですよね?)

(そらいかん、ここではまずか。ばってん残りのドライアド、トルクさま達ば呼ぶとはよかかもしれん)

(え?どうしてですか?)

(ドライアド、トルクさま達は妖精族の尊敬の的たい、アイドルたい。彼女達と気軽に話せるもんは阿騎しかおらん。言葉は悪かばってん、彼女達ば利用しなっせ)


 ようは虎の威を借る狐と?


(彼女達ば呼び出し、魔木の話ばすると、周りの阿騎を見る目が変わる)


 なるほど、では早速。

 ドライアドの杖を握りしめ、話し掛ける。


(お話があります、内容は魔木についてです。魔族チクリが滅ぼし方を教えました。海水に魔力で飽和するまで酸素を混ぜ、それで魔木を包むそうです。この方法で魔木は滅びますか?)


 直ぐに返事が来た。


(その方法で、私達は弱体化しますが、死には至りません)

(弱体化も微々たるものでは?)

(そうですね、でも魔木は……どうでしょう?)

(なんじゃ阿騎!この妾の姿を皆に晒せというのかっ!)


 この世界に住むドライアド・トルク一族4体、四姉妹。

 内、三姉妹が集まる。

次回投稿は2022/11/19の予定です。

サブタイトルは 気がついたら海岸戦3 です。

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