表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/113

op.26-2 星繋ぎ(アステリズム)②

 ウィルは感嘆する。


(なんということだ……!)


 まったくの想定外。こんな展開はさすがのウィルとて読めるはずもない。


 星とは、ただ一つで輝くだけとは限らない。

 隣り合った他の星と繋がることで、いっそう輝きが増すこともあるのだと、今、思い知らされている。

 決して『水』には立ち向かえないと言われていた『炎』が、ハルの『星』と繋がったことで──メトリアが持つ運命そのものをひっくり返してしまうほどに。


 それは見えない線と線が結びついて、強い絆を得る──『星座』のように。





 ──星暦(せいれき)二〇八一年。

 この日、かのマイスターでは決して導き出せなかったであろう、『星のメトリア』の新たな境地を()は目撃した。

 私はその光景を、ハルが新たに生み出し拓いた『星』の可能性を、内心でのみこう称することにした。


 これは、人と人、メトリアとメトリアを結びつける力。

 星と星が惹かれあっては繋がる──【星繋ぎ(アステリズム)】と。





 決闘はまだ終わらない。


「だらあっ!」


 地面を力強く蹴り上げた二人の少年、そして『竜刃』スカイブルーと『星剣』アストロがその刃を交えた。

 冬空の下で激突するは、『星』の英雄と『竜』の王子。


「ぐう……!」


 ぴきぱきと全身の結晶を軋ませながらも、純粋な腕力での押しであればカイーザの方が優勢だった。

 しかし、ハルは──


「ま……負けるものかあぁぁぁっ!」

 託されたメトリア、そして作戦会議で交わした仲間との会話を思い出して、叫ぶ。


 そうだ、今日ばっかりは負けられない。

 別にマッキーナのためだけじゃない、ビブリオ家とかサラバンドとか、部隊(チーム)のためだけでもない。

 これは紛れもなく、ハルが自ら戦うと決めた舞台(ステージ)だ。

 何もかもが未熟なハルの舞台(ステージ)──誰かを守るための、『小さな英雄(ミニスター)』の大勝負。

 その戦いに勝利をもたらすため、ミニスターを支えるがために、ウィルやダイヤ、ムンクがたくさん知恵や力を貸してくれた。



 たとえ『星のメトリア』が特別な力であろうとも、ハルは決して、特別な人間ではないのだろう。

 それでも、今、この瞬間はハルにとって特別な時間(とき)だった。

 一人で強大な力に立ち向かうのではなく、仲間たちみんなで挑む戦い。


 それは、今まで一度も経験したことがなかった、知ることがなかった瞬間だ。

 王国辺境の地・サントラで暮らしているだけでは、決して知ることのなかった瞬間だ。


 この『大舞台(ものがたり)』──()が、形にしてみせる!





「【三番星(オリオン)】っ!」


 鍔迫り合いの隙間から、溢れ出る『炎』が光沢を帯びて。

 再び分断された二人の少年。カイーザが後方へ飛び退けば、目前に広がっていたのはマッキーナの先ほどの詠唱よりも遥かに強大な『炎』の壁。


 その壁を断ち切らんと、カイーザが腕を振り上げる。

 ハルもまた、夜空に剣先を掲げて。

 すでに深淵と化していた空が──白や茜、蒼と、色とりどりの光に照らされて。


「【僕の一番星(アステリスク)】!」

「【青天の霹靂(スカイグラフィティ)】!」


 ──互いの必殺技が、広場で轟いた。


 吹き抜ける爆風。協会本部まで届きそうな轟音と、あたり一帯を飲み込む『水』と『炎』の渦。

 外野にいたウィルたちでさえも、勢いに飲まれそうになり、その場で強く踏ん張らなければならないほどに。



 ────ッズ、ガアアァアァァァァァンッッッ!


 二つの剣撃が、メトリアが宙で重なっては──爆散。

 亀裂、殲滅、地響き。

 夜空が光に包まれては瞬く間に晴れていく。

 天変地異をも変動させかねない強大な力を得た二人の少年が、深淵の空を蒼く染め上げて。


 戦いの果てに、残ったものは。

小説を「ブックマーク・評価」などで応援していただけると執筆の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓バナークリックお願いします!
ツギクルバナー

こちらの連載小説もよろしくお願いします!

無知全能の神様が、新しい世界を創造するべく知識を求めて召喚した人間は、なんと四六時中「都市開発ゲーム」をしている引きこもり少年だった。
果たして神様は少年とともに、自身の目指す「最高の世界」を作ることができるのか?
異世界コメディックファンタジー「都市開発を舐めるな創造神!」
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ