プロローグ
フリーセン歴843年。
世界は国境を堺に、二つの国に別れていた。
東の地に構えるは、常に光に満ち溢れた国。リヒティア。
西の地に構えるは、常に闇に覆われた国。シュヴァルツェ。
リヒティアには決して夜が訪れない。シュヴァルツェには決して朝が訪れない。
リヒティアの国は、人々が狂人と化してしまう呪いにより苦しんでいた。呪いの元凶は、闇の国の女王ディアーナにあると考えた光の国の王ジークヴァルトの号令の元、リヒティアは闇の女王を捕らえる為、シュヴァルツェに戦争を仕掛ける。シュヴァルツェもまたそれに応戦する形で、この時代、光と闇の国は幾度となく争いを繰り返していた。
時を遡ること、フリーセン歴292年。
世界は朝と夜が交互に訪れ、世界には安寧が齎されていた。
世界の中心に流れる川、ダートムグランツェ川近辺に一つの王国が存在する。その名をクラールハイト。クラールハイト王国には光を司る王バルダと、闇を司る女王ミンネ、そしてそれに仕える民達により統べられていた。
光の王が目覚め朝が訪れる時刻に生を受けた者は、光の民ヴァイス、闇の女王が目覚め夜が訪れる時刻に生を受けた者は、闇の民ダンケルとして、王国に仕える事となる。
人々は平和を享受していた。しかしその平穏は、ある一人の民により崩壊を迎える事となる――