【第100話】 平行線魔族
感情をどうにか鎮めるルカトナちゃん。
「ごめんなさい、ねさま」
しょんぼりと言葉を紡ぎ出す。
「いいよ、ルカトナちゃん」
「よくないよ、駄目だよ、超空間で死んでしまったら、現実のねさまも死んでしまう。みんな悲しむよ、ボンバーズやサイザンお兄ちゃん、メイドン、エルフさん、元帥さんだって」
「魔族チクリと相討ちならいいかな?と思ったんだけど」
そんなの駄目、とルカトナちゃんに怒られる私。
「ここにいる私は影だ、本体ではない。ここに本体で来るほど私は愚かではないぞ?」
「魔族チクリ、あなたの言うことは信用しない。ここでOVERKILLを使えばあなたは絶命する」
「はん、当たればだろう?」
「当たらないと?『意思』は本体だろうが分体だろうが繋がっているし、同じだからね。OVERKILLは全てをぶった斬る、夢体の私は共鳴切りも出来る。だからこの技は禁技なんだ。それとも、目の前にいる本体ではないあなた、は、個別体なの?」
「ほう、個別体を知っているのか、ますます気に入った。その知識、どこから仕入れた?亀か鶴か?お前は面白い存在だ、俺の嫁になれ」
は?
え?
と、突然こいつは何を言い出すのだ!?
「この俺の嫁になれるのだ、名誉なことだぞ?どうした?感動の余り言葉を無くしたか」
別な意味で言葉を無くしているのだが。
さて……なんと答える?
しかし嫁になれとは、これプロポーズだよね?
トラウマプロポーズなんて嫌だよ。
「面白い存在ね?では面白くなくなったら捨てるのでしょう?」
「当然だ」
「お断りします」
「何故だっ!この俺のパートナーになれるのだぞ?捨てられるまでの時間は何ものにも代えがたいはずだ!何という愚かな判断!」
「賢明な判断だよ」
だよね、ルカトナちゃん。
「必要なくなったら捨てる、当たり前ではないか。その間お前は、私の知識を吸収することが出来るのだぞ?このチャンスを蹴るとは」
「どんな知識?」
「世界を数字で表現する、私のテーマだ。解明した数式、全てを教えてやる」
「!」
え?
私が求めていた数式?
「数字表現?そ、それが妖精族の実験と何の関係があるの?あなたがしていることは犯罪よ!」
「はっはっはは、これはおかしい、笑わせてくれる。犯罪とはなんだ?私を裁ける者などおらぬぞ?それにまず、ここに法は無い、弱肉強食の世界だ。強い私が弱い妖精を喰う、当たり前のことだ、摂理だ。弱いエルフはもう殺しください、と言うことしか出来ない。散々実験したが、たいしたデーターは取れなかったな、あの欠陥品はまだ生きているのか?」
魔族チクリの影が吹飛ぶ。
「ねさま、僕より速いよ」
僕は、がまんしたのに、と付け加える。
やさしいエルフさん、彼女を侮辱する者は誰一人ゆるさん。
フッと後ろに黒い影が現れる。
「私の影を消し去るとは、さすがだな、意思がブレたぞ」
そのまま消えればよかったのに。
物騒なことを考える私。
ああ、駄目だ、駄目だ、怒りに身を任せては。ローローとネーネーにいつも注意されていたのに!
「レベルマックスの攻撃だったんだけど?」
躱されたか、今の私には、これ以上の攻撃はないんだけどな。
「まず、海水を魔力で満たし、これを魔力的に飽和するまで酸素と混ぜる。これで魔木を包むと魔木は枯れる。簡単だろ?魔木破壊のやり方だ」
「酸素?」
「酸素は猛毒になる」
「なぜ教える?」
「お前達の戦い、いいデータが取れそうなのでね。我は魔族だ、勝敗に拘りはない。興味があるのは『感情』だけだ」
「感情?」
「感情が世界を作り、世界を動かしている。お前達の感情、如何ほどのモノか見せてもらおう」
「弄んでいるだけでは無いのか?」
「我は探求者だ!弄ぶとは無礼だぞ!」
瞬時に怒気を孕む魔族チクリ。
怯むな私!ルカトナちゃんを護るんだっ!
「笑わせるな!探求者が聞いて呆れる、探求者は自由を求める者達だ、お前は他者を落とし、奪っているだけだ」
「いや、我は探求者だ、お前の探求者とは違うだけだ」
これが魔族、価値基準が違うし、お互い、認め合うことも出来ないのか?
「そうそう、感情といえば人族がお前達を恐怖するあまり、恐ろしい兵器を作り始めたぞ。今だ実験段階だが、近々投入するみたいだ」
「兵器?」
「物質の小さな粒に粒をぶつけ、膨大な熱量を得る兵器だ」
粒?物質?粒をぶつける?……原子核!?
それって、か、核兵器!?
「ばかな!制御できるの?」
「さあ、出来ないと思うぞ、あの技術は人族の手に余る」
「あなたが教えたの!?」
「いや、やつらのオリジナルだ。もしかしたら古代文献に、記してあったのかもしれんな」
「危険すぎるわ!止めないの?」
「なぜ我が止めねばならぬ?やつらの研究の末だ。結果はどうあれ、ここは見届けてやるべきだろう?」
「でも先程は、ルカトナちゃんを止めたよね?なんで?」
「お前達が有意義な素材だからだ」
素材?材料としてみているのか?
「少なくとも、愚かな人族よりは使える」
「人族の科学力は侮れないわ」
「科学力?未熟な技術だ。まあ見ている分には面白いがな」
放射性物質ってどんなんだっけ?自然界にもあるけどこの場合は濃縮しているよね?
「汚染物質や管理は……」
「ほう、汚染物質の知識があるのか?大地や大気の汚染はドライアドを使えば浄化できるぞ」
「ドライアド?簡単に言うけど、あなたや人族に彼女達、協力するかしら?」
トルクちゃん達は、最終的に浄化はするだろう、人族や魔族関係無しに。
でも彼女達の浄化を前提に、話を進めるのは駄目だ。
たしか植物のひまわりは、放射性物質を吸収するって聞いたけど?
「手元にドライアドの種が幾つかある。これに憑依細胞と我の真核細胞をつかい発芽させる。我の言いなりのドライアドの完成だ。これで浄化はできるぞ、まあ途中枯れるかもしれんが」
これが魔族チクリの考えか?やり方か?
それを命の弄びと言いたい。
効率のみを考えている?
いたわりの心とかないの?
それとも、ないから魔族なのか?
「思いやりって知っている?良心とか?克己とか?」
「お前の言っていることは全て幻想、まやかしだ。突き詰めれば、時の権力者にとって都合がいい言葉のごまかしだぞ。管理者の言葉に躓き依存するとは、情けない存在だな?」
「……」
「言葉もナシか?」嘲笑う魔族チクリ。
ルカトナちゃんの小さな手が、私の小指を握る。
震えている?
「孤独って知っている?」
「!」
魔族チクリは絶句した。
次回投稿は2022/11/16の予定です。
サブタイトルは 気がついたら海岸戦 です。




