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The Lily 前世の記憶は邪魔である  作者: MAYAKO
一章

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【第100話】 平行線魔族

 感情をどうにか鎮めるルカトナちゃん。


「ごめんなさい、ねさま」


 しょんぼりと言葉を紡ぎ出す。


「いいよ、ルカトナちゃん」


「よくないよ、駄目だよ、超空間で死んでしまったら、現実のねさまも死んでしまう。みんな悲しむよ、ボンバーズやサイザンお兄ちゃん、メイドン、エルフさん、元帥さんだって」


「魔族チクリと相討ちならいいかな?と思ったんだけど」


 そんなの駄目、とルカトナちゃんに怒られる私。


「ここにいる私は影だ、本体ではない。ここに本体で来るほど私は愚かではないぞ?」


「魔族チクリ、あなたの言うことは信用しない。ここでOVERKILLを使えばあなたは絶命する」


「はん、当たればだろう?」


「当たらないと?『意思』は本体だろうが分体だろうが繋がっているし、同じだからね。OVERKILLは全てをぶった斬る、夢体の私は共鳴切りも出来る。だからこの技は禁技なんだ。それとも、目の前にいる本体ではないあなた、は、個別体なの?」


「ほう、個別体を知っているのか、ますます気に入った。その知識、どこから仕入れた?亀か鶴か?お前は面白い存在だ、俺の嫁になれ」


 は?

 え?

 と、突然こいつは何を言い出すのだ!?


「この俺の嫁になれるのだ、名誉なことだぞ?どうした?感動の余り言葉を無くしたか」


 別な意味で言葉を無くしているのだが。

 さて……なんと答える?

 しかし嫁になれとは、これプロポーズだよね?

 トラウマプロポーズなんて嫌だよ。


「面白い存在ね?では面白くなくなったら捨てるのでしょう?」


「当然だ」


「お断りします」


「何故だっ!この俺のパートナーになれるのだぞ?捨てられるまでの時間は何ものにも代えがたいはずだ!何という愚かな判断!」


「賢明な判断だよ」

 だよね、ルカトナちゃん。


「必要なくなったら捨てる、当たり前ではないか。その間お前は、私の知識を吸収することが出来るのだぞ?このチャンスを蹴るとは」

「どんな知識?」


「世界を数字で表現する、私のテーマだ。解明した数式、全てを教えてやる」


「!」

 え?

 私が求めていた数式?


「数字表現?そ、それが妖精族の実験と何の関係があるの?あなたがしていることは犯罪よ!」


「はっはっはは、これはおかしい、笑わせてくれる。犯罪とはなんだ?私を裁ける者などおらぬぞ?それにまず、ここに法は無い、弱肉強食の世界だ。強い私が弱い妖精を喰う、当たり前のことだ、摂理だ。弱いエルフはもう殺しください、と言うことしか出来ない。散々実験したが、たいしたデーターは取れなかったな、あの欠陥品はまだ生きているのか?」


 魔族チクリの影が吹飛ぶ。


「ねさま、僕より速いよ」

 僕は、がまんしたのに、と付け加える。

 やさしいエルフさん、彼女を侮辱する者は誰一人ゆるさん。

 フッと後ろに黒い影が現れる。

「私の影を消し去るとは、さすがだな、意思がブレたぞ」


 そのまま消えればよかったのに。

 物騒なことを考える私。

 ああ、駄目だ、駄目だ、怒りに身を任せては。ローローとネーネーにいつも注意されていたのに!


「レベルマックスの攻撃だったんだけど?」


 躱されたか、今の私には、これ以上の攻撃はないんだけどな。


「まず、海水を魔力で満たし、これを魔力的に飽和するまで酸素と混ぜる。これで魔木を包むと魔木は枯れる。簡単だろ?魔木破壊のやり方だ」

「酸素?」

「酸素は猛毒になる」

「なぜ教える?」

「お前達の戦い、いいデータが取れそうなのでね。我は魔族だ、勝敗に拘りはない。興味があるのは『感情』だけだ」


「感情?」


「感情が世界を作り、世界を動かしている。お前達の感情、如何ほどのモノか見せてもらおう」


「弄んでいるだけでは無いのか?」


「我は探求者だ!弄ぶとは無礼だぞ!」


 瞬時に怒気を孕む魔族チクリ。

 怯むな私!ルカトナちゃんを護るんだっ!


「笑わせるな!探求者が聞いて呆れる、探求者は自由を求める者達だ、お前は他者を落とし、奪っているだけだ」

「いや、我は探求者だ、お前の探求者とは違うだけだ」


 これが魔族、価値基準が違うし、お互い、認め合うことも出来ないのか?


「そうそう、感情といえば人族がお前達を恐怖するあまり、恐ろしい兵器を作り始めたぞ。今だ実験段階だが、近々投入するみたいだ」

「兵器?」


「物質の小さな粒に粒をぶつけ、膨大な熱量を得る兵器だ」


 粒?物質?粒をぶつける?……原子核!?

 それって、か、核兵器!?


「ばかな!制御できるの?」

「さあ、出来ないと思うぞ、あの技術は人族の手に余る」

「あなたが教えたの!?」

「いや、やつらのオリジナルだ。もしかしたら古代文献に、記してあったのかもしれんな」

「危険すぎるわ!止めないの?」

「なぜ我が止めねばならぬ?やつらの研究の末だ。結果はどうあれ、ここは見届けてやるべきだろう?」

「でも先程は、ルカトナちゃんを止めたよね?なんで?」

「お前達が有意義な素材だからだ」

 素材?材料としてみているのか?

「少なくとも、愚かな人族よりは使える」

「人族の科学力は侮れないわ」

「科学力?未熟な技術だ。まあ見ている分には面白いがな」

 放射性物質ってどんなんだっけ?自然界にもあるけどこの場合は濃縮しているよね?

「汚染物質や管理は……」

「ほう、汚染物質の知識があるのか?大地や大気の汚染はドライアドを使えば浄化できるぞ」

「ドライアド?簡単に言うけど、あなたや人族に彼女達、協力するかしら?」


 トルクちゃん達は、最終的に浄化はするだろう、人族や魔族関係無しに。

 でも彼女達の浄化を前提に、話を進めるのは駄目だ。

 たしか植物のひまわりは、放射性物質を吸収するって聞いたけど?


「手元にドライアドの種が幾つかある。これに憑依細胞と我の真核細胞をつかい発芽させる。我の言いなりのドライアドの完成だ。これで浄化はできるぞ、まあ途中枯れるかもしれんが」


 これが魔族チクリの考えか?やり方か?

 それを命の弄びと言いたい。

 効率のみを考えている?

 いたわりの心とかないの?

 それとも、ないから魔族なのか?


「思いやりって知っている?良心とか?克己とか?」


「お前の言っていることは全て幻想、まやかしだ。突き詰めれば、時の権力者にとって都合がいい言葉のごまかしだぞ。管理者の言葉に躓き依存するとは、情けない存在だな?」


「……」


「言葉もナシか?」嘲笑う魔族チクリ。


 ルカトナちゃんの小さな手が、私の小指を握る。

 震えている?


「孤独って知っている?」


「!」


 魔族チクリは絶句した。

次回投稿は2022/11/16の予定です。

サブタイトルは 気がついたら海岸戦 です。

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