白いほのおのおどり
初投稿です。書き溜めてあるほかのお話をこれから投稿しようか迷ってます。判断材料にしたいので何かしらの反応待ってます。
このお話は北欧が舞台です。絵本のような小さな物語、それでいて読者がじゆうに想像を付け足しできる余白を残したつもりです。
小さなアイニはたばこと酒のにおいからやっと逃れて、小屋からずっと離れたマツの林まで走ってきました。
ホワイト・クリスマスの夜、村の人はみんな家の中で暖かい火を囲んでいるのに、アイニは一人で外に出ました。けさ降ったばかりの雪がブーツにまとわりついてうまく走れません。
だれもいない、なにもないけれど、ちっともさみしくありません。アイニはこの白い海をぜんぶひとりじめにできるのがうれしくて、煙のような息を小さく吐いて、白い海にぽつんと浮かんでいる黒い林のなかにしゃがみ込みました。アイニのほかに息をする者は、まわりじゅう、だれのひとりもいません。
すると、音もなく、こそこそ、とことこ、ひょいっひょいっ、と、黒い木々の間から、なにかはねるものが見えました。アイニは黙って目を凝らしました。
動いているのに音はなく、生きているのにかろやかで、はだかに見えてまっしろな服を着たおんなのこ。とんだり、はねたり、回っています。小人にも、アイニと同じくらいの大きさにも見えます。けれども手足は木立の枝先のような細さでした。
アイニは今まで、これほど肌のしろい子を見たことがありませんでした。
しばらく息をするのも忘れて、それを眺めました。ふしぎなおどりをみていると、なぜだか心はふんわり軽く、ふしぎと心が跳ねるのです。
とんだり、はねたり、手を伸ばして、地面をはって、おんなのこは雪の上で踊りました。
「そうか、わかった」
おんなのこの踊りは、暖炉で燃える火にそっくりだったのです。けれども、どんなにようく目をこらしても、おんなのこはやっぱりまっしろでした。家の外だというのにうすい布を腰に、手首にきつくしめて、つもった雪をそっと踏んで、誰もいないところでしずかにうごきまわりました。まるでかぜにふかれた羽毛が木と木の間でくるくる回っているようでした。
すると本当に風が吹いてきて、マツの林の上でうなりました。
アイニはとつぜんむねがしめつけられるような気がして、おんなのこから目が離せなくなりました。いま目の前で見ているものが、きゅうにおそろしく感じられました。
「あたし、どうしてこんなところにかくれて、ひとりですわっているんだろう」
するとしろいおんなのこは、お父さんに呼ばれたのでおどるのをやめ、これまたすごい速さで、深い森山の入り口の、茂みのなかへ走っていきました。
アイニは林からおどりでて、さっき女の子がいた場所にたちました。ところが、あたりにはだれの足あともありませんでした。
すると、いくらか離れたところから、アイニを呼ぶ声がありました。
「アイニ、アイニはいったいどこだい!」
アイニははじめ、はっとして振りむきました。帰らなければ、と思ったのです。しかし雪に埋まったブーツは、そこから一歩も動きませんでした。アイニはそこに立ってしばらく考えましたが、次の瞬間にはあの茂みをかきわけていました。
読んでくれてありがとうございます。続きが読みたいと思ったらなんか反応もらえれば書きます。