op.9-2 少年少女闘技大会:決勝戦②
ハルは、今度は見逃さなかった──友人の勇姿を。
このモデラの闘技場において、ダイヤが放った『必殺技』を。
ダイヤが振り下ろした剣、少年の胴体ほどの全身が。
その『長さ』ごと──いくみへと伸びていった、瞬間を。
その剣技、いや──『メトリア』は!
「や…………『槍』だあっ!?!!?」
ハルは思わず、その場で叫んでしまう。
間違いない。槍である。確かにスピアだ、ソードじゃない!?
剣のみでは決して実現できない技だった。皐月もその光景に仰天して、目を見開いたまま口元を両手で覆っている。
対して、ウィルはそれはもう嬉しそうに。
「はははっ、間に合ったな! 『ダイヤモンド・スピア』の完成だ!」
「何だあれ何だあれ何だあれ!? ダイヤであんなの、初めて見たんだけどぉっ!?!!?」
日頃から稽古していたはずなのに。太刀合わせだって、幾度となく繰り返してきたはずなのに。
まさか……まさか!
「ダイヤも『メトリア』持ってたの!?」
興奮するハルを見下ろしたウィルが、
「宿しているだけでは駄目だ、たった今『発現』させてやった。天文台でのお前と同じだよ、ハル」
「へえ!?!!?」
「順序というものがあるのだよ。メトリアを宿す条件を満たしている人間が、その体内で『潜伏』させているメトリアを、自らの意志を以って体外へと放出する。それでようやくスタートライン、メトリアを『発現』したと呼べる状態になる」
あからさまにドヤ顔しているウィルに、ハルはぶんぶんと首を横へ振った。
そうじゃない、そういうドヤ顔解説は求めてない! 僕は、どうしてダイヤがメトリアを持っているのかを知りたいんだ!
あと、なんでウィル先生はダイヤがメトリア持ってるって知ってるんだ!
「知っていたのではない。読んだのだよ」
──だからっ、心をか!?!!?
「心理そのものが読めるわけじゃないんだよ。心の変化を『水』の流れの変動から汲み取るだけだ。そして、これは単に言い忘れていたんだがね。『水』を読むことができるのは、何かしらのメトリアを宿している人間だけなのだよ」
メトリア医学も同様だ、とウィルは言い加える。
メトリアを宿している者同士でしか適用できない診察方法、コミュニケーション方法があるのだと、ウィルは説明するのである。
つまり、ウィルは初めてダイヤを見た瞬間から気付いていたということだ。
ダイヤの中を流れる『水』──メトリアが発現する兆しを。
ハルは愕然とした。い〜やウィル先生……それはちょっっっとずるくない!?
何せウィルは、あたかも賭け事や勝負事かのように、『指導者』としての実力を見せつけるとか言いながらダイヤの勝利を宣言しやがったのだ。
ダイヤが実はメトリア持ちであることを隠した状態で、である。
(それは指導者の実力じゃないでしょう!? ダイヤ本人のメトリアじゃん!)
完全にズルだ! ハルは空色の瞳を目いっぱいに広げてウィルに抗議の意を示す。
しかし──
「まあ、メトリアが発現したのは良いことだが……あくまでも発現はスタートラインに過ぎない」
当然の話である。
なにせ、今対峙している少女──いくみもまた、『言霊のメトリア』を宿しているのだから。
しかも、いくみは自身のメトリアを、すでに十全に使いこなしているのだから。
「指導者の私にできるのは、同じ土俵に上がらせるところまでだ」
ウィルは言った。
ハルや皐月──に対してではなく。
「あとは、そのメトリアを以ってこの試合に勝てるかどうか。──君次第だよ、ダイヤ」
⁂
ウィルのその言葉は、声は、あのフィールドからではきっと、ダイヤの耳にまでは届かなかったことだろう。
しかし、それでもダイヤは叫ぶのである。
この闘技大会が初めての公式戦なのは、実はハルだけではなかったのだ。
初めての試合、観衆の面前、立ちはだかる剣士の少女──『ライバル』に。
ハルの友人、としてではなく。
一人の少年──『戦士』の少年が叫ぶ。
「おぉおれえぇえをお見いろおおおぉおおおぉおおっ!」
ダイヤは今、間違いなく『主人公』だ。
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